【創作大賞感想】早時期仮名子に青春の時間を学んだ。
一度読み、もう一度戻りたくなる仕掛けが満載だ。出来れば、同じ日を並べて読み直したくなる。物語は、タイムリープをする設定であり、この作品にどれだけの設定構成をしたのか考えるだけでも楽しめる。私は、読みながら、自分も一緒にその日に戻りたくなり、物語と一緒に答え合わせがしたくなった。
青春の多感な時期に、何度も戻ってしまいやり直す。これがどれだけ繊細なことなのか教えてくれる。人間関係のやり直し、再構築、登場人物達のセリフの掛け合いから、その瞬間の心理を読み解きながら、少しずつ成長していく。
タイムリープなので、時間は戻るのだが、精神的な時間は戻らない。記憶はずっと積み重ねられる。その影響が及ぼす心情を、そして、自分だけ大人になってしまった矛盾を丁寧に描いているので引き込まれる。
登場人物が、一人だけでタイムリープして戻らなくて良かったなと読みながら考えていた。主人公とその友人。二人で戻ることになってしまった関係が、何度もやり直すうちに、しっかりと本当の友情に変化していく。
久しぶりに、何回か読み直したくなる物語に出会った気がする。早時期仮名子の文体はクセになる。作者が浮かばない物語も好きだが、この作品は、作者である早時期仮名子が浮かんでくる。
この作者は、この作品に出てくる登場人物達を大切にしている。あえてクセになる語り口の文体にしたことで、冒頭からの違和感を、何度もタイムリープしていく成長の過程で、一人だけ大人になってしまった違和感に変化させ、絶妙に哀しみを感じさせてくれる。
読み進めていくうちに、取り残される哀しみを表現して感じさせくる。それは、物語と一緒になって読み手が没入することが出来た証拠のような気がしている。
時間は戻っても、精神の時間は戻らない世界線が早時期仮名子のユーモアを交えて、青春のかけがえのない時間を訴えてくる。
テンポよく進み、物語は楽しいのに、どこか切なくなる。それは、食べ物の描写が素晴らしいからなのか、友情や、愛情を理解するのには時間が必要だと説いているからなのか。
何度も食事をするシーンが出てくる。美味しそうに丁寧に描かれる場面は、その都度、少しだけ人間関係が先に進む。ゆっくりと食べ進めるのと同じように。
食と生は、地続きと教えてくれる。早時期仮名子が、描きたい物語は、戻らないものを取り戻すのには、時間を積み重ねることだと訴えてくる。
どこが伏線になっているのか分からないくらい、どんどんと攻めてくる。作者の筆が乗っていることが分かる。こういうことが伝わる物語は、あっという間に読み進めることが出来る。
どういう気持ちで書いていたのだろうか。きっと自分の物語に入り込めて良い時間だったのだろうなと感じる。想いが届いてくる物語を読めるのは、とても楽しい。
青春をもし、現在の私が取り戻すことが出来るのなら、自分だけ大人の思考になり、見えてくる世界が変化してしまうという、哀しみもあるのかと感じた。だからこそ、青春の時間は、あっという間に終わり、失敗を重ねることで、かけがえのないものになるのだと教えてくれる。
私は、早時期仮名子についてほとんど知らない。Xでたまにつぶやきを覗くくらいだ。そのつぶやきは、喜怒哀楽に揺れていて、感情の機微を色濃く出している。いつも目に留まるたびに、この人は、可愛い人なのだろうなと思って見ている。
自分が動く感情をすぐに、表現しているからだ。そこに、嘘はない。
だから、物語を読みたくなった。実際に読み、感じたことは、早時期仮名子は、そこに自分がいることをしっかりと投影している。
この人の描く深層心理を、もう少し知りたくなる。テンポよく進み、止まらなくなる仕掛け、文体、楽しんでもらおうと、どんどん伝わってくる。若い登場人物を、そのまま本当に若く描けるのはセンスだと思います。そして、その微妙な大人になりかけの繊細な部分を、登場人物に時間をかけさせて、あえてやり直しさせるところに感動してきてしまう。
この作品が、今後どうやって大きくなっていくのか分かりませんが、多くの人に読まれ、日常に疲れた時に、誰かの何度も読みたくなるような、ずっと繋いでくれるような大切な作品になることを願います。
成長には時間がかかるが、その時間は戻ってこないから、大切にしないといけないと、優しく笑いながら語りかけているような気がします。
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