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「わからない」には、原因とループがある――分け方・限界・相互作用を混ぜないために


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改訂前稿英語版:
https://medium.com/@izayohi/there-are-three-kinds-of-we-cant-tell-39c9ee5df149


詳細版

「わからない」には、原因とループがある

――分け方・限界・相互作用を混ぜないために

「わからない」と言っても、実は中身は同じではない。

資料がなくて分からない。

分け方が一つに決まらない。

そもそも、その条件では答えが作れない。

そして、もっと厄介なのは、

調べたり評価したりしたことで、相手のほうが変わってしまう。

という場合である。

以前、私はこれらを何種類かの「型」に分けて考えていた。

しかし、考え直してみると少しおかしかった。

違う種類の問題を、一列に並べていたのである。

そこで今回はもっと単純に、

なぜ決まらないのか

と、

こちらが関わったことで何が動いたのか

を分けて考えてみる。


1 まず「まだ整理できていない」

何かについて、

分からない。

と思ったとする。

その時点では、すぐに原因を決めない。

まず、

まだ整理できていない。

としておく。

これをここでは、U――Unresolved、つまり「未決」と呼ぶことにする。

大事なのは名前ではない。

「分からない」を一つの巨大な箱へ放り込まず、

何が分からないのかを、これから調べる。

という保留札である。

そこから、少なくとも三つの可能性を見る。


2 A――分け方を選んでいる

今日、一万円使ったとする。

レシートを全部足せば、

一万円。

これはかなり固い。

しかし、

プリンは食費か。
娯楽費か。

となると話が変わる。

何のための家計簿なのかによって変わるからである。

生活費を知りたいなら食費。

節約対象を探したいなら娯楽費。

交際相手と食べたなら交際費に入れる人もいるだろう。

つまり、

現実が存在しない

のではない。

現実のどこに線を引くかを選んでいる。

これをAとする。

社会階層。

文学ジャンル。

正常と異常。

能力分類。

こういう問題には、Aがかなり入り込む。

だからAでは、

正しい分類は何か。

といきなり聞くより、

何のために、その分け方をしているのか。

を聞いた方がよい。


3 B――その条件では、できない

別の「分からない」もある。

どれだけデータを集めても、頭のよい人を連れてきても、

指定された条件を全部守る万能な答えは作れない。

と示される問題である。

数学や計算理論には、本当にそういう問題がある。

これは、

まだ誰も解いていない。

とは違う。

問題設定そのものに壁がある。

これをBとする。

ただしBは、かなり慎重に使った方がいい。

難しい。
時間がかかる。
コンピュータが足りない。

というだけならBではない。

Bは、

その条件を固定すると、要求されたものが成立しないことが示されている。

場合に絞る。

Bは珍しくてよい。


4 E――今は届かない

古代の出来事を調べたい。

しかし史料がない。

宇宙の遠くを知りたい。

しかし観測できない。

計算したい。

しかし計算量が大きすぎる。

こういう場合は、

絶対に分からない。

とはまだ言えない。

今のところ届いていない。

これをEとする。

Eにもいくつかある。

証拠へ届かない

資料がない。

測れない。

標本が足りない。

計算や探索が足りない

時間がない。

人がいない。

計算資源が足りない。

そもそも考える道具がない

これが案外重要である。

何を測ればよいのか分からない。
何と何を分ければよいのか分からない。
その現象を表す言葉がまだない。

データ不足以前に、

問題を見るための見取り図がない。

ことがある。

これもEである。


5 ここまでは「なぜ分からないのか」の話

整理すると、

A――分け方・規約の問題

B――その条件では成立しない

E――今は届かない

となる。

ただし、一つの問題に二つ以上が重なることもある。

資料が足りない上に、分類基準まで曖昧かもしれない。

だからこれは、

三つの箱から一個だけ選ぶ。

という話ではない。

どんな制約が掛かっているかを見る診断表くらいに考えた方がよい。

そして、ここから別の問題が始まる。


6 調べたことで、相手が変わる

学校で教師が、

この生徒は成績が低い。

と判断したとする。

その判断を教師の頭の中だけに置いておけば、まだ分類で終わる。

しかし、

難しい課題を与えなくなる。
発言を求めなくなる。
補習へ回す。
本人へ伝える。

となれば、生徒の経験が変わる。

最初の評価が、

評価された相手へ戻った。

これまで私は、こうした現象をP――遂行的構成と呼んできた。

ただし今回、もう少し細かく分けることにした。


7 P¹――こちらの判断が相手を変える

最初の段階は単純である。

私が相手について判断する。

その判断に基づいて働きかける。

相手が変わる。

これをP¹とする。

ここで重要なのは、

観察したから物理的に少し影響した。

というだけではない。

本稿で問題にするのは、

対象について作った認識・分類・評価が、行動や制度を通して対象へ戻る場合である。


8 P²――変わった相手が、こちらをまた変える

もう一段進むと、ループになる。

教師の評価によって生徒の行動が変わる。

その変わった行動を教師がまた見る。

すると、

やはり私の判断は正しかった。

と思うかもしれない。

あるいは逆に、

最初の見方が間違っていた。

と判断を変えるかもしれない。

すると、

教師
→ 生徒
→ 変わった生徒
→ 教師の判断が変わる
→ また生徒へ
→ ↺

となる。

これをP²――再帰とする。

「見る側」と「見られる側」が、時間の中で互いの次の状態へ入ってくる。


9 AIとの会話も、まずここに入る

AIに小説の案を出してもらう。

読んで、

違う。

と思う。

もう一度頼む。

また違う。

そこで、

何が違うんだろう。

と考える。

「この人物はそんなことを言わない」

「私は説明しすぎる文章が嫌いらしい」

「この終わり方だけは受け入れられない」

そうやってAIを直していたはずなのに、

自分自身の評価基準まで見えてくる。

すると次の指示が変わる。

AIの出力も変わる。

さらに自分の判断も変わる。

人間 → AI → 人間′ → AI′ → 人間″ ↺

これはP²である。

ここで一つ注意したい。

これだけで、

AIを育てた。

ことにはならない。


10 AIは赤ちゃんではない

AIに何百回、

違う。
もっとこうして。

と言っても、普通の使い方なら、それだけでAIの基盤モデルそのものがその場で育っているわけではない。

変わっているのは、

  • 自分の考え

  • 自分の指示

  • 会話履歴

  • AIから返ってくる内容

  • AIとの使い方

である。

だから、

AI育成

より、

AIを使った自己形成

と呼ぶ方が近い場合がある。

「育成」と呼びたいなら、

育てられる対象自身の能力が、以前より持続的に変わったか。

を別に確認する必要がある。

相互作用したことと、育成したことは同じではない。


11 P³――相互浸透

では、相互浸透とは何か。

単に、

AがBへ影響した。
BもAへ影響した。

だけではまだ足りない。

それなら普通の相互作用である。

P³では、

相手との過去のやり取りによって、自分が次にどう応答するかという仕組みまで持続的に変わる。

ことを条件にする。

人間同士なら分かりやすい。

長く一緒に仕事をしている二人は、

相手ならここで何を気にするか。
どう言えば伝わるか。
どこまで任せられるか。

を学ぶ。

その経験によって、次の行動の仕方自体が変わる。

そして、その変わった行動を見た相手もまた変わる。

A → B′ → A′ → B″ → ↺

しかも変わっているのは、その場の反応だけではない。

次回以降の反応の仕方まで変わる。

これをP³――相互浸透とする。


12 相互浸透は、混ざって一つになることではない

相互浸透という言葉は、少し危ない。

AとBが溶け合って、

もう区別できません。

という意味ではない。

人間は人間。

AIはAI。

教師は教師。

生徒は生徒。

会社と社員も同じものではない。

それぞれ別の仕組みで動いている。

しかし、

相手との履歴が、自分の次の動き方の内部へ入る。

ことがある。

別々のまま、相手を自分の変化条件の一部にする。

ここでは、その意味で相互浸透という言葉を使う。


13 だから普通のAI対話は、まだ相互浸透とは限らない

ここは厳しく区別したい。

人間はAIとの対話によって学んだ。

しかしAIの側は、会話が終わればその経験を持ち越さない。

基盤モデルも変わっていない。

なら、

人間側は持続的に変化した。
AI側はその場その場で応答した。

という非対称な再帰である。

P²と見る方がよい。

一方、

  • AIが長期記憶を持つ

  • 人ごとの応答方略を変える

  • 過去の相互作用を次回以降へ持ち越す

  • 人間側もAIとの関係によって思考方法を持続的に変える

となれば、P³候補になる。

つまり、

AIと話した
=AIと相互浸透した

ではない。

適用条件がある。


14 ループがあっても、効果が大きいとは限らない

ここも重要である。

P²やP³という構造があることと、

その効果が強い

ことは別問題である。

教師期待についても、自己成就効果は研究されているが、典型的には効果が小さく、時間とともに減衰する場合もある。

つまり、

分類すると人間が必ずその通りになる。

などとは言えない。

再帰が存在するか。

どれくらい強いか。

どんな条件で強くなるか。

これは別々に調べる必要がある。


15 ループには向きもある

分類された結果、

その分類に近づく。

場合がある。

しかし逆に、

そんなふうに見られたくない。

と反発して、分類から離れることもある。

ランキングを見て順位を上げようとする組織もある。

ランキングそのものを無視しようとする組織もある。

指標を改善するのではなく、指標だけを攻略する場合もある。

つまりフィードバックには、

  • 増幅する

  • 減衰する

  • 反転する

  • 振動する

といった違いがある。

「ループがある」で話を終えてはいけない。


16 言葉だけで現実が変わるわけでもない

たとえば、

「この子は能力が低い」

という言葉がある。

言った瞬間、魔法のように脳や身体が変わるわけではない。

実際には、

分類

教師の対応

教材

学習時間

経験

行動

という途中経路がある。

だから、

言葉が世界を作る。

とだけ言うのは粗い。

逆に、

言葉なんて物質ではないから何も変えない。

も粗い。

分類や制度は、人間・金・時間・設備・技術を動かすことで、物質的現実へ作用する。

そして変わった現実が、次の言葉や分類を変える。

言葉
→ 実践
→ 現実
→ 次の言葉

という経路を見る必要がある。


17 A・B・Eも途中で変わる

最初に、

Aか。
Bか。
Eか。

と診断したからといって、それで終わりではない。

新しい測定装置ができれば、

E――届かなかった

ものが見えるようになる。

AIと議論した結果、

そもそも分類基準がおかしかった。

と気づけばAが変わる。

逆に調査した結果、対象が警戒して情報を出さなくなれば、新しいEが生まれることもある。

だから、

診断
→ 調べる
→ 働きかける
→ 状況が変わる
→ 再診断

となる。

「型」を一度貼って終わる話ではない。


18 弁証法でいう「相互浸透」とも接続できる

以前から私は、

相対的に独立したものが、互いを変えながら関係する。

という問題を、弁証法の「対立物の相互浸透」という言葉でも考えてきた。

ただし、

P³=弁証法の真理

とするつもりはない。

むしろ、

「相互浸透」という昔からある抽象的な言葉を、実際に観測できる時間発展として書き直せないか。

という試みである。

本当に双方の応答の仕方が変わっているのか。

単に同時に変わっただけではないか。

第三の原因があったのではないか。

そこまで確認する。

弁証法を「何でも説明できる言葉」にしない。

仮説を作る道具として使い、現実側から殴り返してもらう。


19 何でも「相互浸透」と言わないために

AとBが同時に変わった。

だから、

AとBは相互浸透した!

では困る。

たとえば気温Cが上がったため、

Aも変わった。
Bも変わった。

だけかもしれない。

図にすると、

A ← C → B

である。

これを、

A ↔ B

と勘違いしてはいけない。

だから相互浸透を疑ったら、

AがなくてもBは同じように変わったのではないか。
BがなくてもAは変わったのではないか。
第三の原因はないか。

を見る。

判定できないなら、

まだ未決。

へ戻る。

それでよい。


20 結局、これは何のための分類なのか

名前を増やすためではない。

「わからない」ときに、

次に何をすればいいのか。

を変えるためである。

Aなら

何のための分類なのか。
誰が線を引いたのか。

を見る。

Bなら

どの条件を変えれば問題が変わるのか。

を見る。

Eなら

何が足りないのか。
証拠か、計算か、概念か。

を見る。

Pなら

こちら自身も原因の一部になっていないか。

を見る。

そしてPならさらに、

一方的に変えたのか。
ループになったのか。
相手との履歴によって双方の応答の仕方まで変わったのか。

を見る。


21 「わからない」は止まっていない

最初は、

分からない。

だけだった。

しかし調べる。

比べる。

言葉にする。

誰かに話す。

AIへ聞く。

試す。

失敗する。

すると問い自体が変わる。

対象も変わることがある。

自分自身も変わる。

だから「分からない」は、空白ではない。

違和感
→ 仮説
→ 比較
→ 実践
→ 不一致
→ 修正
→ 再び見る

という状態なのである。


22 「三種類」から「原因とループ」へ

以前の私は、

「わからない」には何種類あるのか。

と考えていた。

今は少し違う。

まず、

なぜ今、答えが決まらないのか。

を見る。

A――分け方。

B――条件内の不能。

E――接近限界。

そして別に、

こちらの認識や介入が、対象へ戻っていないか。

を見る。

P¹――相手を変えた。

P²――変わった相手がこちらへ戻ってきた。

P³――互いの履歴によって、双方の次の動き方そのものが変わり始めた。

ここまで来ると、もはや「わからないの種類」というより、

認識するこちらと、認識される世界が、時間の中でどう関係しているかを見る地図である。

全部を知ることはできない。

しかし、

どこまで分かったか。
なぜ分からないか。
自分が何を変えたか。

を分けて見ることはできる。

その地図自体が間違っていたら、また描き直せばいい。

たぶん「わかる」というのは、完成した地図を持つことではない。

地図と現実を何度も往復しながら、どこが違ったかを更新し続けることなのだと思う。







石部統久・ChatGPT5.6
査読:ChatGPT5.6・Claude Fable5・Grok・Gemini3.7(Parcae Protocol)

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