関ヶ原。三成、最後の采配 第十二話『無音の空、孤高の天』
第十二話『無音の空、孤高の天』
やがて、三成は捕らえられた。
引き回しの道すがら、三成は、ただ一度も、下を向かなかった。
彼の視線は、地上の喧騒を離れ、遥か一点を見つめている。
見上げた空は、どこまでも青く――
あの日の朝霧が、晴れていく。
天に昇っては消えた、三度の狼煙。
『お前の命、そう安くつかうな』と答えたときの、左近の困ったような顔。
『その正しさを振りかざすのが、悪い癖だ』と諭してくれた、刑部の、どこか寂しそうな、困った顔。
すべてが、この静かな空に溶けていった。
喉が、渇く。
役人が、水の代わりに干し柿を差し出す。
三成は、それを一瞥すると、静かに首を横に振った。
大志を持つものは、その最期まで、命を大事にするもの
柿は、痰の毒ゆえ食《しょく》さぬ
京、六条河原。
空は、どこまでも静かだった。
筵《むしろ》の上で、三成は凛と背筋を伸ばす。
そして刃が、その首筋に、触れる。
筑摩江や
芦間に灯す
かがり火と
ともに消えゆく
我が身なりけり
(了)
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