アップルグレネード・オレンジマイン
▼今週のお題
■セリフ
「待っててね」
■三題
・アップグレード ・名札 ・夜桜
▼投稿ルール
・投稿締切(任意):2026年4月9日(木)23:59
・ハッシュタグ「#せりふ三題噺」「#アップグレード名札夜桜」を
つけて投稿
( せりふ三題噺は、はらとけい さんのご企画です。)
ちゃんと書こうとして、
一時間半くらいうんうんうなってましたが、
だめだあ。ちっともまとまらないです。
なんにも考えない自由連想に身を委ねます……。
戦場の上に昇る、青ざめた月は、
あくまで無表情で、それでいて美しく、
満ちては欠ける、時の支配者として、
自らが照らす、無数の生き死にの顛末を、
ただ、静かに見やる。
白い皿の中央に載った、食材を吟味するように。
いつ果てるともなく続く塹壕戦。
それは遅かれ早かれ、その中にのたうつ者たちの正気を蝕み、
ついには現実という枠組みを、あっさり取り払う。
貴方のその、ふくらんだポケットには、
一体何が、入っているんだい?
これか? これは、ヒトが生きた証の、半分だ。
その重みを共に背負うというのなら、貴殿にも託そう。
そら、手を出せ。遠慮は要らん。
素直に差し出した両手に、無造作につかみ出して
ざらざら注がれたそれは、小さな金属製の、識別票。
その時以外はただ煩わしいだけの、兵士の名札だ。
どれも違う文字列が律儀に刻印されているのが見て取れる。
薄く軽いそれらに、何かを繋ぐ願いのようなものが託され、
今となってはなんの意味を持つのか定かでない。
確かに、これ以上ない贅沢なコレクションだとは思うが、
僭越ながら言わせてもらえば、
腹の足しには、ならんなあ。
なんだ? おぬし腹が減ってるのか。
ならば別の物をくれてやろう。
ベルトから外した暗緑色の玉を落とされる。
M67破片手榴弾。通称、アップルグレネード。
鉄の玉としては軽い方だろうが、林檎を名乗るには、少々重い。
確かに、齧れば楽にはなれそうだが。 知恵がつく前に。
ふむ。天秤の錘としては、適当だろう。
ちなみに、グレネード、の語源は、古い言葉で柘榴、らしいぞ?
林檎に柘榴。戦場に広がる果樹園、か。
故郷の風景が不意に蘇る。
よちよち歩きを脱した息子が、膝にすがって紅潮した笑顔を向ける。
ここに座って? いま持ってくるから、待っててね?
とって返して、勇んで抱えてきた物を、積み上げる。
さあ、好きなだけ召し上がれ?
背後には、収穫しきれず地にまかれたオレンジ。
林檎も破裂する当地なら、さしずめあれは、地雷原か。
喰らうなら、離れて独りでな。
歳とった息子のお友達は、ポケットを鳴らしながら背を向ける。
手の中のそれを見つめ、どちらが正解か、ぼんやり考える。
今すぐの解放か、やがて来るかも知れない、遠い未来のそれか。
時の刻みを狂わされたここでは、どちらも大差ないようにも思える。
ふいに起こる悲鳴。
斬り込みだ!
捨て鉢な銃声が途切れる。
走れ!
動く脚。今回も、天秤の出番はないようだ。
本当に狂ってやがる。
奴らに戸惑いは無いのか?
夜桜隊、前線突破しました。
ヨシ! 引き続き作戦遂行に各員奮励努力すべし!
皇紀2696年。人口減に歯止めがかからない日本は、
最後に残ったその伝統を拠り所に据える事で、
起死回生を図る政策の大転換を決定。
国粋主義を国是として高く掲げ、
生存権の行使として、
絶対国防圏の拡大に乗り出す。
あれれ?
おかしな方向に?
まとまらなかった当初の構想では、
応募の集まらない自衛隊員募集の打開策として、
サムライ部隊と、ニンジャ部隊と、
人型兵器開発部が発足して、
無闇に熱い人たちが、じたばたするお話、だったのですが ?
アップルならぬアップグレード、失敗。
