天使と悪魔の役どころ
▼今週のお題
■セリフ
「調べないほうがいいよ」
「喉乾いてたんだよね」
(今回はどちらを使っていただいてもお題として回収させていただきます だそうです。)
■三題
・火山 ・シマウマ ・風鈴
▼投稿ルール
・投稿締切(任意):2026年7月30日(木)23:59
・ハッシュタグ「#せりふ三題噺」「#火山シマウマ風鈴 」を
つけて投稿
( せりふ三題噺は、はらとけい さんのご企画です。)
どこまでも、まっしろなせかい。
光は、どこもかしこも、そこら中にあふれかえっているのに、
影が、ひとつも見当たらず。
足元は、さりさり乾いた、細かな粒子が、
うすく積もって、なんとも、心もとない感触で。
始めはなんにも、見えなかった、変化のない景色にも、
徐々に慣れてきて、ふと、何かに気づいて、
手をかざして、目を細めてみると、
地平の、あちらこちらに、
積み上げられた、四角い、塚のようなものが、
ぽつり、ぽつりと、点在しているのが、見分けられるように。
その内のひとつに、気配のようなものを感じて、
目を凝らしても、やはり白いだけで、
もどかしくて、ついに意を決して、近づいてみると、
だんだん大きくなるそれに、白いけど、白、だけではない、
何かが、座っていた。
こちらを見ている。
こんにちは。 おはよう?
おはようはやだな。
こんにちは。 きみは、お迎え? ですか?
肌が、白い。
瞳も、髪も。
どうだろう? わたし、のどか。
ここがどこか、知らない。
そうなんだ。
視線が外れる。
その一瞬前に、唇が息を吸って、
たぶん名乗りを、返そうとしたんだけど、
止めたみたいだった。
それきり黙ってしまったので、
ずっと見つめているわけにもいかなくて、
ひとつだけあった、白い四角に、腰かけてみる。
座るには小さ過ぎ。
お尻がはみ出て、困っていると、
がまんし切れなくなったのか、
手招きして、隣にどうぞ、と、すすめてくれた。
しばらく一緒に、前を向いていたけど、
聞いていいのか、わからなかったけど、
聞いてみることにする。
ここで、何してるの?
のどの奥から、聞こえないくらいの、唸り声。
うーん、 待ってるんだと思う。
何を?
日暮れを。
たぶんもう、繰り返し確認して、たどり着いていた、
それしかない、答え。
なるほどねえ。
ここに訪れる何かがあるとすれば、
それは、端の方の、欠片でも、
光を吸い取る、影の到来。
納得だった。
また、きれいに収まって、ぱちりと蓋が閉まってしまいそうになって、
それに気づいた先客が、あわてて言い繕う。
きみはさ、
きみは何しに来たの?その、こんな所に。
私は、時々あるの。
気がつくと、迷い込んでて、出られるまで、そこにいるの。
そう、か。
えーと、あのさ、何か話してよ!
あたしも話したいけど、頭の中が真っ白でさ、
でも、応えるのはできるみたいだし!
うーん?
私も似たようなものな気がした。
何か──何か、思い出せる?
そんなに昔の話じゃなくていいんだ。
そう、こないだの話をしてよ。
つい、こないだの話。
つい?
うん。
色が無くて、読み取りづらいけど、
たぶん、かなりの、必死な目。
もう一度のぞいてみたけど、本気な目。
じゃーあー、そうだなあ。
ん、んん、おっほん。
では、こないだの話をします ?
うんうん。
えとね、あ、そうだ、
こないだ、久しぶりに、テストを受けました。
へえ?
キミ、学生なんだ。何年生?
不機嫌な顔をする。
これは反射的なもので、半ば習慣だったけど、
相手をたじろがせるには、十分だった。
べ、べつに子ども扱いとかするわけじゃ、ないけども。
お答えは、一度に一つが決まりです。
ちなみにこのお話しに、学年は関係ありません。
顔を振って両手を上げる。
わかったよ。ごめん。ちゃんと聞く。
よろしい。それではお答えいたしますと、
それは、歴史のテストで、中に、武田しんげんの旗の言葉を当てるやつがあって、
「風◯火◯」ってなってたから、ふーりんかざんだ、知ってるしって、
そう書いて出したら、
ふんふん。
返ってきたテストは、バツになってて、
先生が、返す時、私にだけ耳元で、
静かなること鈴のごとく、りんりんって。
しばし沈黙。
あれ? 林、じゃなかったっけ?
私もそう思ったよ?ほんとだよ?
でも見てみたら、なぜかその、風鈴な火山になってて、
だけどふつうそんな間違いする?
林の方が簡単な字で、わざわざそんな、難しく間違えたりしないし、
だからこれはきっと、 誤変換、ということで。
ふたたび沈黙。
今度は丸い目。白いのは、始めからで。
えっと、待って?
今時って、タブレットか何かで答えるの?
シャープペンで書きましたが?
でもね、この場合ね、静けさを際立たせる鈴の音としては、リンリンじゃなくて、シャンシャン、だと思うの。ほら、巫女さんが舞を舞う時、振るんだよ、ここぞという時に。神楽鈴っていっぱい鈴ついてるね、知ってる?
なんで笑うの!?声出さなくたって肩ひくひくしてたらわかんだかんね!
ぶっ、はははっ!
面白いね、キミ、 ここに、来てから、 初めて笑うよ、
ありがとう?だね、あははっひー!
しっつれいしちゃう。
私はおかしがらせるお話じゃなくて、教師たるものの心構えについての話をしました!
むくれて見せても身をよじるのを止めない。
さっきはあんなに腫れ物扱いだったのに。
ごめんごめん。
でも、本当だね。森閑っていうのかな?
逆説的かもだけど、静かな時って、それを気づかせる音が要るんだ。
たとえば、そう、……夏の夕暮れの、ヒグラシみたいに。
片膝を抱える。
または、不安な時の、耳鳴りみたいに。
あらためて、辺りを見回す。
ここは、色だけでなく、音も抜け落ちている。
伝えたくて、空気は待っているのに、
それを震わす、動きが無い。
実はね、ここにはあたし、今はあたしたち、か。
だけじゃないんだ。
え?
背筋を伸ばす。
あっちと、あっち。それに向こうの方にも、誰か居る。
思わず立ち上がって、背伸びしてみる。
よくわからない。
長いことここにこうしてるとね、微細な変化を感じるようになるんだ。
たとえば、互いの視線が交わった時?
へーえ、すごいね!
会いには、行かないの?
なんで?
会って、どうするの?
ここに居たってことは、相手もやっぱり何も持ってないのに。
ここには、一応だけど、ここ、が在る。
でも一度ここを離れたら、戻って来れるかもわからない。
そしたらもう、誰にも見つけてもらえないかもしれない。
みんな、みんな?そう思ってると思う。
それに、
今度は両膝を抱える。わななく指をひらいて、ぎゅっと。
望んでることは、違うかもしれない。
ここには他に何にも無い。在るのは目印と、あたしたちの望みだけ。
今は拮抗していて、何も起こらないでいるけど、
傾けば、一気に動き出すのかも。
それがわかったら、全員が、誰かを求めて彷徨い出す。
確かめて、自分と違ってたら、望む未来のために、
排除しなくちゃならない。
顔を埋める。
膝越しに息を吸う音。声がくぐもる。
あたしは、それが怖い。
これがあたしのお返し。
話せる、頭の中の、ぜんぶ。 ごめんね。
ありったけの鼻息。
じゃあ、次は私の番ね。
いいよ、もう。
あたしの話、もうないし。
私の、番、ね?
……うん。
私ね? わりとこういうこと、あるみたい。
でね? こことは反対に、真っ暗だったこともあってね?
身じろぎする気配。
目を開いても、目を閉じても、全部真っ黒で、変わらないの。
歩いてもふわふわして、自分の息の音しか聞こえないし、
どんどんあいまいになるの。
何をしてるか、が?
んー、もっと、こう、自分の輪郭? が。
触っても、触ってるのか確かめられなくて、
そのうち触っても、わからなくなるの。
だんだんもやもやしてきて、まわりに溶け込んでって、
動けてるかどうかもあやしくなってきて、
気づいたら立ち止まってて、どれだけそうしてたのかもわからなくて。
へ へぇ?
相槌を打つための相槌。
思わぬ方から思いもしなかった結末を披露されて、
理解が追いつかないのかもしれない。
でもね? ヒュッと一瞬で元通りになる時があるの。
なんだと思う?
あのね、灯りがともった時。
あ、って気づいた瞬間、全部元通りなの。
足も手も、私も。
だからね?ここも、
一つ、影が作れたら、大丈夫なんだと思う。
それだと判るやつ、一つ。
作れるのかな? この、透明な身体で。
伏目がちなまま、さまよう視線。
息遣いが身を潜め、胸の中に溜まっていく。
うーん。
思うんだけど、体で作んなくてもいいんじゃない?
一番長い、沈黙。
そうなると、どっちがいいんだろ?
つまり、目印としては。
灯りと、影と。
場合に、見る人による?
何を背景に見てるかで、目立つ方が違って、
だから勘違いして、反対のを探してると、
いつまでも、見つからない。
ふっと解ける、ため息。
だとすると、派閥争いが勃発するかもね。
優勢な方の色に、空がころころ変わったりして。
そんなことになってしまったら、
交互に日焼けして、シマウマになってしまうま?
うそだめなんも言ってないから聞いちゃだめ、ずっと覚えてて顔見るたび吹き出したりしたら泣くからね?!ほんとだから!ほんとにほんとなんだからね!
大丈夫、安心したまえ。
心の中にとどめておくことにしてしまうま。
イーヤー!!いじわるだこの人!そうだと思ってたんだようそうそうそだから今すぐ忘れて忘れろ忘れなさいあなたは今すぐ忘れたーくなーるーう!
あはは、いいじゃない。
あたし、あなたのこと、好き。
ええっ??
そういうとこ、隠そうとしてる?
いいや、わざと小出しにしてるでしょ。
ヤラシイ子だ。
ののどかやややらしくないよ?
ほらまた。
これはもう、誘ってるね?
じゃあ、……お望みのままに。
迫る白い瞳が、泳ぐ私の目を、真っ直ぐに射抜く。
気がつくと、細い指が、顎の線を撫で上げて、下唇に。
息は薄く引き込まれるばかりで、出ていかない。
っ 。
触れた指先が、瞬時に固まる。
……嘘だ。
え?
これがあたしの罪?その罰なの?ああああァア!!
驚く私を振りほどいて、悶える。
大丈夫? だ、大丈夫!
なんとかなんとかなるから!なんとかするからっ!
きみの、キミの瞳が! 手も! ああ! アアア!!
指先に目を遣ると、端から黒ずんでそれが見る間に広がっていく。
顔に手を遣る。瞳は見れないが、髪先がやはり漆黒に染まっている。
やっと出会えたきみが、よりによって、キミが!
あたしの、たった一つの、影になってしまう!
探していたピースが、嵌った。
私はなぜここに来たのか。
なぜ、ここに居るのか。
そうか、私、こういう、役割だったんだ。
崩れゆく身体を、ただ、見やる。
きちんと果たして果てる。
道具としては上出来だ。
違う!嫌だ嫌だ嫌だ!!
そんなの、あんまりだっ。
生きるのは、苦しみ。
それを繋ぐ、一つの傷になれるなら、本望だよ。
あなたは生き続けるよう、選ばれた。
だから、生きて?
拒否する!
あたしは!一緒にいられないのなら、いられないのなら!
それを決めるのは、あなたでも、私でもない。
だから、
生きて。
白い天井。
白いLEDの灯り。
ここも白いけど、くっきり影がある。
おかえりー。
断りなく胸にどすんと落ちてくる、ペットボトルの重み。
うっ。
水分補給しときなー。
いつもながら、涙と洟で顔ぐちゃぐちゃ。
うう。のどか、無事帰還しまじだ。
ううう、今回もかわいぞうだっだびょー!うわーん!
あーあ。また性懲りも無く。
さやかは、灯り担当だから、そんなごと、言えるげどっ、
毎度ニヤケながら起きてくんのほんっとムカつくんだげどっ、
わたしはいっつも影だがらーあー!!
ハイハイ。そこは適性ってやつでね。
よりひねくれてる奴がそっち担当って決まってますからねー。
カリリ、っとフタを外して、飲み口を押し付けてくる。
カタルシスに浸ってんのもいい加減にして、飲めって。
けっこうヤバいレベルまで落ちてんよ。水分量。
うぶっ。わがってるけどー!
うう、きっと、喉乾いてたんだよね。あんなにカサカサなとこだったし。
あーん?
のどかの脳になんかわいてんのはいつもの事だけど。
決めた!これ持ってもう一回行ってくる!
なっ、バカ言うな、ヘッドセットよこせって!
せっかくようやく上手くいったってのに何回ダイブさせる気だこの甘ちゃんは。いいかげん要領ってもんをだなあ
なにさ先輩面して!さやかの鬼!悪魔!シマウマ!
はあっ?テメェまだそのことを!もうちゃんと生え揃って濡羽色ですう!白髪ババアとは違ってなあ!
白髪じゃないもん銀髪は生まれつきっ!25しか違わないんだからババアじゃなくてお姉様だっつってんでしょうが!うっきーい!
しまった
また結局いつもみたいに
みんな元気すぎだし
ああ
ああ
