純白のキセキ

▼今週のお題
■セリフ 
「あれ?亀?」
■三題 
・観覧車・靴下・マシュマロ

▼投稿ルール
・投稿締切(任意):2026年3月12日(木)23:59
・ハッシュタグ「#せりふ三題噺」「#観覧車靴下マシュマロ」をつけて投稿



あああ、やってしまいました 
ううう なんでーえーえ
わたしのばかー



ベイエリアにそそり立つ、巨大観覧車。
愛を囁き合う恋人御用達スポットとしてその名を知られるとはいえ、
三寒四温など物ともせぬ、歴戦の強者どもさえ凍りつかせる、
寒の戻りの風吹き荒ぶ中、一組の男女が相対していた。


オマエは、オレのことが、好きか!

はっ! 大大大、大好きでありますっ!

それは、オレがバツイチ子持ちであることを承知の上か!

先刻承知の上であります!

ならば多くは聞くまい。乗れ!

はっ! お供いたします!


扉が外から閉じられ、鈍い振動と共に宙に浮く。
紛う事無き密室に、閉じ込められた二人。
鋭い視線が交錯する中、男が口を開く。


ルールは簡単だ。
この観覧車が一周するのにかかる、約15分の間に、
これを、


女の膝に、包みが放られる。ずしりと伝わる重量感。


処理し切れるか、否かだ。

これは、何でありますか?

マシュマロだ。キロ単位のな。


キロ単位の、マシュマロ。
一つ3.33gとして、その数、少なくとも300。
短時間で胃に収めるとなれば、かなりの難行を覚悟せねばならない。
それでも女には勝算があった。
だが、試練はそれだけに止まらない。


これからこの端末を通じて、オレの娘が問題を出す。
それに正解する度に、10秒の猶予を与える。
手に取るのを許すのはその間だけだ。
ちなみにそれは、娘が手ずから生み出した、愛の結晶だ。
一つたりともおろそかにする事は許さん。
たとえそれが口にした瞬間、未知の感覚を呼び起こそうがだ。
やるか?

やらせていただきます!


その意気やよし。
思いの丈を量るだけの価値はありそうだ。

光量を絞ったスマートフォンの画面を、相手に向ける。


じゃあ、いっくよー、おねえちゃん。
だいいちもん!



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つぎのしつもーん!
お父さんはうさぎ年うまれですが、
兎に角、ということばのごげんになったともいわれる、
ありえないことのたとえとして、ぶってんにあげられているのは、
うさぎにつのが生えることと、もうひとつ、
なにに毛がはえることでしょーう?

えーと、あれ?亀? 亀だよね? 亀毛兎角。

せいかいでーす。
では、どうぞー! いーち、にーい、さーん、

よっしゃー!はぐはぐもぐもぐむっしゃむしゃー!


男の顔から、徐々に余裕が失われていく。
おかしい。こいつこんなにインテリだったか?
それに第3問の、

くつしたに入らないプレゼントはきゃっかだったおとうさんが、
中学生のとき、ギターがほしくてがんばったことはなんでしょーう?

の答え、

巨大な靴下を自分で編んだ

を、一発で当てるなど、有り得るだろうか?
次第に組み上がっていくパズルが、一つの事実を示唆し始める。
まさかな。いや、そこは問題ではない。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



もぐっんぐぐ、や、やっふぁー!!!

おめでとー! おねえちゃん、すごーい!


巡るゴンドラの軌跡が真円を閉じる、ほんの数瞬前、
その偉業は達成され、ここに奇跡が顕現する。
高々と突き上げられる拳。
微かな予兆は形となって、厳然たる事実となる。

地上に降り立つ二人。
吹き盛る風は、いつの間にか止んでいた。
長い沈黙を経て、男が口を開く。


お前の頭が、そこまで回るとはな。

将を射んと欲すれば。貴方の教えです。
それに、汲んでいただきたいのは!


小賢しい知恵より、思いの深さ


止むを得ん。望みを言え。

む、娘御を、共に護り育むお役目をいただきたく

オレが聞きたいのは、回りくどい言い訳などではない!

大好きです! ……ほんとです。一緒になってください!


知らず解ける厳しい相貌。
戦場を一から叩き込んだ、かつての姿が浮かぶ。
こんな小娘に攻略されるなんて、オレも終にヤキが回ったか。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



ほら、お父さん、そんな所でゴロゴロしない!

ん? あー、うん。

もう! あたしが惚れた、あの凛々しい姿はどこにいっちゃった
んでしょうねーえ?

ねー?
そうだ!こないだのあれ、お父さんにも食べてもらおう!

またか。もうかんべんしてくれよ。

失礼しちゃう!
お母さんにも手伝ってもらったし、今度は自信作なんだから。

信じていいか?

あー、保証はしません。

ひどいよ! そこは味方してくれなくちゃ!



あの後、娘の将来を考え前線を退いたオレは、
この平和な日常において、疑いもなく役立たずだった。
今や女二人に結託され、尻に敷かれっぱなしだ。
時に、血湧き肉躍る日々を思うこともあるが、
これで正解だったと思っている。
ゴールとしては上出来だ。





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