うれしはずか神話 事始めの儀

▼今週のお題
■セリフ 
「見て、光ってる」
■三題 
・宇宙 ・スープ ・虫よけ

▼投稿ルール
・投稿締切(任意):2026年5月21日(木)23:59
・ハッシュタグ「#せりふ三題噺」「#宇宙スープ虫よけ」を
つけて投稿

( せりふ三題噺は、はらとけい さんのご企画です。)



まだ、宇宙がよくわからないスープのようだったころのお話。

とてつもなく長ーい、棒?を担いで、
えっちらおっちら、やってくる者がいる。

なになになに? なんでそんなもん持ってんの?

また出た。何にでもすぐ食いつくの、良くないよ実際。

だってまだ何にもなくてつまんないんだもの。
で、なに?それ。

矛? らしいよ。
突き刺したり、かき混ぜたりするんだって。

なにそれ。なんで?

知らないよ。先輩たちの言うことなんて。
毎日額集めて難しい顔しちゃってさ。

肩に食い込むその重さに耐えかね、一旦どこかに置こうかと思ったが、
まだ置く所すらなかったので、無理だった。
無闇に放ったりすると、どこまでも落ちていって失くしかねない。
そんな事になったら、またあの無言の圧力に耐えねばならない。
ため息をつく。

これは必ず成さねばならぬ、なんて。
だったら自分らでやればいいのに。

まあまあ、あにさん方はほら、人型?してないし、仕方なくない?
役割があるだけいいよ。退屈しのぎになってさ。

お前はいつも前向きでいいよね。
そうそう、なんでかは知らんけど、二人でやれってさ。

ほんとに? やったー! やろうやろうすぐやろう!
で、何をどうするの?

下、見てみ?

足元を覗き込むと、
正直なんと形容してよいものかわからない何かが、一面に蠢いている。

どろどろだね?

あれをどうにかしろってさ。
どう思う? あれ?

どうって、そうだな、うーん、   よく見ると、   おいしそう?

指をくわえて、よだれを垂らさんばかり。
こちらは心底呆れ顔。

本当にゲテモノ喰いだね。
なんでもすぐ口に入れようとするし。
それで何度も叱られてるの、忘れたの?

だってお腹空くんだもの。贅沢言ってらんないよ。
とりあえず食べられるか、試してみようよう。

切なそうに身をくねらせる。
おまけに聞こえる腹の虫の自己主張。

仕方ないなあ。よっこらしょ。
これを、下に、伸ばしたら、届くかな。

長ーい鉾を、眼下に向けて差し伸ばしてみる。
半ばダメ元だったが、どうやらそういう用途の物だったらしい。
真下に向けるとするすると長さを増して、難なく穂先が表面を掃いた。
引き上げてみる。

滴る何かに、鼻先を寄せてみるが、無臭。
舌をえーっと伸ばしてやっと数滴受け、口中に行き渡らせるも、
微妙な表情。

どう? 腹の虫よけ? 虫養いか。 にはなりそう?

んー。ちょぴっとすぎて、わかんない。
せめて頬張るくらいに採れない?
もっと奥まで突っ込んでかき回してみようよ。

今度は二人でリベンジを試みる。
なるべく深くまで突き刺して、底を探るようにする。
その尋常ではない長さと、対象物が持つ粘度の抵抗で、
力を振り絞っても、じわりとしか動かせない。

ちょっとこれ、無理くない?

始めたばかりでもう弱音?
一応、男?って事になってんでしょアンタ。

だからってなに? それって史上初の偏見じゃない?

いいからほら、力を、込める!

頼りなく前後していた柄の先が、徐々に円を描き出す。
一度軌道に乗ってしまえば、なんとかなるものらしい。

お! いいねいいね、いい感じ!

もう、これくらいで、よくね?

なんか楽しくなってきた。もう、ちょ、っと。

勢いがついてくると、その半径は大きくなっていき、
今やかなりの範囲を、ゆっくり波立たせながら巡っているのが見える。

ねえ、もうさ、いいかげん、つかれてきたん、だけど。

………。

抗議の表情をのせて、顔を覗き込むが、
うつむいたまま、返事が無い。
相手の気持ちを計りかねて、手も止められずに、戸惑う。

……あのさ、 なんかこうしてるとさ、

ささやき声。
辺りの空気の変化に気づく。

世界にね?  二人っきりって感じ、 しない?

初めての感覚が、背筋を走る。

こちらをチラチラ伺っている気配がするが、
もう目を合わせられない。
大変めんどくさいことになる予感がして、あえて無視する。
気のせいか、握る手の位置がずれてきて、
時々小指が触れるし、なんだか不必要に肩をよせてくる。

ちち、近いって!
あと息荒いのキモいからやめてくれない?

なっ、キモいとかいつもながら酷いなキミ。
ていうか、結構重労働なんだから仕方なくない?

それでもまあ、
特に他にやることもなく、
しばらく、共同作業に勤しむ。
繰り返し止め時を探るも、何かまだ物足りないものを感じて、
言い出せずに、また口ごもる。

その内、どちらからともなく、妙な雰囲気に包まれる二人。

あのさ、これ、なんかさ?

なに。

ちょっとその、ヤバくない?

なにが。

これって、ひょっとして、     卑猥ってやつ? じゃない?

やめろってば!

互いの顔を見れなくなって、二人してうつむけば、
はたして遥か足元の水面には、いつしかこごりが集まって、
その中心に、フルヘッヘンドなものが出現していた。

あ、なんか出た。
ほらヒワイだよこれ!
どっかで盗撮とかしてるよ絶対!

なな何言ってんだよわかんないよ!

わかってるし!

わかるかっての!

急に握る手をほどき、顔を覆う。
惰性でぶれる鉾を止めようと慌てて踏ん張る男神。

なんでよ! あたしのこと、……そんなにキライ?

えっ、なんでそういう話になんの?
だって、ほら、比較対象とかないし、
正直、わかんないというか、

またそうやって逃げる!

イヤイヤ違うし?

じゃあいいじゃん好きで!

なんでだよ!

やっぱキライなんだ。

だから! 極論ばっか言ってたってしょうがないでしょって!

じゃあ、   どっちかって、いうと?

残った二人目も両手を離す。
長く突き出た柄は、途端に制御を失って暴れ出すが、
もはや目に入らない。

そりゃ、まあ、
ずっと一緒だったし、どっちかっていうと

いうと?

好き、だよ。


リーン!! ゴーン!!!    コオロコロコロ……

突如現れ全天を満たす、まばゆい光。
祝福の鐘の音は、まだ生まれたばかりの世界の隅々まで響き渡る。

なになに?なにごと?

見て見て、光ってる! 真上!

天界の中心から、何か萌え出づる芽のようなものが、
逆さに突き出してくる。しかもそのあまりにも巨大な威容は、
さらに輝きを増しながら膨れ上がり、見るものを圧倒して止まない。
思わず平伏するふたり。

ウ・マアアアァーシ!!!

発せられる轟音。地に押し寄せる風圧に抗しきれない。

漸く神意を汲んだか。次代を担うフタリ神よ。
この世は若きお主らの無軌道な衝動により、
新たなるステージへと到達した。
自ら形作りしかのエリアへと今すぐ降臨し、
欲望の赴くままくんずほぐれつミッションに移行する事を

ウ・マアアアァーシ!!!

再び襲い来る烈風にいいように翻弄され、ただ耐える。
吹き飛ばされないようにするので精一杯だ。

        命ずる!!

否応無く肺と脳を蹂躙する大音声に、身悶える。
神の力とは、一面、純粋な暴力だ。
小理屈の逃れる隙間など、一切あり得ない。
荒ぶるそれの、剥き出しの脅威に晒されて、
畏怖以外の感情は存在そのものを許されないのだ。

……ところでさ、若いっていいよね。ほんと初々しくて。
わしも奥さんとか欲しくなったんだけど。ダメ?
あ、まだマイク入ってる? ごほん。
えー、ちなみに新居はとりあえず4LDKになっておるので、
足りなくなったらすぐ言うように。自分で改造も可。
あとなんか産んだらちゃんと逐一報告すること。
失敗したからってそこらに流しちゃうとか禁止。
おじさんとの約束。いいね?
それでは、アデュー!

軽すぎ?いいじゃん出番あんまりな 

ブツ

ウ・マァシアシカッ・ビイィィィイイイ!!!
                  コオロコロコロ……


嵐が去り、ようやく額を上げる二柱。
圧倒的なキャラの濃さに、茫然自失で顔を見合わせるが、
二の句が継げない。

えーと。

うん。

なんというか、

うん。

ぜんぶ、見られてたね。

そこ!? 信じらんない!
さっき言ったことちゃんとっ うぶっ?!

しばし流れる原初のしじま。
今は神さえもそそくさと背を向ける、
欠けたる事無きたまゆらの時。
全てはここに、萌え出づる。

これ以上ない至近距離で、
まっすぐ、見つめ合う。

決めた。
もう、遠慮はしない。

ほんとに?

今夜から、全力でいこうと思う。
覚悟してくれ。

急にがっついちゃってさ、
そうなると、ちょっと引くよね。

え?

うそうそ。
そんな情け無い顔、しなさんな。
これも神意なれば、お供いたしますよ。永遠に。











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