【短編小説】学校では教えてくれないこと。
僕は、昔から興味のあるモノにしか反応できなかった。
お母さんの気持ちも、先生の言葉も、教科書の教えも
ほとんど理解できなくて、僕は永遠に落ちこぼれ。
でも好きなモノだけは決まっていた。
カエルの解体
人間の脳みそ
ゴッホの絵
手塚治虫のマンガ
同じ曲調で始まり、同じ曲調で終わる曲
懐かない猫
シャーシャー怒る猫に愛着が湧くのには、ちゃんと理由がある。
だって猫達は怒っているんじゃない。
猫たちは怖くて怯えているだけなんだ。
必死で身を守っているのに。
僕たち人間は勝手に“威嚇”と名付けて、肉食獣を獰猛だと決めつけた。
簡単には懐かない猫が、僕は愛おしくてたまらない。
嫌いなモノも決まっている
常識
正義
道徳
教科書
ニュース
政治家
先生
正論が正義で、多数決が真実になるこの世界。
僕は息苦しくて死んじゃいそうなのに
みんな揃って同じ方向を向いて
罪人を非難する。
罪人がワルモノだと、決めつける。
ワルモノの本当の正体を知らない人が
偉そうにワルモノを知った口で語る。
僕は思った。
ワルモノって、そもそもなんだっけ?
例えば僕が学校で、一番威勢の良いお友達に
教科書を隠されたとする。
それはイジメになるけれど
真実は違うかもしれない。
威勢の良いお友達を、僕が無意識に
傷付けていたら?
威勢の良いお友達は
僕と仲良くなりたかっただけで
僕が無視したことに酷く傷付いて
僕が教室に置き忘れた教科書を手に取ったとき
傷口がうずいて、とっさに教科書を隠してしまった。
もし、そうだとしたら?
意地悪には必ず理由がある
でも、より悪い事をした方が この世界ではワルモノになる
僕らは真実を知らずに、簡単に制裁を下す。
僕らはきっと、ワルモノを創り上げたい聖人君子なんだ。
そう思ったら
僕は途方に暮れた。
それは、まるで
行き先の分からない列車に乗っている気分。
今日も、世界には 当たり前なように朝日がのぼり
食卓には幸せを絵に描いたような朝食が並ぶ。
白いご飯
味噌汁
焼き鮭
納豆
甘い卵焼き
昨日は洋食だったけど、今日は和食みたいだ。
真面目な顔をして、真実なのかどうかも分からないセリフを、次から次へと流れ作業のようにペラペラと口を動かす評論家が、今日も変わらずテレビに映し出されるのを真剣に見ている、お母さん。
今日もなにも変わらない、僕の1日が始まる。
僕は、気づいてしまった。
きっとこのままじゃ、僕の探しモノは見つからない。
学校では教えてくれなさそうだし
図書館にも、見当たらなかった。
だから僕は
学校へは、明日から行かないことを決意する。
貯めたお小遣いを握りしめて
旅へ出る事にした。
旅の名前は「人生勉強」。
まだ、外は暗かった。
僕は遠くまで行ってくれそうなトラックを見つけて
見つからないように荷台に乗りこんだ。
当然だけど冷凍車と冷蔵庫にだけは、乗らないように気をつけた。
行き先は運転手にお任せだ。
朝日が昇る前に、トラックは動き始めた。
僕だけの世界が動き始める。
僕しか知らない旅が始まる。
朝焼けが、七色にグラデーションしていた。
まるで、僕の旅を歓迎してくれているみたいに。
学校では教えてくれないこと。ーENDー
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