【ショートショート】雨模様に咲いた花びら
ねぇ、知ってる?
雨の日ってね。
実は写真が綺麗に撮れるの。
葉っぱの色が深くなって
石畳も暗い雨音に染まってる
花びらは雫を纏って憂いを乗せる
悲しげな表情のなかに動きが息吹く
空は青くない
太陽は見えない
でも、地球が色を濃くするの
あれは、僕たちが初めての遠出旅行をしたときのこと。
太陽には恵まれずに、一日中雨が降った。
君を喜ばせたかった僕は、ひどく落ち込んでしまった。
なのに君は
そんなことを、笑って語ってくれた。
僕たちが行く先々の観光地は、閑古鳥が鳴いていた。
なのに君は
そんな風に、無邪気に笑っていた。
僕がその言葉にどれだけ救われたのか、君は知っている?
青と白のギンガムチェックの傘を広げて、君はあの日「ねぇ、見て?まるでこの傘の中だけ青空に見えない?」と笑った。
濡れた大地に、拡がった青空と太陽。
それはまるで雨模様の中に咲いた、光の花。
雨が降り頻る誰もいない東屋で、僕らはそっとキスをした。
それは、終わらないキスの始まり。
君の唇は、雨の日に開花した花びら。
雨が大地に吸い込まれていく音が、耳元でこだまする。
そこは、雨音しか聞こえない二人きりの世界。
僕たちの熱を帯びた唇と唇が、世界を溶かす雨模様に重なってひとつになる。
咲き乱れた君の濡れ髪と、潤んだ瞳が
いまでも焼き付いて、離れない。
ねぇ、教えてくれないか?
君は今でも
今日みたいな雨模様の空の下で
笑顔を輝かせているのかな?

雨の日の東屋で濡れたまま♡きゃー♡(*ノωノ)
ー余談ー
私は観光地のような場所で働いています。
大雨の日は、お客様がほとんど来ません。
それでも観光バスはやってきて、
残念そうな顔をされることもあります。
そんなとき、私はこう言うのです。
「実は、雨の日のほうが写真は綺麗に撮れるんですよ♡」
青空が見えないなら、作ればいい。
太陽が届かないなら、笑えばいい。
今日みたいな雨の日に
そんな衝動から生まれた、雨模様の物語☂️
The Day Colors Deepened-END
2026/02.25
