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僕とニャンゴスターが結んだ悪魔のトレード 第9話「初雪」【全10話】

🎧 サントラ小説
再生できる方は、本文と一緒にお楽しみください。


【僕とニャンゴスターが結んだ悪魔のトレード】
第9話
初雪


日に日に寒さが募りはじめて、ニャンゴスターの長い毛は冬毛に生え変わり、さらにモフモフさを増していく。

ある日のこと。
ぼくの街に初雪が降った。

「お前、雪ではしゃいだことあるニャロか?」

「まさか、あるわけないじゃん。
僕が唯一できるのは、窓から雪を眺めることだけ。
それ以外は望んじゃいけないんだ」

「ニャら、今夜はお散歩ニャね」

僕らはお母さんとお父さんが寝静まってから、雪が舞う夜の街へ飛び出した。

踏みつける真っ白な大地。
肉球がひんやり冷たい。

しんしんと降り積もる雪が、静かすぎることに僕は驚いた。

窓から眺めてきた雪の世界とは、ちがう。
ニャンゴ君の耳が良すぎるからなのかな?
なんだろう……雑音が一斉に消えて、なくなってる!

雪が積もれば積もるほど、街の喧騒がなかったことになっていって、空気がいつもと違う。
すごく、きれいだ。

それは僕にとって、初めての感覚だった。

僕たちは街を見下ろせる、いつもの高台の公園までたどり着いた。
ニャンゴスターは背中に積もった雪を身体を震わせて振り払う。

初めてここへ来たときカラフルだった屋根が、みんな仲良く真っ白に雪化粧をしている。

ここは、絵本で見たおとぎ話の中の街。
ここは、僕の生まれ育った街。
ここは、ニャンゴスターと歩いた街。
ここは、ニャンゴスターと僕の街。

見慣れた街が、白く白く染まっていく。

僕たちは、できたてホヤホヤの雪道に肉球の足跡を残す。

「ねぇ、もしかしてニャンゴスターが見たい景色って、雪景色じゃないの?」

「どうかニャ?雪なら野良生活で何度も見てきたニャロ」

「あ、そっか。この辺りでも何年かに一度は、このくらい雪降るもんね」

「雪は、ただ白いだけニャ」

「ニャンゴスターは寒くないの?」

「ぜんぜん。俺は昔から冬のほうが得意ニャね」

「フフフッ。そうだよね。夏のほうがしんどそうだったもんね?」

「雨は嫌いニャがね。雪は溶けなきゃ濡れないニャロ。
でも風邪ひいたら、めんどくさいニャから……もうそろそろ帰るニャよ」

「待って。ねぇ、ニャンゴスター!
僕ね、気づいたんだ。これからも僕たち、このままでいいよね?
っていうか、このままがいいよ!

僕はずっと、あの家から出られなくていい。
これからもニャンゴスターと一緒にいたいんだよ!

だってさ、ニャンゴスターと一緒にこうやって走り回れる!
だから心臓なんかいらないよ!

ニャンゴスターがいてくれれば、僕は自由なんだ!
そうだよ。ずっと僕のそばにいてよ!ニャンゴスター!」

でもニャンゴスターは、何も答えてくれなかった。

僕の願いは、いつだって叶わない。

心がひんやりして、雪が僕とニャンゴスターの街を真っ白に染めていく。

ニャンゴスターの反応は凍りつくくらい冷たくて、氷の矢が僕の心に刺さったまま溶けなかった。

でも本当は――
もう、なにもかもが遅いってこと。
僕はそのとき、まだなにも知らなかったんだ。

また今年も、薄ピンク色に染まった季節が巡る。

春は、ニャンゴスターと出会った季節。
ニャンゴスターが僕んちの家族になって、もうすぐ一年になる。

隣のお宅の梅の花がちらほら咲き始めるのを横目に、夕方五時の夕暮れが日に日に伸びていく。

美しく整った立ち姿の梅の木が、真冬の震える寒さに凍えながらも必死に蕾を膨らませていく。
小さな蕾が迎春の日の出を慈しむように、何日も何日もかけて満開を迎えた。

梅の花がすっかり散ってしまったころ、ニャンゴスターが言った。

「三つ目の見たいもの。そろそろニャロ」

お弁当を食べながら、桜吹雪が見たい――のだそう。
「お弁当を食べながら?」って、僕と一緒にってこと?と尋ねると、

「そうニャ」ってニャンゴスターは頷いた。

僕は少し考えた。
僕がお弁当を持って桜並木まで、ニャンゴスターとふたりで出歩くことは不可能に近い。
ニャンゴスターの背中にリュックみたいにお弁当をくくりつけて歩くのも、やっぱり無理がある。

僕はお母さんにお願いして、お父さんとお母さんと車で行けるお花見ポイントに連れて行ってもらうことにした。
もちろん、ニャンゴスターも一緒に。

僕が、僕からどこかに行きたい……なんて言うのは、何年ぶりだろう。
お母さんはとても驚いて、でもすごく喜んでくれて、涙目になっていた。
ちょっと、びっくりした。

お父さんも張り切っている。
率先してニャンゴスターのリードをAmazonで頼んでくれた。

あれよあれよと時が経ち――
「関東でもソメイヨシノが見頃を迎えました!」とあちこちで報道された週末。
桜が有名な公園へ、家族みんなで日帰り旅行だ!

お母さんは朝から張り切ってお弁当を作り、
お父さんも上機嫌で車を洗車している。

こんなふうに穏やかな家族の時間を迎えるのは、何年ぶりだろう。
そういうことをずっと拒否してきた僕には、
そんな記憶の引き出しが、そもそも存在しなかった。

車の中でニャンゴスターがお利口さんにお座りしていて、
お父さんもお母さんもびっくりしていた。

日帰り旅行といっても、遠くに行くわけじゃない。
僕たちは千葉県内の、ピンク色が満開の公園を目指す。

お父さんが調べてくれた桜が有名な公園に、たどり着いた。

でも、もう駐車場はいっぱいだった。
だから僕とお母さんとニャンゴスターだけ先に降りて、
お父さんは遠くの駐車場に車を停めに行ってくれた。

大きな桜の木の下にレジャーシートを敷いて、
先にお弁当を広げる。

お母さんが作ってくれたお弁当は、
僕たち人間のぶんと、ニャンゴスターのぶん。

ニャンゴスターのお弁当は、茹でたてのササミだ。

ニャンゴスターに「お弁当は何がいい?」って事前に聞いたら、
リクエストされたのが茹でササミ。

僕もちょっとだけ手伝った、自慢の一品。

お母さんが「トイレに行くね」と立ち上がり、僕はニャンゴスターと二人きりになった。
——やっと、おしゃべりができる。

「僕と同化しないと、桜吹雪は見れないんだよね?どうするの?」

「そりゃ、とくいの寝たフリニャロ?」

そう言われて、僕はひと芝居打たなきゃいけなくなった。

遠くの駐車場まで一人で行ってくれたお父さんが合流して、お母さんが戻ってくる。

ニャンゴスターは小春日和の日差しの下で、気持ちよさそうにお昼寝をしている。

僕たち人間はお昼には少し早かったけれど、
「先に宴会しちゃおう」
ってことになった。

お弁当は僕の大好きなお稲荷さん。
お母さんのお稲荷さんは、中のご飯がゴボウ鶏めしだ。鶏肉の食感と、ゴボウと舞茸の香りが詰まった、お母さんの得意料理。
黄色い薄味の卵焼きと一緒に食べるのが、僕の大好きな組み合わせだった。

お父さんが言った。

「お母さんのお弁当は、日本一おいしいね」

「ちがうよお父さん。世界一だよ!」

僕もかぶせて褒めてみた。
お母さんが、幸せそうに笑った。
お父さんは瞳を潤ませて、涙を浮かべている。

お父さんもお母さんも、最近僕が明るくなったことに気づいてる。
ニャンゴスターのおかげだってことにも、たぶん気づいてる。
本当のことは知らないけれど。

突然、春一番のような強い風が吹いた。
ピンク色の花びらが舞って、お弁当をカラフルにしてくれた。

タヌキ寝入りしていたニャンゴスターが、南風さんに叩き起こされる。

「俺も食べるニャロ!」

大きな声で鳴くと、お母さんが茹でササミをちぎって食べさせている。
ニャゴニャゴ言いながら喉をゴロゴロ鳴らして、夢中で食べている。
頭上にピンク色の花びらが、ひらりと一枚乗った。

みんなが一通り花見弁当を食べ終えた頃。
僕は第三作戦を決行した。

正直、罪悪感で胸が痛い。
でも、仕方ない。

お父さん、お母さん、ごめんなさい。
先に謝っておくね。

お父さんとお母さんの目を盗んで、僕はわざとニャンゴスターのリードを外した。

「アッ!ニャンゴスターがいなくなっちゃった!どうしよう、お母さん!」

僕の猿芝居に二人は慌てて消えたニャンゴスターを探しに行った。
僕は一緒には行けないから、レジャーシートでお留守番。

疲れたフリをして、
「お母さん、ごめんなさい。僕、疲れちゃったみたいで……レジャーシートで少し横になってるね」

そう伝えて、横になる。

お父さんもお母さんも、僕のことを心から心配してくれている。
お腹の中の虫が、気味悪くうずく。
ごめんね、って思えば思うほど、気持ち悪くなる。

だって本当は、ニャンゴスターはすぐ近くにいる。
数メートル先の垣根の中に隠れている。

お母さんたちが遠くに行ったのを確認して、僕はニャンゴスターと同化した。

僕たちは桜吹雪を求めて、木登りをした。

一番大きな桜の木に登る。
花がそろいで開ききって、ひとかたまりがぼんぼりみたいに重たくしなっている。
枝が少し揺れるだけで、花びらがほどけていく。

見渡す限り、三百六十度。
薄ピンク色の世界。

「桜吹雪が見たいなんて、ニャンゴスターはいがいと繊細なんだね」

「そうニャか? 前のご主人様が、見たいって言ってたニャロ」

「え、そうなの?……ねぇ、ニャンゴスター。
僕んちに来る前はどこにいたのさ?
どうして僕んちに来たとき、野良だったの?
もしかして捨てられたの?」

「……教えニャ〜イ。俺とお姉さんだけの思い出ニャ!
お前に話す義理はないニャロ」

「へぇ、女の人だったんだね。昔の飼い主。きれいな人だった?」

「え?ニャンで女の人って知ってるニャか?」

「さっき僕に『お姉さん』って言ってたじゃん!」

「あ、口が滑ったニャロ。いますぐ忘れろニャ!」

「フフッ。ねぇ、もっとニャンゴスターのこと色々教えてよ!」

「うるさいニャね〜。そのうち全部教えてやるニャ。
そんなことより……これで全部見終わったニャね。これで俺が見たかった景色は最後ニャロ」

「見終わったらどうなるの? 最後ってどういう意味?
前にも言ったけど、僕は心臓いらないからね!
ねぇ、ニャンゴスター、聞いてる?」

ニャンゴスターは、風の中でぽつりと言った。

「よく覚えておけ。
お前の苦しみは、お前にしかわからないニャロ。
誰かにわかって欲しいなんて考えるのがムダ草ニャ」

「そんなのわかってるよ!」

僕は必死になって、次をつなげようとした。

「そうだっ!!また来年も一緒に桜吹雪を見に来ようね!
ねぇ、ニャンゴスター!」

でもニャンゴスターは、

「そろそろ戻らニャイと、お父さんとお母さんが捜索願いを出しそうだニャロ」

それしか答えてくれなかった。

雪の日に刺さったままの氷の矢が、溶けない。
春一番が心にしみる。
桜吹雪が不安をあおる。

僕はどうしようもなく、心が痛かった。

その夜。
僕とニャンゴスターは、近くの桜並木まで夜桜を見に出かけた。

昼の南風で、桜はほとんど散ってしまっていた。
その代わり、花びらが地面を埋め尽くしていて、風が吹くたび薄ピンク色の欠片がいっせいに宙に舞い上がった。

僕らはピンクの絨毯で遊んだあと、花びらのクッションで丸くなる。
すると、ニャンゴスターが初めて過去の話をしてくれた。

「俺は神ニャった。
でも、お前たち人間が崇める神とは少しちがう。
動物に宿り、不運にも命短し運命を終えなければならない人間を支え、見守る役割を司る…… “見送りの神” ニャロ」

けっこうな衝撃発言だったけど、僕はあまり驚かなかった。
「ニャンゴスターは神様だったの? なるほど。だからしゃべれるんだ!」

「それは違う。お前が望んだニャロ。
てか、話の意味わかってるニャか?
俺は “見送りの神” だニャよ?」

「僕の命が短いってことでしょ?もしかして、そろそろ終わりとか?」

「そうニャ。あと一年ってところニャロ。
それに、お前につく “見守りの神” は俺じゃニャかった」

「どういうこと?」

「人の寿命は決まっているニャロ。俺の寿命も。
でも俺は神に与えられた寿命に逆らってしまった。
あの人との約束を果たすために、悪魔と取引きをしてしまったニャ。
神の力と悪魔の能力を交換したんだニャロ」

「あの人って?だれ?」

「俺の前のご主人様だニャロ」

「悪魔と取引きしたら地獄行きなの?」

「いや、神の能力を引き継げないだけニャ」

「次も生まれ変われるってこと?」

「そうニャ。悪魔も神も人間も、輪廻転生は平等に訪れる。変わらニャイ」

「ねぇ、ニャンゴスター。どうして僕の運命は短いのかな?」

「美人薄命って知ってるニャか?」

「知らない」

「神の世は美しいものを好むニャロ。
お前を早く、あの世へ連れて行きたいんだニャ」

「へぇ〜。美しいって見た目のこと?」

「見た目だけじゃニャイ。全部ニャロ。
少なくとも、お前は昔、美しかった……ってことニャ」

「意味わかんない」

「でもニャ、お前は俺と同じ、悪魔と取引きをしてしまったニャロ。
悪魔と取引きしたヤツはもう、美しくない。
俺の心臓があれば、お前は長生きできる。
そうすれば美人薄命の運命からも逃れられる」

「でも、そうしたらニャンゴスターが死んじゃうんでしょ? そんなのいらないよ!」

「いい加減にしろニャロッ!!!!
お前、勘違いしてるニャか?もう遅い。
悪魔のトレードからは逃れられないんだニャ!」

それから一カ月が経ち、ニャンゴスターの予言どおり、僕の心臓は着々と悪くなっていった。

あの世が、僕を呼んでいる。
そう感じた。

ベッドから起き上がれない日が増えていき、
そしてまた今年も、じめじめした梅雨が来た。

去年の梅雨のことを思い出す。
ニャンゴスターと一緒に大雨を浴びた、あの日が遠い。

その日は梅雨の合間の梅雨休み。
雲の切れ間から光がうっすらとのぞいた満月の夜、ニャンゴスターは空を見上げた。

「時が来たニャロ」


つづく🐾

↓↓↓ 最終話「僕の家に来るまでのニャンゴ君」


ーモフモフ🐾余談ー

UTAKOさん作JR東海ニャンゴスター

にゃにゃにゃ、にゃんと!!!Σ(・ω・ノ)ノ!
親愛なるUTAKOさんが、
ニャンゴスターのすんばらしい🎥動画を作ってくれましたぁ(=゚ω゚)ノわぁい✨✨


UTAKOさん作成のショート動画があまりにもすごかったので
再生▶️してみてくださいませませ♡
動画がいいニャ🐈‍⬛と思ったら
モフモフ🐾ニャンゴスターに免じて

遠慮なくUTAKOさんの記事にも♡をプリーズ🐾

UTAKOさんは
【魂のストーリー冒険の書】を読み解く慈愛の歌詠み師。

占いは大好きですが……。正直なところ、知らない人に占われる(自分をさらけ出す)のは苦手。

でも、UTAKOさんはnoteの記事でご自身の過去を赤裸々に語っていました。これ、かなりリアル。↓↓↓

この記事を読み終えた私は、UTAKOさんの虜に…。
名付けて!
裸を見せてもらったら、裸を見せたくなっちゃう心理♡笑♡(*ノωノ)きゃー♡♡♡

そしてガッツリと赤裸々鑑定してもらったのであります(ΦωΦ)フフフ…


UTAKOさんは
私のしょーもない過去も、私のしょーもない恋愛遍歴も、知っている
唯一のフォロワーさんであります♡(*ノωノ)きゃー♡はずい💦


🐾UTAKOさんの魔法の技術にて🐈‍⬛
🎦YouTubeデビューを果たした
ニャンゴスターから一言🎤


にゃにゃにゃ!!(ΦωΦ)🐾
UTAKOさん、俺のこと盗撮したニャね~!
ニャンってこった!ガブッ!ってコラー!噛むなし!

実はニャ…俺は野良猫ベイベー時代にUTAKOさんのところに、チュールをもらいに通っていたニャロ(=゚ω゚)ノ

ニャンでか!?って。(ΦωΦ)フフフ…。
UTAKOさんちの三毛猫のポテコちゃんに俺はぞっこんニャった。
あれは、俺の初恋ニャロ。

まぁ、最後はフラれたニャが…フンッ!

切ない三角関係ってやつニャ。
けっこう毛だらけ猫灰だらけの、寅さんニャロ
まぁ。この話は、後日トリプルニャンズ企画で披露するニャ!

待ってろニャ!クソアマタレどもッ🐾!


そして…涙が止まらない(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
🐈‍⬛🐾最終話予告…

涙腺が崩壊します。
バケツとバスタオルをご用意ください。。。

……ってそれだけかーい!!!Σ(・ω・ノ)ノ!

adiós♡

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