
メグレ警視 ジャン・ギャバン主演シリーズ 全3作品 個別感想
第1作「殺人鬼に罠をかけろ」Maigret tend un piège(1958)
映画的なオリジナル展開が結構ありますが、一本の作品としての完成度が高い作品です。
メグレが捜査のためにパリの路地を無言で歩くシーンが、音楽の効果と合わせって良い絵になっています。
メグレ以外では本作オリジナルの刑事・ラグリョムの活躍が目立ちます。いつも鼻をかんでおり、ロニョンをイメージしているのかもしれません。
新聞記事を見た犯人が匿名でモランの家を訪ねる下りは、ボタンから割り出すのではなくラグリョムの尾行に変更となっているなど、見せ場もありました。
また、ギャバンメグレでは今作にしか登場しない夫人とメグレのやり取りも良い味付けになっています。
マルセルは妻に感情を爆発させるシーンがあり、原作とキャラクターが少し変更されています。
イヴォンヌも他の男と会ったりしながらも夫を献身的に心配するような様子を見せ、メグレの家を訪ねるなど原作とイメージが少し違う感じになっていました。
最期は、マルセルが一度釈放され、父と不義を働いていた女性を殺そうとした所を現行犯で捕まえる、いかにも映画作品らしいサスペンスが追加されたりもしています。
原作と比べるとやや大味な印象もありますが、警察組織物としての面白さ、ジャン・ギャバン演ずるメグレの存在感が圧倒的で、今観ても色あせない面白さになっています。
スタッフ
原作:ジョルジュ・シムノン『メグレ罠を張る』(1955)
時間:114分
監督:ジャン・ドラノワ
脚本:R・M・アルロ、ミシェル・オーディアール、ジャン・ドラノワ
キャスト
ジュール・メグレ/ジャン・ギャバン
イヴォンヌ/アニー・ジラルド
マルセル/ジャン・ドザイ
ラグリュム/オリヴィエ・ユスノー
メグレ夫人/ジャンヌ・ボワテル
リュカ/アンドレ・バルミー
トランス/リノ・バンチュラ
第2作「サン・フィアクル殺人事件」Maigret et l'affaire Saint-Fiacre(1959)
原作が異色作なのもあり、映画の雰囲気も警察ものというより名探偵ものになっていますが、原作の粗を潰しギャバンメグレ自身の物語として納得するものになっていました。
物語のスタートからして、犯罪予告を伯爵夫人が脅迫状として受け取る形に変更した事で、メグレが事件に絡む動機づけが自然になっています。
また、生前の伯爵夫人との交流も描かれるため、事件に対してメグレが感じる怒りがより伝わりやすいものとなっていました。
他にも、原作の要素は活かしつつ流れの変更を行う事で原作の不満点が大幅に減っています。最後の場面もメグレが主導権をとって謎解きを行う事で、メグレの物語として綺麗に纏まっていました。
メグレの機嫌も原作よりは悪くないため、最後の怒りが活きています。
原作よりも面白くなっており、作品の雰囲気も好みで、個人的なシリーズベストであるだけでなく、観ることが出来た同一原作映像化の中でも特に好きな一本です。
スタッフ
原作:ジョルジュ・シムノン『サン・フィアクル殺人事件』(1932)
時間:97分
監督:ジャン・ドラノワ
脚本:R・M・アルロ、ミシェル・オーディアール、ジャン・ドラノワ
キャスト
ジュール・メグレ/ジャン・ギャバン
サン・フィアクル伯爵夫人/ヴァランティーヌ・テシエ
モーリス/ミシェル・オークレール
ルシアン/ロベール・イルシュ
ゴーチエ/ポール・フランクール
ジョデ司祭/ミシェル・ビトー
第3作「メグレ赤い灯を見る」Maigret voit rouge(1963)
原作、ひいてはメグレ物の映像化としては、雰囲気を含めて満足とは言えない作品ですが、ジャン・ギャバンの存在感を味わう刑事ドラマとしては悪くありませんでした。
ストーリーは原作に沿っていますが時間的都合もあるのか全体的に捜査を簡略化しており、殺し屋グループの活躍を表立って描きすぎているかなと思います。
ロニョンも登場していますが原作とは大分キャラ変しており、直接的な愚痴を言う一般的な刑事という感じになっています。
最後まで事件に絡む脚色になっており、最後には重大な決断をメグレに託されるというおまけつきです。
マクドナルドの役割を吸収したハリーがメグレと知り合いの設定で、早い段階でメグレと絡むなどの違いもありました。
前2作と比べるとファン向けの映画になりますが、娯楽刑事ドラマとしては、時間も短くサクッと楽しめる一作になります。
スタッフ
原作:ジョルジュ・シムノン『メグレと生死不明の男』(1952)
時間:83分
監督:ジル・グランジェ
脚本:ジル・グランジェ、ジャック・ロベール
ジュール・メグレ/ジャン・ギャバン
リリィ/フランソワーズ・ファビアン
ロニョン/ギイ・ドゥコンブル
トランス/マルセル・ボズフィ