
メグレ長編30『メグレの初捜査』La première enquête de Maigret(1949)紹介と感想
ジョルジュ・シムノン 萩野弘巳 訳『メグレの初捜査』河出書房新社, 1983
あらすじ
1913年4月15日、サン・ジョルジュ警察署で書記をしている若きメグレ。
夜勤中も一生懸命勉強をしていたメグレのもとに、ミナールというフルート奏者が事件を持ってきた。
ミナールが目撃した情報をもとにバルタザール・コーヒーで有名なジャンドロー家へ捜査に出向くメグレだったが、屋敷中を案内してもらうも明確な犯罪の痕跡がみつからない。
しかし、違和感を感じたメグレは、翌朝正直に署長へ報告する。
すると、所長はメグレに休暇を取って捜査を続けることを勧めてきた。
自身の初捜査に燃えるメグレは、ミナールと共にジャンドロー家の秘密を探っていく。
紹介と感想
若きメグレを主人公にした異色作になります。
相棒は「そりゃどうでもいいことです」が口癖のミナール。
私生活での抑圧が強いミナールは自らが持ってきた事件において蚊帳の外に置いておかれたくないため、メグレの捜査に積極的に関わってきました。
当然、お馴染みのレギュラー警察陣は誰も出ませんが、メグレ夫人の出番は多く、新婚5カ月と若き夫婦の晩年とは違う姿が楽しめます。
若きメグレの活動的な捜査を追う筆致は軽快で、春の陽気に覆われたパリはシリーズ中でも明るくすらあります。
まだ形の定まらず危なっかしさもある捜査ですが、後のメグレ警視への面影はしっかりあり。
若い時ならではのピンチも、ありがちではありますがしっかり物語を盛り上げます。
事件の真相自体はメグレシリーズ全体としても標準レベルですが、いつもと趣向を変えたことがプラスになり楽しく読むことができました。
苦い結末を糧に特捜部へ向かった若きメグレの活躍も観たかったと思ってしまう好編です。
「今日は何をするんですか、パトロン?」
そしてメグレはずっと後になってから、彼を《パトロン》と呼んだのは、このフルート奏者が初めてだったと、思い出すことになる。
映像化
ルパート・デイヴィス主演シリーズ(英) ※日本未紹介
シリーズ4 第7話「A Taste of Power」(1963)
キース・ブリュッセ主演シリーズ(蘭) ※日本未紹介
第4話「Maigret en de kruidenier」(1965)
メグレシリーズ 既読作品リスト
現時点での読了リストを自分用のメモとして書いておきます。
☆がお気に入り、〇がお気に入りには後一歩だけど良いと思った作品です。
全て現時点での評価になります。
長編
〇03.サン・フォリアン寺院の首吊人(1930)
06.黄色い犬(1931)
☆07.メグレと深夜の十字路(1931)
☆09.男の首(1931)
14.サン・フィアクル殺人事件(1932)
〇17.紺碧海岸のメグレ【別邦題:自由酒場】(1932)
☆18.第1号水門(1933)
☆21.メグレと超高級ホテルの地階(1942)
☆25.メグレと奇妙な女中の謎(1944)
☆26.メグレ激怒する(1945)
〇27.メグレ氏ニューヨークへ行く(1946)
☆29.メグレと殺人者たち(1947)
〇30.メグレの初捜査(1949)
☆35.メグレと老婦人(1950)
☆36.モンマルトルのメグレ(1950)
☆38.メグレと消えた死体(1951)
☆39.メグレと生死不明の男(1952)
☆41.メグレとベンチの男(1952)
〇42.メグレの途中下車(1953)
〇43.メグレ間違う(1953)
☆44.メグレと田舎教師(1953)
☆45.メグレと若い女の死(1954)
☆46.メグレと政府高官(1954)
☆47.メグレ罠を張る(1955)
〇48.メグレと首なし死体(1955)
〇52.メグレと火曜の朝の訪問者(1957)
☆53.メグレと口の固い証人たち(1958)
〇56.メグレと老外交官の死(1960)
62.メグレと幽霊(1964)
☆63.メグレたてつく(1964)
〇64.メグレと宝石泥棒(1965)
〇72.メグレと老婦人の謎(1970)
73.メグレとひとりぼっちの男(1971)
中短編
01.首吊り船(1936)
02.ポールマルシェ大通りの事件(1936)
03.開いた窓(1936)
〇04.月曜日の男(1936)
05.停車──五十一分間(1936)
☆06.死刑(1936)
07.蠟のしずく(1936)
〇08.ピガール通り(1936)
☆09.メグレの失敗(1937)
☆10.メグレ夫人の恋人(1939)
☆11.バイユーの老婦人(1939)
〇12.メグレと溺死人の宿(1938)
☆13.殺し屋スタン(1938)
☆14.ホテル“北極星” (1938)
〇17.メグレと消えたミニアチュア(1938)
〇19.メグレとグラン・カフェの常連(1938)
20.愚かな取引(1939)
☆21.街中の男(1940)
☆24.メグレと無愛想な刑事(1946)
☆25.児童聖歌隊員の証言(1946)
〇26.世界一ねばった客(1946)
〇27.誰も哀れな男を殺しはしない(1946)
☆28.メグレ警視のクリスマス(1950)
☆29.メグレとパリの通り魔(1951)