40代の読書 2025年11月の記録
#ヘミングウェイを助けたパリ
『移動祝祭日』
大戦が文学にもたらす影響たるや。
第一次世界大戦後の社会的な幻滅と虚無感(米国におけるロストジェネレーション時代)ヘミングウェイとフィッツジェラルド、フィッツジェラルドを愛した村上春樹。なお言えば、まさに第二次戦時中という狂った時間に作品を書いた三島由紀夫や太宰治。私はこのあたりの糸で繋がったような感覚の連鎖を楽しんでいる。
この話からはじめたいと思う。アーネスト・ヘミングウェイは、1920年代第一次世界大戦が終わって社会や精神が安定しない時期、パリで過ごした(大きな恋愛もして)。その後、彼にとってパリという場所はこの後の人生について回るぐらいの祝祭日と歌うほどの良い衝撃を受ける場所であるという思いから回想記を書いたのがこちら。
正直読み進まなかったので解説だけ読んでみたら、そこにはヘミングウェイとフィッツジェラルド(『グレイト・ギャッツビー』名著は、村上春樹が心から愛している。愛しすぎて、ついに彼はその小説を自ら訳した)がともに過ごした時間だったらしい。
村上春樹は、日本の敗戦には世代としては大きな影響があったに違いない。(第二次)大戦後の心の不安定と空虚感、淡々とした感情の混じり要らない彼の作風は、(第一次)大戦後のフィッツジェラルドやヘミングウェイとも大きく重なり、自分なりになるほど感を得た。
私もヘミングウェイと同じく「移動祝祭日」と呼びたいパリには(勝手な所感として)退廃的にならず眼の前のものを慈しみ楽しみ、喜びも怒りも全部吐き出させる力があると思っている。人はみんな自分勝手。言いたい放題で、街全体が家族のようだ。私はニューヨークにもたまに同じものを感じつつ、パリもそう。日本にはない気持ちの開放感がある。1920年代、ヨーロッパに渡ったアメリカ人も、当時はそう思ったのかとじんときた。
#フィリップKディックの短編の威力
「薄明の朝食 Breakfast At Twilight」(1954)
Amazon Primeドラマで、その広告をNYの地下鉄に展開して大きなバッシングをうけたという「高い城の男 The man in the high castle」(1962原作)と同じ原作者フィリップKディックの初期SF短編集。「薄明の朝食 Breakfast At Twilight」(1954)これは特に「高い城の男」と背景が少し似ていて、戦争時代と現代を行き来するような本当に短い話。1954年を思うと、目が覚めると世界大戦が勃発していたり国同士の関与も大きくなり世界規模で破滅や恐怖にいつでも戻る可能性のある時期。単純に私感だが、この二重世界を思う彼の意識を文章にすることで警告ともなっていたのかもしれない。
こちらも大戦と社会不安がもたらすなにか。
#村上春樹からの教えが、実は重かった
『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(2015)
巡礼というキーワードは、儀式的に使われているがむしろパウロ・コエーリョ星の巡礼(実際宗教的な意味をもちつつ、本当の答えはすぐそばにあったというような自分自身の内面をもあらわにしていく旅)とも似たような流れでとても気に入った。※これも読み直そう。
とても仲がよかった高校生からの仲間4人に、20歳前後でいきなり縁を切られ、その後10年後にその意味を回収しにいく旅。なぜその傷を改めて舐めに行く必要があったかというのは、近くにいる(体の関係のある)女友達からの助言で、その痛みを超えて行かないと、これから前向きに進めないという話。
高度成長していった1990年代以降、日本における失われた時代には、時代不安、就職難、学歴格差・・学校、共同体からNGが出て、心を病み、ニートや引きこもりも増えた時代。しかもそれは東京の真ん中の話ではなく、地方(この場合、名古屋)もそう。
その心の再生のものがたりという点で、改めてとても元気をもらった。
前にも書いたが、20代後半(2010年前後)は、私自身が会社で大きないじめに会い、子供も小さいくどうやって生きていったらいいかを本当に悩んでいた。あの当時はこの本を読んだのか読んでないのか全く近い話にならなかったけど、今この本を読んで、あらためて心を再生する手立て、ヒントを教えてくれたように思う。
若い時期は盲信的で危ない
時間が経てば、自分も変わるが周りの人も変わる
自分が悪いと思わない
前に進むために何をすべきかを考える
環境を変える
落ち着いた後に(メタ認知ができた後に)傷に向き合う
そういったことを、自分の息子が今後迷ったらヒントをあげたい。メタ認知はすぐには無理だけどいつか理解ができると思う。
#スターバックスの経営再生を理解しておく
『スターバックス再生物語』
会社を立て直す、数字じゃなくて「つながりを育む経営」をして、どこまでどう再生していくのかという成功物語が知りたかったのがきっかけ。スターバックス コーヒー ジャパンの元CEO(最高経営責任者)は水口貴文(みなぐちたかふみ)さんのおすすめ本になっていたので。
スターバックス哲学の軸の揺らぎから売上が落ち込んでいくことに気づき、ハワード・シュルツ会長がCEOとして戻ってきて、改革をしてから数年(2~3年)ほどで数字が戻っていることを思うと、本当に凄まじいスピードでの再生。こんなことあるのかな、と再現性はきついと思いながらもLessons to learnはあった。
1:米国店舗(当時7割のビジネス)の改善。閉鎖、出店ペース減。
2:お客様との感情の絆を取り戻すこと。バリスタ質、コーヒーの香り。
3: 長期的な組織構造。コストカットとレジ周りのテクノロジー、顧客サービス改善。
→改革一発目の株主総会で出したもの
マストレーナ(Mastraena) スターバックス専用に開発されたエスプレッソマシン。
コンサベーション・インターナショナル(Conservation International)
スターバックスが長年パートナーシップを結んでいる環境NGO。
リワードカード(Starbucks Rewards Card)スタバのロイヤルティプログラムで使うプリペイド式カードやアプリ。
マイスターバックスアイディア・ドット・コム(My Starbucks Idea.com)
かつて存在した“スタバ版・お客様の声プラットフォーム”
パイクプレイスロースト(Pike Place Roast) スターバックスの“ど真ん中の看板ブレンド”。
クローバー(Clover) スタバが買収した高精度ドリップマシンのブランド。
最後に学びの格言
「イノベーションは、商品の見直しではなく、関係について考え直すこと。顧客と商品、顧客と店舗など」
読みたいのに読めていないもの。
反抗的人間→シーシュポスの神話におけるカミュとサルトルの対話について、読みたいと思っている。もともとカミュが好きだ。引いてはスピノザにも惹かれてしまうのは、彼らが「自己陶酔に陥らないところ」のメタ認知が好きだからだ。つまり「人間の力では、世界(Natura)は動かない」。
それを思うと、まだこちらも読み進められていないノヴァセン(ジェームズ・ラブロック著)にも及び、私としては、まだ足を踏み入れていない密教の無意識世界にも広がっていくようで、今後が楽しみだ。
作家の根底にある信念と哲学を知れば知るほど、文学は面白くなる。そして、作家も人間だ、その軸がちょっとづつ変化していく。夏目漱石が面白いのはそのフェーズがあるから、でもある。太宰治もそうか。人間だな、と感じる。
年明け1月の観劇、三島由紀夫『サド伯爵夫人』の演劇(女性のみしかでてこない脚本なのに、すべて男性での演劇)を見に行くのでまたその際に再度。『わが友ヒットラー』とともに、書きたいことが止まらない。
終
