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子どもの一冊が、最初の世界地図になる

4月2日はデンマークの童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンが生まれた日だ。この日に合わせ、国際的な非営利組織IBBY(International Board on Books for Young People)は1967年以来「国際子どもの本の日(International Children’s Book Day)」としてきた。「子どもの本を大切に」という趣旨の記念日であり、表向きにはやさしい行事に見える。しかしただの「読書の日」と呼ぶだけでは、少し足りない。

アンデルセンの童話が中国で読まれ始めたのは、少なくとも1914年にさかのぼるという。雑誌への翻訳掲載から始まり、1949年以降は出版量が増え、1950年代には小中学校の教材としても定着した。いまも教育部の読書指導目録に葉君健訳の『安徒生童話』が残り、100元(約2,200円)ほどする保存版もあれば、ECサイトで10元ほどで購入できる注音版も出ている。

上海市の書店の子ども向け書籍コーナー(2024年2月撮影)

日本では1948年に原典新訳が出て、1968年には東映動画が劇場アニメとして映像化した。デンマークの港町コペンハーゲンで生まれた物語が、北京の教室と東京の本棚に、それぞれ別の形で根を下ろしている。越えたのは「国境」だが、残ったのはそれぞれの社会が選び取った「版型」である。

名作が後世に生き残るのは、内容の普遍性だけではない。安く買えること、読みやすく作られること、学校に置かれること、親が子に渡すこと。つまり物語は、誰かの手が届く形に整えられて初めて、子どものそばに届く。「読書推進」という言葉は理念として立派だが、実際には棚の高さ、値段の桁、家庭の余白が支えている。アンデルセンが日中両国でこれほど深く根づいたのは、作品の力に加えて、地道な整備のプロセスがあったと想像できる。

4月23日にはユネスコが定める「世界図書・著作権デー」がやって来る。大人も含めた読書全般を讃える日だ。ふたつの日付が初春に並ぶのは、偶然のようでいて、何かを示している気がする。子どもが最初に出会う一冊が、その人の世界像の最初の地図になる。その地図をどんな縮尺で、誰が描き、どう手渡すのか。そう問い直してみると、4月2日は「本を読もう」という呼びかけよりも、もう一段、奥の話をしている。

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