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人工知能がこの世界にもたらす「変革」について

世界は今、人類史上、大きな変革期を迎えようとしています。或いは、既に始まったと言っても過言ではないかもしれません。

実際、私がnoteを始めた5年前、人工知能(AI)による生成物など見かけることもなかったのですが、

「ChatGPT」が登場した2022年以降、AIによる生成物を頻繁に見かけるようになりました。

AIは、この世界にどのような「変革」をもたらすのか。

今回は、このテーマについて、次の視点から考察してみたいと思います。

● 安全保障環境への影響
● 雇用情勢への影響
● 日本の心髄への影響

1 人工知能とは
人工知能とは、人間が行う学習や問題解決、意思決定、創造性の発揮、自律的な行動等の能力を、コンピューターや機械で再現できるようにする技術のことです。

1956年、米国の科学者ジョン・マッカーシーが、人工知能研究の起点となったダートマス会議で、初めて「Artificial Intelligence」という言葉を使いました。

2 人工知能の歴史
私たち人類は、数万年前に高度な言語能力を獲得して以降、少しずつ社会を組織的なものへと発展させてきました。

18世紀中盤に始まった産業革命が、社会構造に大きな変化をもたらし、1950年代に開発されたコンピューターによって、情報化社会に向けた基礎が作られました。

1990年代に入ると、パソコンやインターネットが普及し始め、2000年代末から2010年代にかけてディープ・ラーニング(注1) 技術が発展しました。

(注1) 人間の脳の神経回路を模した多層のニューラル・ネットワークにより、大量のデータから機械自身が深層学習する技術のこと

2022年11月30日、OpenAIからリリースされた生成AI(注2) ・ChatGPTが注目を集めたことで、生成AI開発競争が始まったと言われています。

(注2) 生成AIとは、これまでの「データを見分ける」ことができる識別モデル(Discriminative Model)と違って、「新しいデータを創造する」ことができる生成モデル(Generative Model)のことで、既存のデータから学習し、新たな文章・画像・音声・動画などを生み出すことができる

OpenAI CEO Sam Altman
(Bloomberg)

3 生成AIをめぐる近年の情勢
2023年に米スタンフォード大学が公表した報告書によれば、2022年に新たに資金調達を受けたAI企業数は、米国が542社で1位、中国が160社で2位、日本は32社で10位となっています。

Artificial Intelligence Index Report 2023

日本は、2018年12月に経産省がデジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進すると発表し、

2023年5月、内閣にAI戦略本部が設置され、政府・企業・研究機関を挙げてAIを活用したDXを推進してきましたが、

上記のとおり、未だ日本は各国から遅れを取っているのが現状です。

4 米中間の生成AI開発競争
生成AIの開発については、特に米国が突出しており、

2022年12月、MicrosoftがCopilot、2023年3月、OpenAIがGPT-4
2023年12月、GoogleがGemini、2024年2月、OpenAIがマルチモーダルAI(注3) を相次いでリリースしています。

(注3) 言語のみならず、画像、音声、動画など、複数の異なる形式のデータを統合的に処理できるAI

こうした米国の動きに対抗するように、2025年1月、中国が「ディープシーク」をリリース。

時を同じくして、発足間もない第2次トランプ政権が、「スターゲート計画」(注4) を発表しました。

(注4) 米国の大規模なAIインフラ計画。OpenAI、Oracle、ソフトバンクが、今後4年間で5,000億ドルを投資し、米国内にAI専用のデータセンターを建設する  

「スターゲート計画」を発表する米大統領
(Forbes)

そして本年以降、これまでのような特定のタスクを専門とするスペシャリスト型のAIではなく、多様なタスクに対応できるゼネラリスト型の汎用人工知能AGI:Artificial General Intelligence)が登場、

2030年頃に、人間の知能を超える超知能ASI:Artificial Super Intelligence)へと進化し、2040年代に「シンギュラリティ」(Singularity)(注5) が起こると言われています。

(注5) 人工知能が、人の手を介さずに自律的に自己改良を繰り返すことで、人知を超えた知能爆発を引き起こす技術的転換点のこと

シンギュラリティとは?
Softbankホームページ

こうしたAI開発競争の背景には、米中の覇権(注7) 争いがあります。

(注7) 覇権(Supremacy)とは、圧倒的な政治・経済・軍事力を背景とした国際的な影響力のことで、国際秩序の形成・維持に大きな力を持つ一方、時に支配的であったりもする

5 AIがもたらす「変革」とは
(1) 安全保障環境への影響
米国は、2000年代に入ってから急速に台頭し始めた中国を念頭に、過去、戦わずしてソ連を崩壊に導いた第1・第2オフセット戦略への成功体験から、2014年に第3オフセット戦略を打ち出しました。

しかし、米国の挑発に乗りやすかったソ連にはこの戦略が通用しましたが、謀に長けた中国には通用しませんでした。

この戦略の一部は、軍事力の無人化・自律化でもあったのですが、

結果的に中国を相殺(オフセット)するには至らず、むしろ、その分野で中国は米国に追随しているように見受けられます。

中国の究極の目標はただひとつ。
それは「米国に代わる覇者となる」こと。

そのために中国が是が非でも必要としていることが軍の「智能化」、つまり軍事と人工知能を結びつけることであり、

2030年までにAIで世界をリードし、智能化を実現するとして、段階的に次のことを推し進めています。

● 軍民融合
● デジタル化・ネットワーク化
● 無人化・自律化
● 半導体の確保、海外依存からの脱却

何故、軍事にAIが必要かと言えば、AIは間違いなくこれまでの戦争の様相を一変させ、軍事に革命をもたらすからです。

あらゆる闘争には「波」があります。

例えば、現在のウォーゲームでは、先ず、敵情を把握し、情勢を見極め、計画を立案し、作戦資材を整え、実際に攻撃して、その成果をレビュ一(注8) しています。

(注8) この軍事的なOODAループのことを、専門用語で「バトルリズム」という

従来のバトルリズム
(Created by ISSA)

このループにAIが加わる(=智能化する)と、これまで日単位・時単位で行われていたバトルリズムが分単位・秒単位にまで短縮されます。

つまり、究極的にはAIがOODAループの一部を瞬時に終わらせ、意思決定者はAIが提示する次の一手を選ぶだけとなり、相手が考え、態勢を立て直している間に、間髪を入れず次の打撃を与えることが可能になるのです。

「智能化」されたバトルリズム
(Created by ISSA)

加えて、スーパー・コンピューターとネットワークで繋がれた自律型の無人アセットを戦域に張り巡らせたらどうなるでしょうか。

無人アセットなら、人には耐えがたい過酷な環境や運動に耐え、疲労を知らず、命令に忠実で、どんな危険も顧みず、即座に反応し、そして、万一敵地に落ちても救助する必要はありません。

(C4ISR.net)

いわば、捨て駒のような無人アセット網が、探知センサ一/攻撃用プラットフォームとして自律的に協調行動を行い、どこでも敵を自動的に探知・識別し攻撃が可能で、究極的にはOODAループから人間を締め出す(注9) ことも可能になります。

(注9) 意思決定さえもAIに委ねられた兵器のことを自律型致死兵器システム(LAWS)と呼び、倫理上の観点から問題視されている

AIは、バトルリズムを短縮しつつ、これら無数の無人アセットを同時並行的にコントロールし、その裏側ではサイバー攻撃を行ったり、フェイク情報を流したり相手をかく乱することもできます。

これは夢物語でも何でもなく、米中が日々、真剣に考えていることであり、両国がAI軍事革命を起こすと決心した以上、国際社会がこれを食い止めることは至難の業といえるでしょう。

技術面では、既に「GAFA」と「BATH」という米中メガテックが凌ぎを削っていますが、アルゴリズムの優劣が、米中AI戦争の勝敗を決すると言われており、

米中貿易戦争さえ、そのための財源確保という側面があるのです。

「トゥキディデスの罠」でも有名な米国の政治学者グレアム・アリソン氏は、「米中は、益々、その罠に近づいている」とした上で、

万一、中国がAIアルゴリズムで優位に立つことがあれば、「米国は中国に敗れるかもしれない」と危機感を露わにしています。

特定の国が、巨額の予算を投じ、破竹の勢いでAI軍事革命を追求しているとしたら、背景にはそれに見合うだけの野望があるからであり、

その野望が果たせられたとき、軍事的な後ろ盾をもたない外交が、いったいどれだけ役に立つのでしょうか。

5月16日、政府はようやく重要経済安保情報に規制をかけるに至りましたが、

中国軍の智能化・自律化に資する情報を防護しつつ、ミリタリー・バランスを最適化することによって、中国の覇権を抑止するという現実的な施策が、今後、益々、必要になると思います。

(2) 雇用情勢への影響
次に、生成AIが日本の雇用情勢に与える影響を見てみましょう。

生成AIの登場によって、誰もが高度な音楽、画像、映像、文章を生み出せる時代になり、プロフェッショナルだけが、専門知識や技術を独占する時代は終わりを告げようとしています。

現時点では、はっきりしたことは分かりませんが、全職業の少なくとも半数以上が、AIの普及によって何らかの影響を受けるそうです。

実際に、ネット機能の一部や、各種のルーティンワーク、自動運転機能、チャットボットによる自動応答など、AIを用いたサービスは既に始まっています。

学習面でも、AIと対話しながら知りたい知識を得て、文章や画像を作成してもらって、必要なら翻訳だってしてくれます。

学習塾の講師、映像・音楽・画像などのクリエーター、健康管理や資産運用などのアドバイザー、スケジュール管理を行う秘書などは、既にAIの影響を受けているかもしれません。

もし、AIの操作運用そのものを仕事に選ぶなら、プロンプト・エンジニアリング・スキル(AIに適切な指示を出す技術)が必要になります。

一方、今のところ影響を受けにくいのが肉体労働を伴う仕事です。肉体労働を取って代わるには、AIのみならず、ロボット工学の進展が必要だからです。

人工知能に比べて、ロボット工学はやや遅れをとっていますが、いずれは特定の作業に特化した専門型ロボットが普及し、その後、多種多様な作業をこなせる汎用型ロボットが登場することになるでしょう。

いずれにせよ、雇用情勢という観点では、今後、急速に進展する人口減少に伴ってAIやロボットの導入による省人化は不可避であり、概ね、次の段階を経て変革していく可能性があります。

雇用環境におけるAI・ロボット化の見通し
(Created by ISSA)

一番の問題は、それがどのくらいのスピードで変革していくのか、ということかもしれません。

(3) 日本の心髄への影響
最後に、私がライフワークと位置づけ、note におけるテーマにしている「日本の心髄」への影響について考えてみたいと思います。

私 ISSA が、自己紹介の記事に掲載している「日本の心髄」は、下記のとおりです。

日本の心髄とは
(Created by ISSA)

現在、最も身近で深刻な問題のひとつは、生成AIの登場によって、益々、本物と見分けのつかないディープ・フェイクが巷に溢れ返っていることです。

ある程度、国が関与して実効性のある規制を施すことは勿論のこと、これまで以上に、個人個人が情報の真偽を見極める力を上げていく必要があります(☞ その具体的な方策については、次回作で)。

もうひとつの深刻な問題は、労働に対する価値観への影響です。

以前、こちらの記事で、「働く」ということは「心を磨く機会」なのであり、それはすなわち「生きている実感を味わうこと」だと記載しました。

働く機会がAIやロボットにとって代わられると、人間が心を磨き、生きている実感を味わう機会が奪われ、心が病んでいく。それが大きな問題です。

仮に、AIやロボットの普及により、人間があまり働かなくても生きていけるような時代が訪れた時は、ボランティアなど人の役に立つ活動に関わり続けることが、心の健康を保つカギなのかもしれません。

最も不透明な問題は、先述したシンギュラリティの到来です。

人類の知能を遥かに超えた存在が現れたとき、人間を知的活動の頂点とする時代の終焉を意味します。

その時、私たちの人生哲学にどのような変化が訪れるのでしょうか。

現時点で、そのことを見通すことは難しいのですが、ひとつ言えることは、この宇宙は「調和」を前提として成り立っているということでしょうか。

その宇宙に生かされている人間も、道具としてのAIも、全ては「他の幸福を実現するために存在している」という真理があります。

例えば、稲盛さんの人生の方程式にAIを当てはめてみますと、

人間の「①能力」や「②熱意」が+100だとしたら、AIなら+100,000にも、+100,000,000にもなるでしょう。

(Modified by ISSA)

AIは、人類にとてつもない恩恵をもたらす一方で、ひとたびAI(を使う人間)の考え方」がマイナス側に傾けば、とてつもない脅威になるということは肝に銘じておいた方が良さそうです。

おわりに
かつて、人類は原子力という革新的技術を手に入れた時、次世代のクリーン・エネルギーとして繁栄に寄与する一方で、核弾頭という破滅的な脅威をもたらしました。

生成AIという新たな革新的技術を手に入れた人類は、これからどんな道を選んでいくのでしょうか。私たちは今、その重要な分岐点に差し掛かっています。

古来、日本人は新しい技術・文化・価値観を調和的に取り入れて、既存のものと融合させて、日本の心髄として開花させてきました。

新たな「変革」が訪れたとき、常に根底にあったものが「他の幸福を実現するために力を使う」という利他の心でした。

故きを温ねて新しきを知ること(温故知新)が、AIと共存し調和的な社会を実現するためのカギなのかもしれません。

次回は、生成AIと連携した脅威から身(心)を守るための「情報リテラシー」を高める具体的方策について述べて参ります🍀

注:画像資料は、著作権フリー画像サイト「Pixabay(ピクサベイ)」から引用しました。