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タバコ禁止は余計なお世話か

2026年4月30日(木)のNACK5『Good Luck! Morning!』内「エコノモーニング」では、こんなお話をしました。

今日は「タバコ禁止は余計なお世話か」というお話です。

先日、イギリス議会で「タバコ・電子タバコ法」という思い切った法律が可決されました。2009年以降に生まれた人には生涯たばこを売らないというものです。イギリス政府はこれを「スモークフリー・ジェネレーション(タバコを吸わない世代)」の創出と呼んでいます。

現在、イギリス全体では、タバコ関連の疾患で年間およそ8万人が死亡しています。地域によって喫煙率に3倍以上の開きがあり、イギリス保健省は喫煙を「健康格差を生む最大の要因」と呼んでいます。また経済損失は年間200億ポンド、日本円で4兆円を超えます。医療が国営で、税金で医療費を賄うイギリスにとって、喫煙は社会全体のコストです。つまりこの法律は、個人の健康を守るとともに、政府の財政を守ることを目指しています。

同じように世代でたばこを線引きする法律はすでに他の国にもあります。ニュージーランドでは2022年に成立し、2024年に廃止されました。モルディブでは2025年から導入済みです。

次に、日本の状況を確認してみます。男性の喫煙率はピークだった1966年には8割を超えていましたが、直近の調査では2割程度まで下がっています。一方、女性は長年1割前後で横ばいでしたが、直近では7%くらいまで下がっています。ただ、40〜50代男性の喫煙率はまだ3割を超えています。喫煙者のうち4人に1人はやめたいと思いながらやめられていません。依存性のある習慣は意志だけでは断ち切れず、周囲のサポートや生活環境にも左右されます。一方、喫煙者が減り続けているにもかかわらず、日本のたばこ市場は縮小どころか今後も成長が続くと予測されています。加熱式たばこへの移行で単価が上がり、産業は『量から質へ』転換しているからです。

さて、日本の規制はというと、イギリスのような直接禁止ではなく「値段を上げて実質的に手を出しにくくする」という方法です。2026年4月から、防衛力強化の財源確保を名目に、たばこ税がまた引き上げられました。銘柄によって1箱20円から50円の値上げです。これは「悪行税」、英語でsin taxと呼ばれる手法です。たばこやアルコールのような「社会的に好ましくない行動」に高い税をかけて、消費を抑制するものです。しかし値上げの負担は所得が低い人ほど重く感じます。やめたくてもやめられない方にとっては、生活が苦しくなるだけです。経済学でいう逆進性と呼ばれる問題です。

また、ここで問いたいのが、パターナリズムという問題です。子どもに「それは体に悪いからダメ」と言う親のように、「あなた自身のためになるから」という名目で国家が個人の行動にあれこれ介入してくるということです(これ、私の卒論のテーマだったんです)。たばこの場合は、健康被害が科学的に明確で、受動喫煙という他者への害もある。規制の根拠は強い。それでも「あなたの世代は一生買えません」と国が決めるというのは、かなり踏み込んだ話です。

パターナリズムの問いは、たばこだけにとどまりません。砂糖やアルコールへの課税、食品の成分規制など、「あなたの健康のため」という名目での介入は広がる一方です。ただ、国民の健康を守ることは政府の責務だといいつつ、財政負担の軽減という動機も混ざっているとしたら、「社会のため」が「あなたのため」という言葉で包まれているだけかもしれない。個人の嗜好の世界に、政府はどこまで入り込んでよいのでしょうか。

この問いは、先日お話しした子供に対するSNS規制にも重なります。子どもを守るという動機はたばこと同じです。ただSNSの害の証拠はたばこより弱く、まだ議論の途中です。そして気になるのは、規制を強く推進しているのが、どちらかというと生活に余裕のある層だという点です。たばこのときも、リスク情報にいち早く反応して行動を変えたのは恵まれた環境にいる人たちでした。SNSが大事な居場所になっている人、そこでしかつながれない人たちは、規制によって守られるのか、それとも締め出されるのか。

禁止するにしろ、税金をかけるにしろ、それとも教育をするにしろ、国家が「あなたのため」と言って個人の選択に踏み込むとき、私たちはそれを受け入れるのか、どこに線を引くのか。これは私たちが、どんな社会に生きたいかという問いでもあります。今回のイギリスの法律、皆さんは「英断」と見ますか?「余計なお世話」と見ますか?それとももっと別のやり方があると思いますか?

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