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わたしの宝物

今、この瞬間地球が滅びたとしても
わたしは喜んで消えるよ。

本気でそう思いながら生きていた。
何も失うものはないと思いながら
毎日を過ごしていたわたしは
ある意味無敵で、
本当にめちゃくちゃだった。

抜け殻だったからか、
忘れたい記憶だからか、
あまり高校生時代が思い出せない。

でも、ひとつだけ、
わたしの大切な思い出がある。

学校に行く日も減り、
いよいよ出席日数が危なかった。
そんな高校3年生になったころ、
ひとつの光がさした。

「放課後でもいいから来よう!」

担任の先生が提案してきた。
放課後?何をしに?と思いながらも
あまりの熱意に負けて行ってみた。

「よっしゃ!えらい!よく来た!」
「ありがとう!顔見れてよかった!」

──意味不明。何がありがとう?

とにかく放課後だけでいいから
毎日来てほしいと言われて、
どうせそのうち説教するんやろ?
その時に辞めよう。
そう思いながら、毎日放課後に通った。
そのたび、先生は
「ありがとう!」「えらい!」
と言い、怒ることは一度もなかった。

教室に行くと、
「みきゅいが来たー!おそーい!」
とクラスのみんなが迎えてくる。

そんなことを1ヶ月ほど続けた。

「次は5時間目から来よう」
と言われたけれど、行かなかった。
それでも誰も怒らない。
そのことに、なぜか無性に苛立った。
見透かしたように先生は言った。

「わたしはあなたを見捨てません」
「あんたは、よく頑張ってる」
「あんたは必ず朝から来れるようになる」 
「みんなで頑張ろう」

よくわからなかったけれど、
この人を裏切ってはいけないと
それだけは感じていた。

暖かい。そして胸が痛かった。

「なんか、しんどいわ」

ポツリと漏らした日。

「みんなみたいになれへんし、
 わたしばっかりやん」

すごく久しぶりに
感情が溢れて涙が止まらない。
人前で泣くなんて
ありえないと思ってたのに。

「いろんなことあるけどな、大丈夫や」

と、そっと肩に手を置いて
背中をさすってくれた。

だから、よけいに涙が溢れた。

───先生、
あの時、わたしの全部を
話せばよかったのかな。
でもわたしには、そんな勇気もなかった。
「みんなを頼りなさい」
「ひとりじゃない」
と、いつも言ってくれたけれど
優しいみんなや先生に
こんな話、できなかった。

わたしにとって
先生が、産まれて初めて
愛情を感じた大人だった。

先生みたいな人間になりたいって
今もずっと思ってる。

先生に出会えたことは
わたしには奇跡で宝物だよ。


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