サンタさんのミス
困った。
まだ娘たちがサンタさんへの手紙を書かない。
これじゃ、何が欲しいか分からないじゃないの。
いつもギリギリでサンタさんを困らせているのに。

シオツマ家の子どもたちはクリスマスが近づくと、小さなクローゼット台の上に欲しい物を書いた手紙を置いておく。イヴの夜には焼いたクッキーとミルクも用意。
すると、クリスマスの朝には枕元にプレゼントがある。
台には、少し飲み残したミルクと、かじられたクッキーが残されて。

パパはひとり焦る。
街はクリスマスイルミネーションに彩られて久しい。
早くしなきゃ。
つっついてみた。
「ね、サンタさんへの手紙、そろそろ書かないの?」
中2の娘は、スマホをいじりながら、
「まだだいじょうぶだよ。10日以上あるし。」
何を知ってか知らずか、余裕をかます。
10日って、その基準どう算出したの?
小6の娘は、受験で忙しく、
「まだ大丈夫だよ。前の日でも。」
前の日は危険すぎます。
「サンタさん、何も用意できないかもよ。」
「なんでパパに言わなきゃならないの?」
「いや、あの…。」
あのね。サンタさん、大変なんだよ。
サンタさんだって人間…、いや、万能な妖精みたいな人だけど、負担かけちゃいけないでしょ。なにせ年に一度の繁忙期なんだから。
ちょっぴり小さなミスもあったじゃん。
シンデレラのドレスの時は、
人気すぎて、サンタさんが北極中を駆けずり回って探したけど品切れ。
手紙に同封した写真とちょっと形が違った。
それなんか、まだいい方だ。
すでに新刊が発売されていないマンガの時は、
「もう売ってないから、サンタさん困るよ。」と言っても、
「大丈夫だよ。小人さんが作るから。」と娘は涼しい顔して、ギリ発注。
届いたマンガを喜んで読んでいた娘が、
「なにコレ?挟まってたよ」と小さな紙片を見せた。
見ると、
B●●K●FFの書籍整理用レシートぉぉぉぉぉぉ!!!???
うううううううう…。
「…小人さん、洒落のきいたユーモアだね。」
手のひらサイズの小さなラジコンヘリの時は、
朝開けると、謎のおかしな日本語の説明書が。ヤな予感…。
うんともすんとも飛びやしない。
クリスマスの最高の喜びから、失意のどん底へ。娘の悲しそうな顔。サンタがミス!?そんなことはあってはならない。
一念発起、ボクも初めてサンタさんに手紙を書いた。
「壊れているので、もう一度新しいのをお願いできませんか?」と。
大人からのお願い事なので失礼があってはいけない。
フィンランド語は分からないので、英語でもいいだろう。エンピツなめなめ、辞書で調べ調べ、間違いだらけの英語だけど、長文のお礼とお詫びとお願いを書いて娘とクローゼットに置いた。リアリティが重要。(なんの?)
すると次の朝、娘の枕元に無事届いた。「ごめんね。楽しんでね」という直筆の手紙とともに。
少しお高めに変わったヘリが部屋をブンブン飛び回って、ほっと一息。

なんで、パパが焦るかって?
ボクたちパパやママは皆、極東支部のボランティアスタッフとして、ちょっぴりお手伝いしてる。子どもが生まれた日に希望者は出生届とともにアサインされるんだ。
数百年前と比べたら、子どもたちの人数も爆発的に増加した。サンタさんの負担はハンパないから、みんな世界中の人が協力して、サンタさんを陰ながらサポートしている。
最近は、NORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)がレーダーで追跡しているそうだ。ジャングルみたいな名前の配送業者もサンタを手伝っているという噂だ。

公式サイト「ノーラッド・トラックス・サンタ」
ボクが子どもの頃に尊敬していた人は「サンタクロース」だった。サンタの絵を描いて、勉強机に飾っていた。
クリスマスの朝、寝ぼけ眼に映る赤と金の鮮やかな箱、包みの独特な乾いた紙の匂い。今でもあの興奮が忘れられない。
だからボクはボランティアとして志願した。任務はひとつ。
毎年一生懸命、娘たちのお尻を叩いて手紙を書かせる。
時々「パパ、勝手に読まないでよ」とけん制されても。素敵な攻防戦。サンタさんにミスさせちゃいけない。お望みのプレゼントで喜ばせたい。その一念で。
娘たちと奥さんへサンタさんが何をプレゼントしてくれたか、中身は把握しているけど、皆が包みを開けて笑顔になるのを眺めるのは素敵な時間だ。
いつまでこの幸せなボランティアが続くのかな。
ちなみにひとつだけ不思議なことがある。
なぜか毎年、ボクの枕元にもプレゼントがある。
Dear Mr. Santa Claus
サンタさん、去年はアバクロのシャツをありがとう。
それから、ごめんなさい。
今年もお手紙、ギリギリかも。
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