侮辱64
絵を描いていると何もかもを忘れることができることもあるけれども
いくら絵を描いても、消えない感情があった。
それは怒りだ。
自分への怒り、他人への怒り、社会への怒り、ありとあらゆるものへの怒りだ。
僕から消え去ることのない感情が僕を生かしているのかもしれない。
時尾が僕に共感してくれるかはわからないが、また時尾に会い、時尾に会うことによって僕が次第に僕らしくなったきた感覚になったことを報告し、鹿の骨の絵を描き終わって、その骨に用がなくなったので、彼に渡した。
彼は最初喜んでいたが、それから彼に何かが起こることを彼は知らなかった。
時尾にあったのは、平和島という場所で、そこではボートレースという賭博場があり、平和島といえば、ボートレースと、代名詞になるくらいの街だ。
なあ、やったことないからやってみないか?ああ、いいぜ。
お金を賭ける、ボートが走る、結果が出る。
お金を賭ける、ボートが走る、結果が出る。
お金を賭ける、ボートが走る、結果が出る。
その結果が出るまでに人々は発狂し、その場限りで消化する感情がそこにあった。
発狂している人間を片目に時尾と僕は目を合わせる。
ニヤリ。
お互いに人の発狂する表情を見て、平和島の主かのようにほくそ笑んだ。
それは、あの地下格闘技場での父親と同じ顔だったと思う。
血は抗えない。
僕の中の父親の遺伝子が、無意識下で踊っていた。
僕らはまずは数試合様子を見てからお金を賭けた。
結果は負け。
勝っていたら運命が変わっていたかもしれない。
そんなことは考えても仕方ないけれども、何かときめきを求めている自分がいる。
平和島を後にして、目についたバーに入った。
店主が「何かをしている人なのかい?」と問う
あ、絵を描いていて、所謂絵描き仲間ってやつで平和島で遊んだ後にたまたま目についてお邪魔しています。
おお、じゃあ、絵を見せてよ
携帯を店主に順々に見せる。
おおいいね、時尾に向かって告げる
ああ、こりゃあ、下手だね、僕に向かって告げる。
あのね、これをこうしたり、ああしたりすれば伸びるよ。
あ、ありがとうざいます。
礼を伝えた顔が引き攣る。
よかったらここで展示でもするかい?
はい!
やらせてください!
展示の注意点を伺い、その店を後にする。
よし、やろう!やったろうぜ!
時尾と僕は目標を見つけ、意気揚々。
帰宅すると、どんな絵を描こうか模索する。
何かが、引っかかる。
何かが、引っかかる。
絵は上手いのが正義なのか?
絵は誰かのために描くものなのか?
沸々と湧いてくる感情があった。
そうだ。
これが僕の生きる道だ。
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