うそをはく(288)躍らない仕方
ずっと眠いの日だった。
ずっと眠いは、いつもは地を這って目立たずに生きていて殆ど誰にも気づかれることすら無く過ごしている。
けれども、この日に限っては、主役に躍り出て人々の目に触れる。厳密に書くならば、"踊り出る" のほうがいいかもしれない。
1年間、地を這いながらも、実は踊りの振りを練習している。もちろん、主役として踊るときには這わずに起き上がって踊るのだけれど、這って動いているときにも、手脚や首の振りを確認していたり、胴体も前後の動き以外は極力少しずつ練習するようにしている。
そして、みんなが寝静まったころ、ずっと眠いは誰の目にも耳にも届かない山中のだだっ広い平地に行って、爆音の音楽で30分だけ全力の通し練習をする。
そして、ずっと眠いの日には、音楽を流すことはなく、声と身体や地面を叩く音だけが鳴り響く中、ずっと眠いの独りケチャに多くの民衆の視線が釘付けになるのだ。
日々、何が溜まっていて何をきっかけに吹き出すかなんて、本当の本当は分からないもんな。
