《新規事業のすすめ》:秋田地方創生プロジェクトのエフェクチュエーション実践+「もし当時、生成AIがあったら」
エフェクチュエーションは、優れた起業家に共通する行動原則です。「手中の鳥の原則」は今あるリソースから始めること、「許容可能な損失の原則」は小さく試すこと、「クレイジーキルトの原則」は多様なパートナーシップ構築、「レモネードの原則」は予想外の事態をチャンスに変えること、「飛行機の中のパイロットの原則」は予測ではなくコントロールで未来を創ることを意味します。これは目標から逆算するコーゼーション(従来型経営)とは対照的で、不確実性の高い状況で有効です。詳細はこちらのNOTE記事をご覧ください。
秋田発・地方創成の事例
事例の概要
2017年6月に設立された一般社団法人創生する未来は、代表の伊嶋謙二氏のもと、地域で活動する企業や団体を支援する組織です。転機となったのが、2019年5月に秋田市で設立された東北ITbookです。秋田県は人口減少率が12年連続で全国最高という深刻な課題を抱え、人材は首都圏に流出し、県内中小企業はICT導入が遅れていました。創生する未来は秋田県、秋田市と連携し、東北ITbookの設立を支援しました。秋田駅直結の好立地に事務所を構え、県と市が3年間賃料の70%を補助する異例の支援体制が敷かれました。[1][2]
エフェクチュエーションの原則との関係
手中の鳥の原則では、伊嶋氏は矢野経済研究所やノークリサーチでの経験を活用し、テニスやイベント企画で仲間を集めました。許容可能な損失の原則では、ローコストオペレーションを徹底し、大きな投資は避け段階的に進めました。[3]
クレイジーキルトの原則は、人間関係構築に表れています。創生する未来の監事で東北ITbookの社外取締役を務める播磨崇氏は、富士通の常務や富士通エフサスの社長を務めたIT業界の名士です。秋田県デジタルイノベーション戦略室長の羽川彦禄氏は、偶然にも播磨氏の富士通時代の部下でした。仙北市長の門脇光浩氏とはIoT推進ラボで出会い、あきた芸術村の山川龍巳氏とも関係を構築しました。多方向に繋がる人間関係が、東北ITbookと秋田RPA協会の設立へと結実しました。[4][3]
レモネードの原則では、「田舎」というマイナスイメージを逆手に取りました。伊嶋氏は秋田県仙北市のあきた芸術村に拠点「Semboku Complex」を設立し、ワーケーション事業を展開しました。NECやアステリアがトライアルを実施しています。飛行機の中のパイロットの原則では、パートナーを変えながらイベントを興し、軌道修正しながら進みました。[3]
《空想》もし当時、生成AIがあったら?
リソース発見と提案力の強化
伊嶋氏が自身のリソースを棚卸しする際、生成AIに「私の経歴と人脈から、秋田の地方創生でどんなビジネスアイデアが考えられるか」と問いかけることで、気づかなかった組み合わせを発見できた可能性があります。また、パートナー候補への提案書作成では、播磨氏、羽川氏、門脇市長といった多様なステークホルダーに、それぞれの立場に応じた提案文書を効率的に作成できます。レポート作成時間が半減し、情報収集が最大90%短縮されるという調査結果もあり、多くのパートナーとの関係構築を並行して進められたはずです。[5]
偶発的事象の転換と観光データ活用
予期しない市場反応に直面した際、生成AIで新しい視点を引き出せます。ワーケーション事業でも、「田舎」を「集中できる環境」に転換する際、生成AIに複数の切り口を提示させることで、魅力的なコンセプトを構築できたでしょう。仙北市でのワーケーション事業では、JTBの「地域共創基盤®AIレポーター」のような生成AIツールで、域内周遊ルート分析や来訪者のペルソナ像レポートが自動化されます。秋田の観光資源とワーケーションの親和性を定量的に示し、企業誘致の提案資料として活用できたはずです。
人間が果たすべき役割
生成AIの活用可能性は大きいものの、エフェクチュエーションの本質は人間にしか担えません。信頼関係の構築は人間の役割です。AIは提案書を支援できますが、相手の目を見て語り、信頼を勝ち取るのは人間です。価値判断と戦略の舵取りも人間の領域です。「田舎」を「強み」に転換する発想を見出すのは、人間の創造性です。[3]
偶発性への対応も人間の柔軟性によるものです。羽川氏が偶然にも播磨氏の元部下だったという偶然性をチャンスに変え、複数の人脈を有機的につなげるのは人間にしかできません。地域への想いとビジョンの共有も重要です。伊嶋氏の「地域から日本の未来の創生を目指す」という理念や、秋田を「課題先進県」として実証フィールドと捉える視点は、人間の情熱から生まれます。生成AIは効率化のツールですが、人々を動かし、共感を生むのは人間の熱意です。[3]
まとめ
創生する未来と東北ITbookの事例は、エフェクチュエーションの5つの原則が地方創生でいかに機能するかを示しています。伊嶋氏は手中の鳥、許容可能な損失、クレイジーキルト、レモネード、飛行機の中のパイロットという原則を実践し、秋田に新しい可能性を切り拓きました。もし当時、生成AIが利用可能であれば、リソース発見、提案書作成、観光データ分析など多くの場面で活躍したはずです。しかし、信頼関係の構築、価値判断、偶発性への対応、ビジョンの共有といった人間にしかできない役割は変わりません。生成AIは強力な支援ツールですが、エフェクチュエーションの本質である「人と人との関係性を通じて未来を創る」ことは、人間の情熱と洞察力によってこそ実現されるのです。[5][3]
参考文献
[1] https://souseimirai.jp/corporation/
[2] https://souseimirai.jp/20190610_-community_support/
[3] https://wirelesswire.jp/2020/01/73763/
[4] https://www.weeklybcn.com/journal/keyperson/detail/20120830_38754.html
[5] https://kuraberuai.fioriera.co.jp/useful-content/generative-ai-proposal/
