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球場に響くエール。

高校の夏。
炎天下の中、友達にエールを送り続けた。
友達は四番を任されていた。

高校野球は
ドラマを生む。

テレビで放映され、
吹奏楽部の演奏が響き、
チアリーダーが舞い、
たくさんの声援が球場を包む。

テニスを続けた自分にとって
その光景は少し羨ましくもあった。

硬式テニスでの応援は
拍手程度しか認められていないからだ。

打者一人ひとりには、
それぞれ登場曲がある。

ルパン三世。
宇宙戦艦ヤマト。
夏祭り。

甲子園常連の四番には
「You are スラッガー」という名曲もある。
「ジョックロック」もよく聴く。

曲が流れた瞬間、目の色が変わる。

打者本人だけではない。
ベンチも、スタンドも、一気に熱を帯びる。

相手チームからすれば、
それは絶望を運んでくる音楽なのかもしれない。

そして、夏の球場には魔物が付き物だ。
何が起きるかわからない。

友達が選んだ登場曲は
「必殺仕事人」だった。

トランペットが主役。
力強い旋律。

「あいつなら、やってくれる!!」
そう心から思わせる迫力だった。

1回戦の相手は強豪校。
その年、優勝して甲子園出場した学校だった。

自分達の高校は、
部活の練習時間に制限が設けられている。

もしかしたら、試合前から
結果を知っている人もいたかもしれない。

それでも、選手たちは本気だった。
誰一人として負けることを考えていなかった。

もちろん、応援する自分達も同じ気持ちだ。
喉が潰れるまで声援を送り続けた。

その年、その強豪校は
次々とコールド勝ちを重ねていった。

けれど、1回戦だけは違った。

「手を抜いていたんでしょ。」
「下級生に経験させていたんでしょ。」

そう鼻で笑う人もいる。

でも、自分は思う。
あの接戦を現場で見ていないから、
あの選手たちの懸命な姿を見ていないから、
そんなことが言えるんだ。

あの場にいた誰もが、諦めていなかった。

四番であり、キャッチャーでもあった友達。
いつもふざけている友達。
笑い飛ばしている友達。

でも、打席に立つ姿はまるで別人だった。

本気で挑み、本気で走り、本気で投げる。
その責任を最後まで背負い続けていた。

友達とバッテリーを組んだ投手は後輩。

最後にふたりは
握手を交わし、肩を組み、抱き合った。

本気の涙だった。
本気で過ごした人だけが流せる涙だった。

あの姿を、
自分は一生忘れないだろう。

そういえば、

もし、自分が打席に立つ日があるなら、
登場曲は何を選ぶだろう。

この夏、ゆっくり考えてみることにしよう。

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