タイトル未定が紡ぐ“ささやかな日常” の尊さ-新曲「泡沫」レビュー
先日HBCラジオ「タイトル未定の金曜の予定は未定!」で初フルコーラスオンエアされたタイトル未定の新曲「泡沫(うたかた)」。
グループ初のドラマタイアップ曲ということで「ワカコ酒 season9」のテーマソングとして起用された今作は、ドラマにちなみお酒を連想させるようなフレーズも歌詞に使われている優しいバラードだ。
今回はそんな新曲「泡沫」についてのレビュー記事を書いていこうと思う。
消えてしまう日々を宝物のように
楽曲はピアノの高音とアコースティックギターが可愛らしく響くイントロから始まる。
帰り道の改札口はどこか優しく見えて
賑わう街ですれ違う顔 ぼんやりと眺めてた
仕事や学校、それとも休日の外出帰りだろうか。冒頭では張りつめていた気持ちや緊張がふと和らぐような1日の終わりが切り取られている。
見知らぬ「すれ違う顔」にもそれぞれの暮らしや幸せがあること、それぞれの悩みがあること。
全体を通して、特別ではなくとも愛しい毎日を大切にしていこう、という前向きなテーマが描かれるが、その裏に「取り戻すことの出来ないひとときの儚さ」が透けて見える。
また会えるかな? 会えないかもな
「また会おう」という内容のフレーズは他にもあれど「会えないかもな」まで包み隠さず届けられる歌詞が胸を打つ。
そう、会えないかもしれないのだ。
家族、友人、恋人、推し…当たり前にある日常が続くことも、またいつかの約束が果たされることも、保証はどこにもない。
大切に噛み締めないと「泡のように消えてしまう」からこそぎゅっと抱きしめておかねばならないのだ。
温かさと切なさの入り混じるバラードは、タイトル未定の楽曲の中でも屈指の落涙ソングに育っていくのではないだろうか。ちなみに筆者の涙腺はバカになっているのでもうイントロで泣ける状態である。
鶏肉効果?谷乃愛さんのボーカルが光る
タイトル未定の歌割りはいつも適材適所だなと思うのだが、今作では落ちサビ前のCメロを担当している谷乃愛さんのパートに注目したい。
本人の目指すところが「王道アイドル」なだけあって基本的には可愛らしい歌い方で曲を彩るが「空」のソロパートのロングトーンや「溺れる」における「作り笑い貼り付けて」という腹からの歌唱など、ここぞという場面でしっかり決める印象がある。
「泡沫」では、大きな変化はないからこそ大切なものに気付ける日常を肯定し力強く歌い上げるパートを任されており、彼女の持つ素直さ、ひたむきさと相まって非常に聴きごたえのあるフレーズに仕上がっている。
余談だが、レコーディング前には喉を潤す為に油分を摂ると良いらしく、谷さんは鶏肉とビーフシチューを食べて今回のレコーディングに臨んだそう(ラジオにて本人談)。メンバーも絶賛のソロパートが完成した。
前作の「余白」に続き、サビ前と落ちサビを担当する冨樫さんの柔らかく透き通った歌声、多田さんの聴いているだけで心が安らぐような優しく心地よいボーカル。
こちらも「余白」に重なる部分があるが、不安や寂しさを歌う山下さんのいじらしさはいつも楽曲に欠かせないアクセントとして存在し、歌い出しとラストを固める阿部さんの心を震わせる歌唱も大切なパーツだ。
5人5様の表現が、タイトル未定の楽曲に命を吹き込んでいく。
楽曲が映し出すグループの形
グループが5人体制になったことで、声の重なりにもバリエーションが増え厚みが出たように思う。
「泡沫」は中でもコーラスやハモリの部分が多く存在し様々な表情を生み出していて、聴いていて飽きがこない。ハモリが重厚であればあるほど、ソロパートでは個性も引き立つという相乗効果が楽しめる。
また「余白」が過去を振り返り現在地を確認するような楽曲であるのに対し、「泡沫」は今目の前にあるこの瞬間を力一杯慈しみ、この先こんな自分でありたいと願いを込めるような心情が描かれている。
未来への希望や広がりを感じさせるコーラスやハモリの豊かさが、曲の持つ魅力をより鮮やかに私たちに届けてくれているように思う。
何でもない今を大切にし、なりたい自分へ進んでいくという楽曲のメッセージは、タイトル未定というグループそのものと美しく重なった。
おわりに
「ワカコ酒 season9」では今後タイトル未定のエキストラ出演も予定されている。
20歳以上の方はドラマと楽曲を併せて楽しみながら、今日というかけがえのない1日を労う杯を上げるのも良いだろう。
みんなで笑い合った日も、上手くいかなかった1人の日もまとめて抱きしめたくなるような「泡沫」という曲を、まずは1口味わってみてほしい。
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