🟡黄の章:砂漠の伝承 ― 古代の知恵を授けるもの 6

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ムヒのお勧めクリエイター
ゆき-Yuki-|夢はライトノベル作家✍️|さん
もし、神にも悪魔にもなれる力を持つ者がこの世界を支配したなら、あなたは生き延びられるだろうか。
この物語が描くのは、帝国と連邦、そして幾多の国を舞台にした群像劇。
第六章 砂漠の迷宮
古代の神殿内部は、その壁画に描かれた物語と共に、絶え間なく姿を変え続けていた。
レオンとホズミは、迷宮と化した通路を壁画の物語を頼りにゆっくりと、しかし確実に進んでいた。
壁画はこの砂漠に生きた古代の人々の歴史を、雄弁に物語っていた。
「この壁画は……
人々が、黄の竜巻を神として崇めていた時代ですね。
【太陽の瞳】がとても穏やかな表情をしています」
ホズミは、壁画に描かれた人々の幸福な生活の様子を目を輝かせながら見ていた。
そこには、砂漠の過酷さとは無縁の、豊かさと平和が描かれていた。
しかし壁画の物語は、次第に不穏な方向へと進んでいく。
人々が、神に祈りを捧げても、雨が降らなくなり、砂漠がより深く厳しくなっていく様子が描かれていた。
そして、壁画の太陽の瞳は、徐々に怒りに満ちた表情へと変わっていった。
「これは……神が人々に怒り始めた?
ということでしょうか」
ホズミの言葉に、レオンは複雑な表情で壁画を見つめていた。
「いや、違う。
これは……神が、人々の祈りをもう聴かなくなったということだ。
人々は神に頼るばかりで、自分たちの力で、この砂漠を生き抜くことを忘れてしまったのかもしれない……。
それが、ムヒの爺さんが言っていた、【黄の記憶】の真の始まりだ」
レオンの言葉にホズミは改めて、この壁画の持つ深い意味を理解した。
この迷宮はただの幻覚ではない。
それはこの地に生きた人々の確かな後悔と、悲しみが具現化したものなのだ。
迷宮の通路をさらに進んでいくと、壁画には、人々が神の怒りを鎮めるために、何かの儀式を行っている様子が描かれていた。
そして、その儀式の中心には一人の幼いヒョウモントカゲモドキが描かれていた。
その幼きヒョウモントカゲモドキは壁画の中で空を見上げていた。
彼の表情は、恐怖ではなくどこか神の怒りを理解しているかのような、諦めにも似た静かな表情だった。
「この幼きヒョウモントカゲモドキは……もしかして……」
ホズミはその壁画の幼きヒョウモントカゲモドキの姿に、どこかレオンの幼い頃の姿を重ね合わせていた。
その瞬間迷宮の空間が再び歪んだ。
レオンの目の前には、壁画の幼きヒョウモントカゲモドキがまるで生きているかのように具現化されていた。
「ここは……なんだ……?
母さん……父さん……どこにいるんだ?」
幻覚の幼きヒョウモントカゲモドキは、レオンに向かってそう問いかけた。
それは、レオンの幼い頃の声だった。
レオンはその幻覚に一瞬心を奪われた。
彼の心の中に、遠い過去の記憶が鮮やかに蘇ってきた。
幼いレオンは、兄弟たちが地面ばかり見て、獲物を探している中、一人、この砂漠の空を見上げていた。
そして、稀に北の空に現れる淡い光、オーロラに心を奪われていた。
『父さん。
この砂漠の向こうには何があるの?』
幼いレオンの問いに彼の父は、ただ厳しい表情で答えるだけだった。
『この砂漠こそがお前の全てだ。
余計なことを考えるな。
地面を見ろ。
獲物を見つけろ。
それが、この砂漠で生きる我々の掟だ』
しかし、幼いレオンはその言葉に従うことができなかった。
彼の心は、常に空の向こうにある未知の世界に、憧れを抱いていた。
その幻覚は、レオンの心の中にずっと抱えてきた、故郷の掟に背いたことへの後ろめたさを呼び起こそうとしていた。
「レオンさん!
大丈夫です!
これは幻覚です!
わたくしはここにいます!」
ホズミは、幻覚に心を奪われそうになっているレオンの腕を掴み力強く叫んだ。
ホズミの声にレオンは我に返った。
彼の瞳は、幻覚の幼き日の自分の姿を冷静に見つめていた。
「……黙れ。
俺はもうお前じゃない。
俺はこの砂漠の掟に背いた。
そして、そのおかげでこの旅に出ることができた。
俺は空の向こうに何があるのかを、この目で確かめてやる……!」
レオンはそう言って、幻覚の幼き日の自分に力強く言い放った。
彼の言葉は、彼が過去の自分を乗り越え新たな決意を胸にこの旅を続けていることを示していた。
幻覚の幼き日の彼は、レオンの言葉にゆっくりとしかし確実にその姿を消していった。
幻覚が消えた後、迷宮の壁画には物語の続きが描かれていた。
神の怒りが頂点に達し、黄の竜巻がこの地に姿を現した様子。
そして、人々が、その竜巻に飲み込まれていく様子が描かれていた。

「この竜巻は……ただの災厄ではなかった。
これは、神が人々に、最後の試練を与えたということだ。
神に頼るばかりで、自らの力で生きることを忘れた人々に、この砂漠の真の厳しさを、思い出させようとした……」
レオンは壁画の物語をそう解釈した。
そして、その解釈はムヒが彼に語った、この砂漠の厳しさと生き方の教訓と完全に一致していた。
「……ムヒの爺さんは、この壁画の物語をすべて知っていたんだ。
そして、俺たちをこの迷宮に導いたのは、この物語を俺たち自身の力で、解き明かさせようとした……」
レオンは、そう呟きながら、ホズミと共に迷宮の奥へと歩みを進めた。
そして、迷宮の最奥。
そこには、巨大な岩がまるで竜巻の中心に鎮座しているかのように存在していた。
その岩の表面には、【太陽の瞳】がまるで生きているかのように淡く輝いていた。
「あれが……黄の何か……?」
ホズミの言葉に、レオンはゆっくりとしかし確かな足取りでその岩へと近づいていった。
そして、レオンがその岩に手を触れた瞬間。
神殿全体が、まるで再び長い眠りから目覚めるかのように激しく震え始めた。
彼らは、ついにこの砂漠に眠る黄の記憶の核心と対峙することになったのだ。
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