22.私の日記【ヤツシロソウに未来を】
温かい空気の中、ほんの少しだけひやりとする風が入り混じる。
道に面した庭の木々は、あの太陽に向かって枝を伸ばした。
彼らはやがて、この道を進む人々を傷つけるだろう。
私はその腕を切り落とす。
植物は法則に従い、私は法律に従った。
鋸や剪定鋏は、梅雨に力を蓄えるもの達の未来を奪っていく。
日差しは暑く、私は流れ落ちる汗を拭う事もしない。
虫に怯えながら、道路と敷地に面した溝の中に潜り込む。
西の空はこんな時間でもまだ夕方に遠いけれど、それでも日陰に身体を隠せば、背中の汗はスーッと体温を奪った。
まだ赤い桑の実は熟する事叶わず、ここに小鳥が訪れる事も無くなるだろう。
でも、彼らは私よりも強いから、その切り株から何度でも芽を出すんだ。
生き物には役割があった。
花は蜜を作り、虫はそれを求めた。
そして花粉を運び、木は新しい種を作る。
伸びた葉は光合成を行って、全ての生物に恩恵を与えるだろう。
人は時折、人に罰を与える事を望むけれど、りんごは愛される事で果樹園を得たし、稲は必要とされたから水田を得た。
奪われるものと、残されるもの。
それぞれに役割があり、罪はなかった。
私は鋏を置いてしゃがみこむ。
あぜ道に咲いたヤツシロソウ。
君は美しいから生き残った。
