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後ろの席から声がする

「次のテスト、どこ出そう?」
 向けられた矢印に振り向く。意気消沈していた私に、その舌ピアスは真顔で笑った。

 真っ赤なマッシュヘアに、ピアスだらけの耳。マニッシュ男性風な軽音楽部のパンクロッカーはどこまでも自由で、ここの校風を体現している。

「この辺じゃない?」
 彼女は指差した先を見つめる。
「へー。どうやって解くの?」
「答えはこれ。解き方は、フィーリング」
「ふ、なにそれ」
「古いけど、同じ日本語だから」
 シャープペンを口元に当てる姿。しなやかだけど力がありそうな指。それより理解力に少し驚く。最初から答えを知っているかのような。

 次の週も同じことを繰り返した。すると、少し離れた席から同じ軽音楽部のツンツンヘア。白塗りにしたらKISSか聖飢魔IIか。前者の方が近い。
「俺には回答を見せてくれるだけでいいぞ」
「その距離じゃ見えんでしょ」
 舌ピアスがツッコミを入れ、ベースとギターの軽快な掛け合いセッションが始まる。

 矢印が向けられなくなったことをそっと確認する。心の中で小さく息を吐き、感謝ありがとうの言葉を呟いた。

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無銘の徒 きっといいことありますよ