AIは「鏡」でしかない。だから私は、NotebookLMで自分の「無知」を暴くことにした。
「AIなんて、結局はネット情報の継ぎ接ぎだろう」 自分の感性を信じて言葉を紡ぐクリエイターほど、そう思うのは当然です。実際、数年前までのAIは、私たちの「リアル」に対して驚くほど無力でした。
1978年の空気感を「物差し」にする
私はアプリを作る人間です。自分の得意分野という確固たる物差しを持っていれば、LLM(生成AI)の「現在の質」は容易に調べることができます。
3年前、当時のAI(Bard・Geminiのおとうさん)を試しました。お題は「1978年頃、新宿椿ハウスで遊んでいた奴ら」。
金曜の27時から始まるあの「定番」の流れ。そこにいたデザイナーの顔ぶれ。……結果は、見るに堪えないものでした。文化も、洋服も、空気感も、どれもズレまくり。「かっぱえびせんが、置いてあったとか、ネットに無いよね」
2026年コードなら誰でも「物差し」にできる
ChatGPTは、数回の会話により、どの地域で育った人、世代、性格を指示文の文脈から把握できています。「あなたが未成年者」とか。
自分の物差しが見つからない方、AIに懐疑の念を持たれた方、文系の方。簡単にAIを試すことができます。それは、「動くか・動かないか」の世界。プログラミングです。
同じことを「システム開発」でやっても、当時(Bard・Geminiのおとうさん)はまともに動くコードは部分的な回答に留まっていました。コードなら、下手でも構いません。欲しいアプリが「動く」なら、合格です。
絵が判る人なら、画像生成。音で見分ける人ならSuno AI。文系がコードを書いてみればいいのです。なんならGoogle Antigravityで推理小説を開発してみてください。すぐに判るから。
私は音楽も解る方ですが、こうした「自分に判定基準がある分野」を物差しにして、私はずっとLLMの現在地を計ってきました。
今や、彼らはDJの隠し味すら詳細に表現し、動くコードを書く。しかし、精度が上がれば上がるほど、ある問題が浮き彫りになります。
それは、プロンプトが完璧になればなるほど、AIはあなたの思想をブーストする方向にしか膨らまないという、より強固なエコーチェンバーの罠です。
「哲学ごっこ」の限界
最近の私の流行りは、Geminiを相手に遊んでもらう「哲学ごっこ」です。 思考の整理と一緒に、
自分の思考の「癖」を利用しながら、
逆説を引き出して遊ぶ。

やり方は簡単、Geminiに
「補完できますか?」「哲学モード・ON」
と指示するだけです。
それでも引き出せないときは、
「反対意見」を浴びせてもらえば、
大抵の意見はもらえます。
ただ、ここで気づきました。これでは無理がある。
LLMはどこまで行っても「鏡」です。
自分との壁打ちから得られる出力は、
結局、自分を映しているだけに過ぎない。
自分しか写らない鏡の前で遊んで
いるような虚しさが、
そこにはありました。

NotebookLM:鏡を割り、「無知の知」に至るための仕掛け
そんな私が今、このエコーチェンバーを突破するために使っているのがNotebookLMです。手順はこうです。
[Studio > メモ] に、脳内の雑多な断片を直接書き殴る。
それをAIに整理させるのではなく、そのまま「ソースに変換」する。
自分の生々しい言葉が、左側の「ソース」へと格納された瞬間、それは自分の一部ではなく、客観的な「資料」へと変質します。
そして、真骨頂はここからです。 NotebookLMの中にある「音声解説|議論」を立ち上げると、二人の話し手は、かつてのヒップホップ界における東西抗争さながらの熱量で、私の書いた内容を「ディスり」始めます。

彼らは耳障りの良い要約をする仲間ではありません。 「自分は客観的だ」と思っていた場所がいかに主観にまみれていたか。「これこそが真実だ」と信じていた視点がいかに片手落ちであったか。冷静な声で、こちらの論理の甘さを突いてくる。
結局、あの有名な哲学に辿り着くのです。
「無知の知」。
自分がいかに分かっていないかを、
自分以上に精緻なロジックで突きつけられる体験。

自分の限界を、外側から眺める
AIを自分の能力を補完する「道具」として使う段階は、もう終わりました。 今は、「自分という人間の偏りを暴き、無知を自覚させてくれる強烈な他者」として、AIを配置する。
「文」での表現に限界を感じているなら、一度NotebookLMに自分の断片を放り込んで、二人の議論に耳を傾けてみてください。
鏡の中にいた自分を、初めて外側から眺めるような、恐ろしくも爽快な体験が待っているはずです。
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