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ルーヴルにいる人

22歳の秋、思いつきでひとりフランスのパリに行った。
パリといえば、芸術の街。ゴッホやモネ、フェルメール、ピカソなど名だたる画家の作品が集結している。中でも、ルーヴル美術館におさめられているレオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』は、知らないという人を見つける方が困難だろう。
私は教科書やテレビで何度も見た名画を実際にこの目に焼き付けるべく、ルーヴル美術館へ向かった。
館内は多くの観光客で賑わっており、日本の美術館では考えられない、テーマパークに来たような感覚に陥った。そんな館内で一室だけ、異常なほど人で溢れかえっている部屋があった。私は確信した。そこにモナリザがいる。私はまっすぐその部屋へ向かった。だだっ広い部屋の横幅いっぱいに並んだ観光客が、スマホを構えながらジリジリと前へ進んでいく。30分ほど経ち、ようやく目の前にあのモナリザが現れた。目の前と言っても、ベルトパーテーションからはかなりの距離があった。分厚い板ガラスで護られているモナリザ。そのガラスに映ったのは、護られている女性の絵画を羨ましそうに、妬ましそうに見つめる私だった。咄嗟に目を逸らし、誰に見せるわけでもない写真を一枚撮り、足早にその場を去った。

私が30分並んで見たものは、自分だった。
ゾッとした。誰かに愛されている人を見るときもあんな顔をしているのだろうか、と。
人生でいちばん好きだと思えた人と結ばれなかった。
仕事仕事の毎日。
家に帰ってもひとりきりの孤独感。
だから私は、ひとりで海外へ行ったのかもしれない。
行き先なんてどこでもよかったのかもしれない。
「私はひとりでも大丈夫。」それを証明したかった。
好きな人や、恋人のいる友人、家族に。自分に。
同情なんてされたくない。
ひとりでも強く生きられる。
私は可哀想じゃない。
そう、自分に言い聞かせるための旅だったのかもしれない。

証明されませんように、と心の奥底で願いながら。

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