創作1 |法哲学の学生が「愛」を契約書で管理しようとして失敗した話
はじめまして。京都で大学生をしている、むら かおる と申します。
普段は大学で法哲学という、少し堅苦しい学問を専攻しています。 AIやロボットが社会に浸透していく中で、「人間」や「法律」はどうあるべきか? そんな正解のない問いと向き合うのが、僕の日常です。
法哲学の世界は、論理と理屈で構築された美しいシステムです。 でも、そのシステムという網の目から、どうしてもこぼれ落ちてしまうものがあります。 それは人の感情だったり、割り切れない痛みだったり、肌の熱さだったりします。
そんな「論理では救えないもの」を記述したくて、一編の小説を書きました。 タイトルは『性愛のリーガル・デザイン』。 昨日、Amazon Kindleで出版しました。
なぜ、「恋愛」に「契約書」なのか?
この物語の主人公は、法学部の大学院生です。 彼は、恋愛における不確実性——「フラれるかもしれない」「浮気されるかもしれない」「傷つくかもしれない」というリスクを極度に恐れています。
だから彼は、恋人に一通の契約書を提示します。
『交際におけるリスク分配と合意形成に関する覚書』
デート費用の負担割合から、性行為における同意のプロセス、喧嘩をした際の冷却期間(クーリングオフ)まで。 すべてを条文で定義し、リスクを管理し、AIに監視させる。 そうすれば、僕たちは傷つかずに愛し合えるはずだ、と。
これは、法学部生である僕自身の、ある種の思考実験でもありました。 もし、感情というカオスを、法というロゴスで完全に制御できたら、人は幸せになれるのだろうか?
システムからこぼれ落ちた「バグ」
結論から言うと、主人公の計画は失敗します。 それも、とても滑稽で、人間臭い形で。
完璧な契約書を作ったはずなのに、彼の身体が言うことを聞かなくなるのです。 嫉妬や独占欲、あるいは相手の匂いや体温といった、条文には書かれていない生身の感覚が、彼を襲います。
頭では合意形成済みだから大丈夫と分かっているのに、心が、体が、拒絶反応を起こす。 その時、彼は初めて、自分が相手を管理しようとしていた傲慢さに気づきます。
正解のない問いの先に
この小説は、ある意味で法学の敗北の記録です。 でも同時に、法や言葉では縛れないからこそ、人間は愛おしいのだという再生の物語でもあります。
普段の研究生活では、論理の積み木を崩さないように慎重に言葉を選びますが、この小説では、その積み木をあえてガラガラと崩してみました。 その瓦礫の中に、何か大切なものが光っていればいいなと思いながら。
論理的すぎて生きづらいと感じている方
「コスパ」「タイパ」重視の恋愛観に、少し疲れを感じている方
京都の冬の空気感が好きな方
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僕の思考の実験室から生まれた、ひとつの「バグ」のような物語。 もしよろしければ、覗いてみてください。
