【ショートショート】金持ち鬼【#爪毛の挑戦状】
「いーち、にー」
男の子が背中を向けて数を数える。
その隙に他の子供たちは我先にと公園の中を逃げていく。
どうやら鬼ごっこをしているようだ。
「きゅー、じゅう!」
10まで数えると男の子は振り返りあたりを見渡す。
逃げた子供たちはそれぞれ思い思いの遊具に手を当てている。
おや、「色鬼」や「氷り鬼」だったかな?
しかしそんなふうにも見えないが。
「すべり台が一番高いよ!」
もしや「高鬼」?
いや、子供たちはみんな地べたにいる。
「ジャングルジムが一番高いよ!こんなに溶接してるんだもん!」
溶接?
「ブランコだよ!ブランコは定期的に点検や整備が必要だから維持費用が高いんだ!」
点検?維持費用?
子供らしからぬ言葉に困惑したが、やっと理解した。
彼らがやっているのは近くの高価なものに触ることで鬼を回避できる……「金持ち鬼」とでも呼ぶべき遊びの様だ。
そういうことなら、と俺は財布から一万円札を10枚ほど出し、
「ああ!今日は暑いな!」
子どもたちに聞こえるように言って仰いで見せた。
もちろん一万円札の扇で、だ。
しかし、子どもたちは俺の方を見て言った。
「あのおじさんの方が高いかな?」
「それはないでしょ」
「ジャングルジムなんて百億万円するんだもん」
✒あとがき
読んで下さってありがとうございました!
爪毛さんのこちらのつぶやきからネタを拝借しました。笑
・「色鬼」⇒鬼が指定した色にタッチしてると鬼に捕まってもセーフとなる鬼ごっこ。
・「氷り鬼」⇒凍った様にピタリと止まっていると鬼に捕まってもセーフとなる鬼ごっこ。
・「高鬼」⇒高いところに登って地面から両足が離れていれば鬼に捕まってもセーフとなる鬼ごっこ。
これ全部僕の地元にはあったルールなんですが皆さんのところにもありました?
こうやって見ると鬼ってめちゃくちゃ寛大ですよね。
