【自民党総裁選2025】高市・小泉氏のインフレ対策が逆効果? 私たちの生活を脅かす“円安ジレンマ”の不都合な真実
毎月のお給料は簡単には増えないのに、電気代や食料品など、生活に欠かせないモノの値段ばかりが上がっていく…。
こうした日々の生活で感じるストレスや将来への不安は、決して私だけのものではないはずです。
そんな中、テレビやネットでは自民党の次期総裁選のニュースが盛んに報じられています。最新の世論調査では高市早苗氏と小泉進次郎氏がトップを争い、候補者たちは、この苦しい状況を乗り切るための対策として「消費税の減税」や「現金の給付」といった、私たちにとって魅力的に聞こえる政策を掲げています。

例えば、高市氏は保守層向けの経済再生を、小泉氏は改革イメージでインフレ対策を強調しています。しかし、こうしたやり方で本当に効果があるのでしょうか。
消費税を減税する、あるいは所得の低い方々へ現金を給付するといった話は、一見すると私たちの家計にとってプラスに思えます。
しかし、これらの政策は本当に私たちの生活を救う「特効薬」になるのでしょうか。
こんにちは。村田雅志です。
夏の参院選でもそうでしたが、最近、消費税減税や現金給付といった耳触りの良い政策が散見されるように感じています。ただ、こうした耳障りの良い政策は、実はかえって私たちの首を絞めることになりかねない、と思っています。厳しい現実です。
良かれと思って打ち出される政策が、なぜかえって私たちの生活を苦しくしてしまうリスクがあるのか、その背景にある経済の仕組みを、できるだけ分かりやすく解説してみたいと思います。
政策の「目的」を見極めることがスタート地点
まず大切なのは、いま議論されている消費税減税や現金給付が、どういう「目的」の政策なのかを理解することです。
実はこれらの政策は、日本経済を力強く成長させるための「成長戦略」ではありません。
むしろ、これらの政策は、急激な物価上昇によってダメージを受けた家計を一時的に助けるための「生活支援策」の性格です。社会福祉に近い考え方、と言うとイメージしやすいかもしれません。
もちろん、生活に困っている方を支える政策は重要です。しかし、それが今の日本経済が抱える根本的な問題の解決につながるかというと、話は別です。
なぜ「良かれ」と思った政策が裏目に出るのか?
ここが最も重要なポイントです。
結論から言うと、今の日本経済の状態でやみくもに需要(モノやサービスを買いたい、という力)を増やす政策を行うと、かえって物価上昇(インフレ)を悪化させてしまう可能性が高いのです。
最近のガソリン代や電気代の値上がりで考えてみると、もっと分かりやすいかもしれません。
皆さんもご存知の通り、ガソリンや電気の価格が上がったのは、海外の紛争などをきっかけに、日本が輸入に頼る原油や天然ガスの供給が不安定になったことが大きな原因です。つまり、モノやサービスを生み出す大元(供給)に問題が発生したわけです。
政府は私たちの負担を減らすため、補助金を出してガソリン代や電気代の一部を肩代わりしてくれました。これは家計にとって、一時的にとても助かる措置でした。
しかし、ここで少し立ち止まって考えてみましょう。
この補助金は、エネルギーの供給量そのものを増やしたわけではありません。あくまで、高くなった料金を支払うのを助けてくれただけです。
日本全体としてエネルギーを欲しがる力(需要)は強いままなので、根本的な価格高騰は収まりません。
むしろ、補助金によって国民全体の痛みが見えにくくなり、省エネへの意識が薄れることで、かえって問題を長引かせる一因にすらなり得ます。
このように、供給力に問題がある時に需要だけを刺激する政策は、一時的な痛みを和らげる効果はあっても、根本解決にはならず、かえってインフレを長引かせるのです。
お店に商品が100個しか入荷しない(供給力不足)のに、120人がそれを欲しがったら(需要過多)、値段が上がるのは自然なことです。今の日本経済は、これと似た状況にあるのです。

専門的な言葉で言えば、今の日本は人手不足や設備投資の低迷で「供給力(モノやサービスを生み出す力)」そのものが伸び悩んでいます。国全体の経済の基礎体力を示す「潜在成長率」は0%台と低迷しています。まさに「商品をたくさん作れない状態」なのです。
物価高の根本原因、円安を止められない日銀の「ジレンマ」
今の物価高の大きな原因の一つが、記録的な「円安」であることは、多くの方がニュースなどで耳にしている通りです。輸入品の値段が軒並み上がっているのは、この円安が大きく影響しています。
では、どうすればこの円安を止められるのでしょうか。
最も直接的な方法は、日本銀行が金利を上げ、海外、特にアメリカとの金利差を縮めることです。金利の低い「円」を売って、金利の高い「ドル」を買うという、現在の円安の大きな流れを弱める必要があるからです。
しかし、日本銀行は利上げに対して、極めて慎重な姿勢を崩していません。
なぜでしょうか。
それは、利上げが日本経済全体にとって効果の強い「劇薬」になりかねないからです。
例えば、金利が上がれば、企業は銀行からお金を借りにくくなり、新しい工場を建てたり、給料を上げたりすることに消極的になります。私たち個人にとっても、住宅ローンの金利が上がり、毎月の返済額が増えるなど、家計を直接圧迫するでしょう。
つまり、日銀が急いで利上げをすると、物価は落ち着くかもしれませんが、経済活動全体が冷え込み、不景気に陥ってしまう危険性があるのです。
ここに、日本銀行の大きな「ジレンマ」があります。
・円安を是正して物価高を抑えるには、利上げが必要。
・しかし、その利上げは景気を悪化させるリスクがあるため、簡単には決断できない。
この板挟みの状態が、円安の是正を遅らせている最大の理由です。そして、円安が続く限り、輸入品の価格は高いままとなり、私たちの生活費も高止まりしてしまう。これが、今の物価高がなかなか収まらない根本的な構造なのです。
出口の見えない物価高の「正体」
ここまで見てきたように、私たちの生活を楽にするはずの現金給付や減税といった政策が、日本の供給力不足という現実の前では、かえってインフレを悪化させる火種となり得ます。
その一方で、物価高の根本原因である円安を是正すべき日本銀行は、景気後退のリスクを恐れるあまり、有効な一手(利上げ)を打ち出せない「ジレンマ」に陥っています。
政府による短期的な家計支援はインフレを助長し、金融政策は円安を止められない。この二つの要因が組み合わさることで、物価は高止まりし、私たちの生活がじわじわと圧迫され続けるという、出口の見えにくい構造が生まれているのです。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
政治の季節には、どうしても短期的に聞こえの良い政策に注目が集まりがちです。人々は日々の生活のことで手いっぱいだからでしょう。
しかし、こういう時でも、私たち一人ひとりが、その政策が日本経済の根本的な課題解決につながるのか、という視点を持つことも大切と思います。
今後本格化する経済論争で、政治家たちがどこを向いて議論しているのか、その背景にある経済の仕組みを少しでも知っておくと、ニュースの見え方もきっと変わってくるはずです。
私のnoteでは、今後も、こうした経済の大きな潮流を読み解き、皆さんと共に未来を考えるヒントを提供していきたいと思います。
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また次のコラムでお会いしましょう。
村田雅志(むらた・まさし)
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