インフレでも利上げできない日本、日銀の限界と【資産格差】の未来
こんにちは。村田雅志です。
最近、スーパーやディスカウントストアで
「また値上げか……」
と感じる瞬間が増えていませんか。
しかも、介護や外食などサービス業に携わる方の多くが
「給与は思ったほど増えない」
という現実に直面しています。
――物価は上がるのに賃金は上がらない。
この“ねじれ”は、外部要因(円安やエネルギー高)と内部要因(賃金・内需の弱さ)が同時進行する日本特有の構造にあります。
インフレを動かす「外部」と「内部」
「インフレを抑えるのは日銀の仕事だ」と思う方も多いようです。
しかし、日本銀行自身の分析によると、日本の物価変動の約7割は「外部要因」、国内でコントロールできる「内部要因」はわずか3割に過ぎないとされています。
インフレの国際連動性と日本の物価変動
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2024/wp24j02.htm
為替や資源価格といった“世界からの風”が日本の物価を大きく左右する――これが出発点です。内部要因だけを金融政策で操作しても、インフレ全体を抑え込むのは難しいのです。
内部要因:賃金と内需の限界
まず、内部要因を見てみましょう。インフレを支える国内の力には、賃金や内需、労働力の動向があります。しかし、これらの要素は力強さに欠けます。
近年、大企業の賃上げが話題ですが、全体では明るい話ばかりではありません。飲食業や介護職など、低賃金セクターの賃金の伸びは弱いままです。
たとえば厚生労働省が毎月発表する「毎月勤労統計」によると、給与全体(現金給与総額)は全産業平均が前年比2.0%増ですが、飲食サービス業は(わずか)0.1%増となっています。
高齢化が進む日本では、特定の品目の需要が弱まっています。例えば、若者向けのファッションや白物家電の需要は細っています。
一方、誰もが必要とする食料・エネルギーといった必需品の需要は底堅く、物価上昇の基盤を形成しています。消費者物価指数で食品や電気代の伸びが全体よりも高いことはよく知られていることです。
外部要因:円安とエネルギー・食料価格上昇
外部要因は日本のインフレを押し上げています。
7月のドル円は143~144円台と安定しており、年初の水準(157円台)と比べれば円高になっているように見えます。
しかし、円の総合的な水準を示す円インデックス(名目実効レート)は81程度と年初とほぼ同水準で、コロナ禍の水準(110)から比べると25%以上も安い状態(円安)です。円安による輸入物価の押し上げ圧力は依然強いままです。
世界的なエネルギー・食料価格(コモディティ価格)は、一時期のような上昇が一服しましたが、ここから下がる様子を見せません。
国連食糧農業機関(FAO)が公表した世界食料価格動向によると、6月の食料価格指標は前年比5.8%上昇となっています。内訳を見ると、植物油、食肉、乳製品の値上がりが続いています。
日銀は本当に金融引き締めができるのか
日銀は、内部要因の弱さを理由に「インフレは鈍化する」との見通しを示しています。しかし、外部要因の影響が大きい以上、この見通しが外れる可能性は少なくありません。
仮に見通しが外れインフレが鈍化しなかったとしても、日銀が金融引き締めに動くと言い切れないかもしれません。なぜなら、インフレ継続の主因が外部要因の場合、たとえ日銀が金融引き締めをしてもインフレ鈍化につながらないとの見方が日銀内からも指摘される可能性があるからです。
また政府などからは、日銀による金融引き締めで景気が悪化することや、財政の自由度が低下することを指摘する声も強まるかもしれません。
金融引き締めをしてもインフレが大きく改善しないのに、景気が悪くなる、というのは、まさに「スタグフレーション」です。日銀がスタグフレーションを恐れ、金融引き締めに遅れ気味なる展開も視野に入れるべきでしょう。
引締めが遅れた場合の金融資産の変化
1.預貯金の価値が目減り
インフレ率が2%で、普通預金の金利が0.1%だと、預金の「実質価値」は毎年約1.9%減。10年で約2割も目減りします!
2.株式市場の動きが大きくなる
円安で輸出企業(自動車や電機)の株価は上昇。
逆に、輸入コストが増える小売りや飲食業の利益は圧迫され、株価は下落傾向に。
市場全体の「変動性」も高まり、投資の難易度が上がります。
3.債券は魅力低下
インフレ期待の高まりで金利が上昇し、債券価格は下落。低金利の日本国債は特に厳しい状況に。
4.外貨資産やゴールドが注目
円安で外貨建て資産(海外ETFや外貨MMF)の価値が上昇。
ゴールド(金)はインフレに強く、2025年7月時点で1g約17,000円(年初から25%上昇)。
不動産投資信託(REIT)も、賃料収入が見込める投資先として人気。
5.資産格差の拡大
こうした状況を目にすることで、日本の人々の間で生活防衛意識が高まり、保守的な家計ですら投資にシフトする動きが出てくるでしょう。投資信託や積立型商品(NISA活用)が話題になることが増えそうです。
一方で、金融リテラシーの低い層は、こうした話題や動きに乗り遅れ、結果として預貯金に固執することになります。結果として、資産の目減りリスクが顕在化し、いわゆる資産格差が拡大します。
まとめ:自ら対応しようとする心構えを
日本のインフレの先行きを確実に言い当てることはできませんが、日銀や政府が日本のインフレを完全にコントロールすことが難しいのは事実です。
このため我々がすべきことは、日銀などの外部に頼り切るのではなく、自分で情報を集め、行動する準備を始めることが、インフレ時代を生き抜く鍵です。
では、どうすればいいのでしょうか?
まずは、インフレの現実を理解することでしょう。スーパーなどで価格をチェックし、家計簿アプリなどでインフレの実態を把握したいところです。
資産防衛の意識を持つことも大事になります。
NISAやiDeCoといった積立投資、外貨建て資産やゴールド、REITなど、インフレに強い選択肢を検討することも一つの方法でしょう。
経済の不確実性に立ち向かうには、(いわゆる)リテラシーを高め、行動を起こすことができるよう準備を始めることだと思います。
村田雅志(むらた・まさし)
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