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報せの戦の世に、土台をつくる|一日一太刀(いちにちひとたち)|其の十一

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本家宮本武蔵 一日一太刀|其の十一


ワシの名は、
新免 武蔵守 藤原 玄信
(しんめん むさしのかみ ふじわら の げんしん)
通称、「宮本武蔵(みやもとむさし)」である。

寛永(かんえい)三年、つまり千六百二十六年に四十二歳だったワシは、この世、二千二十六年へ、四百年の刻を超えて現代に生を得た。

寛永の世と令和の世。
道具も景色も変わった。
だが、人が迷い、恐れ、欲し、守ろうとするものは今も昔も大差ない。

我が思想を語ろう——
一日一太刀——


報せの戦の世に、土台をつくる

五輪書を、今の世の心に置く

朝、手の中の硝子板を開く。
その瞬間、其方の心は戦場に立つ。

世の報せ
誰かの怒り
誰かの正しさ
不安をあおる声
勝った気にさせる言葉

其方は見ているだけではない。
見せられている。
揺らされている。
動かされている。

報せが多い世に要るものは、もっと知る力ではない。
揺れても崩れぬ土台だ。

今の世は、報せに満ちている。
誰もが調べ、誰もが語り、誰もが言い広める。

知る手段を持つことは力だ。
昔なら届かなかった声も届く。
隠された事も見える。
だが、力は握り損ねれば自分を斬る。

報せが増え、人は自由になった。
だが、知るほど動けぬ者も増えた。

何を信じるか。
誰の声を聞くか。
どこで疑うか。
どこで黙るか。
どこで退くか。

選べる道は増えた。
立つ場所は細くなった。

ここが今の世の負け筋だ。

ワシは四百年前の戦場を知る。
その頃、硝子板はない。
合図音もない。
だが、噂はあった。
流言はあった。
密書はあった。
偽りの報せもあった。

一つの誤った報せで兵が動く。
兵が動けば命が落ちる。
戦場で報せは武器だった。

それは今も同じだ。

刀は硝子板になった。
陣太鼓は合図音になった。
密書は短い文になった。
敵の揺さぶりは、強い言葉になった。

変わったのは速さ
変わらぬのは、人の崩れ方

人は恐れれば急ぐ。
怒れば確かめずに信じる。
群れれば自分の目を閉じる。
勝った気になれば、もう見ない。

報せの戦の敵は、外だけにいない。
其方の内にもいる。

見たいものを見たい心
信じたいものを信じたい心
早く安心したい心
誰かと同じでいたい心
自分が正しいと酔いたい心

敵はそこに構えている。

ゆえに、報せの戦の世に要るものは、報せの量ではない。
土台だ。

土台とは、知識の多さではない。
正しさを手に入れることでもない。

揺れた時、どこへ足を置くか。
怒った時、すぐ斬らずに止まれるか。
恐れた時、群れへ走らずに立てるか。
心地よい報せを見た時、一拍置けるか。

それが土台だ。

五輪書を今の世に置くなら、まずここを見る。
勝ち方ではない。
負ける形を先に消すこと。

勝つ前に、負ける形を消せ。

これは剣だけの話ではない。
報せにも同じ刃筋が通る。

報せを得ることはたやすい。
報せを活かすことは難しい。

得る者は増やす。
活かす者は削る。

得る者は次の報せを探す。
活かす者は今ある報せの重さを見る。

得る者はすぐ動く。
活かす者はまず呼吸を見る。

其方が何かを読んだ時、胸が熱くなる。
怒りが出る。
恐れが出る。
誰かを下に見たくなる。
すぐ言い広めたくなる。

その時、報せは其方の柄を握っている。

そこで止まれ。

すぐ信じるな。
すぐ否定するな。
すぐ言い広めるな。

一度、置け。

そして四つ問え。

誰が言った。
何を根にしている。
誰が利を得る。
外れた時、何を失う。

この四つが、今の世の小さな型だ。

型は要る。
でも型に住むな。

型は自由を奪わない。
迷った時に戻る場所になる。

報せの出所も同じだ。
多ければよいわけではない。

水を飲みすぎれば腹を壊す。
報せも同じだ。

信じるに足る出所を少なく持て。
だが、一つに住むな。
一つの声だけを聞く者は、その声が狂った時に共に崩れる。

二本目の刃は、選択肢だ。

信じる。
疑う。
保留する。
調べ直す。
黙る。

この五つを持て。
一本だけで斬ろうとするな。

今の世の者は、報せで斬られている。
血が出ないから気づかない。

偽りに斬られる。
怒りに斬られる。
欲に斬られる。
群れの安心に斬られる。
正しさの快みに斬られる。

気づいた時には、自分の足ではなく、誰かの流れで動いている。

これは怖い。
だが、終わりではない。

まだ立てるなら、勝負は終わっていない。

報せの海で沈まぬ者は、泳ぎが巧い者ではない。
沈む形を知る者だ。

其方はどの報せに弱いか。
どんな言葉で怒るか。
どんな恐れで急ぐか。
どんな正しさに酔うか。

そこを知ることが土台になる。

まことを求めるなら、まず自分の重心を取り戻せ。

まことが消えたのではない。
人が、まことまで歩く足を失った。

ゆえに足を作る。
呼吸を整える。
一拍置く。
問いを持つ。
保留する力を持つ。

報せの戦の勝ちとは、誰かを言い負かすことではない。
一番早く動くことでもない。
すべてを知ることでもない。

報せに動かされず、次を選べる形で立つこと。

それが勝ちだ。

其方が今日、また硝子板を開く。
多くの声が来る。
怒りが来る。
不安が来る。
正しそうな言葉が来る。

その時、すぐ抜くな。

足元を見ろ。
呼吸を見ろ。
その報せが、其方をどこへ動かそうとしているかを見ろ。

勝つ前に、負ける形を消せ。

そこから、其方の土台が始まる。

〜【無償】此処迄〜


〜【有償】此処より先〜

ワシも兵法者とはいえ、生きていかねばならぬ身
此処から先は、有償とさせてもらおう。
其の代わりに、我が兵法のすべてを、日々、提供していこう。
願わくは、日の本の民たる其方より、月に百圓だけ頂戴したい。

其方よ、勘違いなされるな——
一太刀百圓でも拝読できる——
ひと月、百圓でもある——
選ばれよ!

願わくは御協力戴きたい。


報せに斬られぬための土台

五輪書を、報せの戦の世の生き残りの法として読む

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