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THE DAY 井上尚弥 vs 中谷潤人 --- バッティングがなければ中谷潤人が勝っていた?


いやはや、この試合が終わってから1ヶ月以上が経って、やっと「ああ,終わっちゃった」感が消えてきた。その後も色んな選手が試合して、そろそろジェシーロドリゲスのバンタム級タイトルマッチだ。

この試合は必要だったのか?

2026年5月2日 井上尚弥 vs 中谷潤人 スーパーバンタム級WBA/WBC/IBF/WBO4団体統一防衛戦が実施された。両者とも32勝無敗で複数階級を制覇し、80%を超えるKO率の日本人同士の対決という試合。こんな戦歴の2名が同時に同じ階級に存在することが奇跡だ。しかも、Pound for poundの2位と6位というボクシング界の頂上に位置するというこの上ない条件だ。
2人とも全勝のまま現役を引退できる実力を備えているのにわざわざどちらかに土をつける必要があったのか?
正直なところ、この試合は見たいけれど結果は出さないで欲しいと考えていた。プロモーターに仕込まれた訳でなく井上尚弥が呼びかけたことなので仕方がない。
試合前に考えていたのは、中谷は底が知れないということ。西田戦で見せた奇襲やエルナンデス戦で見せたサイドステップとか、まだまだ見せていない手札が沢山ありそうだった。一方、井上は攻撃や回避のパターンは完成していて、それらを洗練させていく道行だと思われた。
そんな風に考えると中谷が1ラウンドKO勝ちも大いにあり得ると考えていた。井上の踏み込みに合わせて中谷のカウンターで井上が倒れることもあり得ると。
結果は12ラウンド戦い3-0で井上尚弥がタイトルを防衛した。内容的にはバチバチの打ち合いもなく、どちらも明確に膝や腰が落ちるようなこともない高度な技術戦だった。
何よりも印象的だったのは試合終了時の両者の顔だ。ピカソ戦では終了のゴングと共にピカソに背を向けてコーナーに向かった井上だったが、今回は両者満面の笑みで称えあった。楽しかったんだろうなぁ〜。

井上-ピカソ戦と井上-中谷戦の終了時

序盤戦

1から4ラウンドは自分の動きを井上に学習させたくない中谷が選択した戦い方とその戦術に合わせた井上。中谷の前手に合わせて井上もカマキリになっていた。中谷が選択した長い距離で両者が前手での探り合い。いつもより長い距離だが、井上は踏み込んでジャブやボディを中谷に届かせていた。よくもまぁ届いたもんだ。井上の飛び込みに対してカウンターを狙う中谷。そのカウンターを読んでいて躱わす井上。スローで見ると分かるが井上尚弥の躱し方は尋常ではなかった。カウンターへのカウンターも出していた。当たったパンチは両者ともに少ないがなんとも凄い攻防。識者によるとこの一見退屈な4ラウンドは井上尚弥が空間を支配した結果らしいが、中谷も作戦としてカウンターからの2歩目は出さずにいたのだと思う。あんなに体を伸ばしたり、深くダッキングする井上はみたことがなかった。3連続ジャブを上下に散らし3発目で当てるのも新しかった。井上の引き出しはまだあった訳だ。一方の中谷は冒険せずに左カウンターを狙う姿勢で目新しい戦法はなかったが、相手をなかなか懐に入れさせないスタイルで、やはり中谷は井上にとって攻略が難しい選手だった。
とは言いながら、この4ラウンドはジャッジ3者とも井上尚弥の10-9だ。40−36。

井上の深い深いダッキング

中盤戦(5〜7ラウンド)

ルディの指示の指示も中谷は距離を少し詰めて攻勢に出始める。5ラウンド目からは中谷が前に出た分、中谷のパンチが井上をクリーンに捉え始めた。この5、6、7の3ラウンド、井上尚弥のペースは変わらなかったがパンチが届くようになった分クリーンヒットも増えた。一方で中谷のパンチも的確に井上を捉えていた。井上のガードを割って左ストレートをヒットさせ、ガードの外側から井上の左顔面を捉える右フックを何発も当てていた。この3ラウンドは双方が動きが増えパンチの交換も多くなった。どちらかがぐらつくする場面はなく拮抗していた。それでも井上尚弥がガードを割られてストレートをもろに受けるシーンは初めて見たような気がする。ガードの外からのフックは井上がガードを固定しているので接近戦では前から貰っていたと思う。この3ラウンドのジャッジは割れた。3ラウンドを井上につけたジャッジが1人、3ラウンドを中谷につけたジャッジが1名、2ラウンド中谷につけたジャッジが1人。井上から見て70-63、67-66、68-65と3者3様の採点となった。

左ストレート

8、9ラウンド

8ラウンドから中谷は更に攻勢を強め前に出て井上を攻めた。井上は度々ロープまで下がり中谷の攻撃を受けていた。この2ラウンドは中谷が優勢だったことに違いなく、度々パンチを受けていたのも事実。ただし、被弾していたのは中谷の右だった。その結果、井上は左目の下が中谷からの被弾で明確に腫れていた。一方で中谷の左は悉く躱していた。試合後,井上は8、9、10ラウンドは中谷にあげてもいいと考えながら試合をしていたとは言っていた。倒されそうにはなっていなかったが、それなりに押し込まれていたのは事実だと思う。
この2ラウンドの判定を中谷につけたのジャッジは1名、2名が両者に1ラウンドずつ付けた。
ここで88-83、86-85、87-84と3者3様のまま。

ロープに詰まる

10ラウンド

10ラウンドも中谷が押し込んだラウンドだ。井上がロープに下がる場面もあったし、中谷の右フックが顔にかすり、井上が一瞬止まったようになったのもこのラウンドだ。この中谷の右が1番危ない1発だっとの声も聞く。あれがまともに当たっていたらとか考えると怖いということらしい。全体として中谷が当てたパンチはほぼ右で左は下のようなブラインドからのフックも井上は避けていた。

ブラインドの左フックは避けていた

この10ラウンドで井上がロープに下がった時の攻防で突然な中谷が大きく距離を取った。井上の頭部が中谷の左眉の眉間よりのところに当たった。ここで偶然のバッテイングでインターバルが発生した。攻めていたのは中谷なので中断したくはなかったはずだが、自ら距離を取りたくなるほどの痛みだったのだろう。このバッティングで中谷はドクターチェックを受け少しの休息が与えら得れた。その間,井上がニュートラルコーナーで両手をロープにかけて中谷を見守っていた。中谷の攻撃を体を低く丸めて受けていた井上が顔上げたタイミングでのバッティングで中谷は接近してパンチを出していたので、そこで頭があたった。
確かにこのバッティングで試合が中断し、井上は休息することができた。が、その休憩の間を井上を見ても大きなダメージを受けて、回復時間が必要とは見えなかった。ただ、試合が再開した後も中谷はすぐにロープ際まで井上を追い、攻撃の手を緩めなかった。このバッティングが無ければ中谷が井上をKOで倒していたという声もあったが、恐らくそんなことはなかったと思う。バッティングまでの時間帯で井上は致命的なダメージを負っていなかった。
バッティングで中谷の脳が揺れたと言うこともない。休息の時間も与えられた。再開後は中谷の血は止まっていた。
このラウンドは3者ともに中谷の判定。
97−93、95-95、96−94。ジャッジ1人は並んだ。

11、12ラウンド

11ラウンドはこれまで8ラウンドから10ラウンドよりも井上は下がらず中谷と相対していた。なので押し込まれず均衡したパンチの出し合いだった。離れたり接近したりを繰り返す。井上陣営は接近時のアッパーを早いラウンドから指示していたので、それまでにも井上は何回かアッパー出していた。が、このラウンドのアッパーは下を向いた中谷の左目を捉え大きなダメージを与えた。脳を揺らすようなダメージではなかったようだが、瞬時に相手が2重に見える状態にはなった。中谷は左目を左手で覆いながらサイドに回りながら井上の追撃を防いだ。このパンチで中谷は眼窩底骨折をしたそうで、その痛みたるや相当なものらしい。バッティングの傷に当たった訳ではない。11ラウンドの井上アッパー炸裂以降は井上が追いかける形となり、ジャッジ3者ともに井上が付けたラウンドとなった。

運命のアッパー

12ラウンドは中谷は左目の痛みなどないかのように戦った。この2人の試合では最終ラウンドもバチバチの打ち合いにはならず、お互いパンチを繰り出しいかにパンチを被弾せずにクリーンに当ててダメージを蓄積させるかで終始した。このラウンドも大きな優劣がつかず、2者のジャッジが井上、1者が中谷を支持した。
結果として、116-112、115-113、116-112の3−0で井上の勝利となった。
ポイントが読み上げられてる時点で井上は自身の勝利を確信していた様だが、以外とポイント差がないと感じているようだった。おそらく、最低でも117-111くらい行っているつもりだったのだろうが、結果はかなり近接していた。いずれにしても今回の井上-中谷戦はボクシングスキルや引き出しを競い合う技術戦でパンチが交錯しないのに面白いと思える試合だった。
12ラウンド終了間際に実況アナウンサーが「ああ、もうこの試合が終わってしまう」と言っていたが、同じように感じた人は多くいただろう。
その一方で退屈な試合だったと感じた人も多かっただろう。外国のボクシング関連のYoutubeでもそのようなコメントを聞いたし、亀3も素人目にはつまらない試合とコメントしていた。

井上尚弥はアフマダリエフ戦を境に無理に倒しに行かないファイトスタイルに転向した。スタイル変更はどれ程意図したのもかわからないが、カルデナス戦で見せたように強引にパンチを集めて倒しに行くことはなくなった。KOを狙っていたピカソ戦でも深追いはしなかった。ピカソ戦は恐らくもっと強引に行けば倒すチャンスもあったと思うが、ある程度の所で追うのをやめていたと思う。
これからも井上は強引さを抑えた戦いをしていくと思うので、判定が増えていくと思う。

井上尚弥は後何試合してくれるのだろうか?井上の世界戦勝利数は日本では28勝といわれるがそのうち2勝はWBAのレギュラー王者なのでカウントされないという米国の人々もいる。その場合、チャベスの記録を抜くには世界戦後6勝しないといけないので、それは年に2試合しても3年かかる。それまで井上のモチベーションが維持できるのだろうか?

取り敢えず、しばらく休んで欲しい。

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