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ザ・ カルト /The Cult Electric 1987

イギリスのバンド、ザ・ カルトが渡米した1987年3枚目のアルバム

プロデューサーのリック・ルービンは、1986年Run-D.M.C.とクラシック・ロックの象徴エアロスミスによるコラボレーション、『ウォーク・ディス・ウェイ』を実現させていた。
ベテラン・バンドの再生と復活の実績を上げていた。

翌1987年、新作アルバム用のプロデューサーを探していた。ザ・カルトのメンバーはそのルービンの元にニューヨークに訪れていた。

ルービンはボーカルのイアン・アストベリーとギタリストのビリー・ダフィーの2人にデモ音源受け取ると「レッド・ツェッペリン、AC/DC、エアロスミスは好きか?」と問いかける。そして「もちろん」と返し、「そしたらレコード作ろう」とルービンは返した。

1980年代後半は、エアロスミスの復活の様にクラシック・ロックの再興期に入り、カルトのサウンドの方向性もクラシック・ロックに活路を見いだす。

この際納得がいかないデモ音源を一度白紙に戻し、リック・ルービンのプロデュースに全てを託す。

Track List

Wild Flower
Peace Dog
Lil' Devil
Aphrodisiac Jacket
Electric Ocean
Bad Fun
King Contrary Man
Love Removal Machine
Born To Be Wild
Outlaw
Memphis Hip Shake

Member

Ian Astbury – lead vocals
Billy Duffy – guitars
Jamie Stewart – bass
Les Warner – drums

Wild Flower

リック・ルービンからのミッションは、マーシャルのアンプを直でギターを弾く事。
AC/DCの「バック・イン・ブラック」(1980)の音をTTP(徹底的にパクる)する事だった。

右チャンネルから聴こえる少しこもり気味のギターの
リフは、AC/DCのマルコム・ヤングのギターの音とそっくりだ。
※ギタリストのビリーはグレッチのホワイト・ファルコンを持っているのでグレッチの音かも知れない。マルコム・ヤングもグレッチのギターを使っている。

またギターの音以上にドラムの音や最小限の手数とかも酷似していて徹底している。ホンモノに近づきたいという気持ちが伝わり聴いていて心地よい。

一才加工しない音作りは良いが、ボーカルの音量に関してはほぼ加えたり、装飾していない。楽器の音に埋没しそうな箇所がある。
ボーカルの発声も自分なりに工夫しないといけなく、想像以上にスパルタだ。


Peace Dog

シームレスに続く2曲目。左チャンネルはブラック・ビューティーのレスポール・カスタムの音が鳴っている。アンガス・ヤングのギブソンSGに倣いここも徹底的にAC/DCのパターンだ。

Aメロは全体の演奏がどっしりと腰が据わり、タメが効いていて、ブリティッシュ・ロック的重低音だ。

ぶつ切りしたギターのコード・ストロークもストイックだ。フリーのポール・ロジャースとポール・コゾフの様でもある。さらにギターの粘りのあるソロもポール・コゾフの様に1音に魂が籠る。

Lil' Devil

左チャンネルのレスポールから始まり、開放弦を混ぜたリフ。ギターしかメロディ楽器は無いので、ひたすらリフ攻めだ。
右チャンネルはぶつ切りのコード・バッキングはローリング・ストーンズ的に突き進む。

イアンのボーカルのシャウトも取り囲まれている人生の現状を全て打破するかの様に力の限りシャウトする。装飾なんかいらない、頼れるのは己しかいない!とばかりに魂を込めている。

Aphrodisiac Jacket

AC/DCの「Hells Bell」を想像させるリフ。音の鋼鉄さも真空パッケージした様に現在でも新鮮に聴こえる。ギターの音が混じりっ気無しで気持ち良い。本当にブレずに突き進む生身の肉体の音だ。

イアンのボーカルは左右2本のハムバッカーのギターの爆音に負けていない。フレーズ連呼しシャウトし倒す。彼にとって新しいトレード・マークとボーカル・スタイルが完成しつつある。まさに覚醒する瞬間だ。

Electric Ocean

レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジが弾きそうなリフだ。
ブレイクしてからのど頭チョーキングとかもジミー・ペイジばりで、もの凄く分かりやすい先人のロックのフレーズを巧みに取り入れている。
メーターを振り切りとことんジミー・ページに成り切って潔い。

Bad Fun

ここでもドラムの音は装飾されていない。特にこの曲はバスドラムが良く聴こえる。ツェッペリンのボンゾを意識している。

イアンのボーカルも生音で太く、孤軍奮闘している。

マーシャル直の為、気合いのペンタトニック剛腕のチョーキング&ビブラート。サスティンは指でこねくり出す。
ルービンから許可が出ている唯一使用して良いエフェクターはワウペダルのみ。ソロの冒頭周波数が変わった音が聴こえたからひょっとするとワウを踏んだ可能性がある。
またアーミングが終盤に聴こえるので、このギターはグレッチのホワイト・ファルコンで弾いてるかも知れない。

King Contrary Man

ここもツェッペリン・スタイル。歌に入るとギターがブレイクするところなんかはモロだ。このリフもソリッドで切れ味があってカッコ良い。

ただ心無しか、イアンのボーカルも生音で加工無しか少し疲れてきてる感じがする。少し声量が小さく聴こえる。※一切の救いのないレコーディングだから生身の身体で爆音の中何テイクも歌えば仕方ない。むしろ良くやってる。

ルービンのスパルタ・プロデュースであるが、心を鬼にしなければ、イアンのボーカルも一皮剥けないのだと見透かしているのだと思う。

ギターも正念場を迎えているのか、この曲ではチョーキング&ビブラートに一層の力が籠る。
サスティンが欲しければ、己の指でこねくり回してでも出せと、エフェクター禁止令という制限の中でのソロだ。
1番最後の音は力の尽きて音が出せなくなってるが、こういうのが実にリアルなドキュメントでリスナーに真に迫ってくる。

Love Removal Machine

この曲が1番オリジナリティを感じる。今後の布石となり、躍進して行くきっかけになる曲に聴こえる。

曲の後半の展開も後年の作品の「Ceremony 」でも見受けられるパターンが聴ける。

イアンの「Baby Baby BabyBaby」の絶叫フレーズも以後トレード・マークになるし、この連呼がマイク・スタンドを両手で持つ姿がイメージ出来てロックしている。

ギター・ソロはこれまで書いてきたが、改めてモロに直球のジミー・ペイジだ。
ルービンに質問された「ツェッペリンは好きか?」に続き、「好きなら思いっきりやっちゃって良いよ」とかルービン言ってそうで、そんなセリフに「なり行かせていただきます」とかビリーが返したみたいなやり取りしてそうで微笑ましい。

Born To Be Wild

ステッベン・ウルフの「ワイルドで行こう」をカバー。唯一のカバー曲だが選曲誰推しなのだろうか?どうやって決まったんだろう?

1980年代後半にコテコテなクラシック・ロック曲をチョイスとは?これちょっと大げさな推測の域だが、自身のバンドの過去のキャリアの完全決別ではないだろうか?

アレンジもメタル的にボトム弦をザクザク刻んでモロにコテコテでわざとらしい。
しかしルービンは踏み絵的にここまでメーター吹っ切ってやって欲しいという思いも含んで選曲しているかも知れない。

実際彼らは時代に逆行しようが何だろうが、表面的なファッションでやる(1980年代MTV的)音楽なんか意味が無い事を理解している。でなければルービンの門を叩かない。

メンバーそれぞれの鍛えた肉体から叩き出す「本気」の魂の音楽がカバー曲でこそよりリスナーに伝わってくる。

イアンの喉が絶叫で枯れてからが本番な後半のハイライト

Outlaw

ここもツェッペリンとAC/DCを足して2で割ったようなギターのリフ、ここでも本気と魂が持続している。

ビリー・ダフィーのギター・ソロは、サウンド、トーン、フレーズ構成、タイム感ともにパーフェクト。ビリーはホンモノのロック・ギタリストとして覚醒した瞬間だ。

Memphis Hip Shake

いわゆるツェッペリンの「ブラックドッグ」スタイルのボーカルが詞を吟じ、レスポンスでギターが追随するあの方程式。

カルトのメンバーは終盤に来てこの王道ツェッペリン・スタイルを自分達のモノにしている。


まとめ

思った以上にAC/DC
AC/DCの「バック・イン・ブラック」の音は加工、装飾ゼロ状態で、本当に演奏の基礎が無いと成立しない。リフの度合いはツェッペリンよりAC/DCの濃度が高い。

実際リック・ルービンはミックス・ダウンの時にもAC/DCやツェッペリンの音を具体的に引き合いに出して「アノ音」を再現指示していたそうだ。

とことん無駄を省いた体脂肪が少ない筋肉質なサウンドは、真のカルトというバンドが何なのかを自分達自身はっきり気づくきっかけになった。

リック・ルービンは、バンドが音楽の方向性の過渡期のタイミングに出会った。それを最初から見抜いており、一旦背負っていたもの降ろして、とことんシンプルなロックにバンドを再構築させた。

次作「ソニック・テンプル」が大成功したのもこの作品で基礎を見直した事が大きい。

加工、装飾無しの己の肉体で叩き出したリアルなロックが聴ける1980年代では珍しい名盤。

終わり


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ザ・カルトのアルバム「Electric」は、1987年にリリースされたサードアルバムであり、後のロックシーンに大きな影響を与えたとされています。

当初はニューウェーブバンドと位置付けられていたザ・カルトですが、本作品ではそのイメージを覆し、ハードロック路線へと転向したと評価されています。

「クール」で「かっこいい」と形容される一方、ハードロックとしての評価と、元々のポジティブ・パンクという出自との間のギャップが指摘されています。

「Electric」は、イギリスとアメリカで大きな成功を収め、ヒット作となりました。アメリカではTOP100内(87位)にランクインし、世界的なブレイクへの期待が高まりました。リック・ルービンがプロデュースに関わっており、彼のプロデューサーとしての評価を決定付けた作品だとする意見もあります。

音楽性については、硬質なサウンドとシンプルで分かりやすい曲構成が特徴として挙げられ、ハードロックンロールに分類する意見があります。しかし、ドラムのキレの悪さが指摘されるなど、楽曲全体の完成度についてばらつきのある評価も見られます。

一方で、ポジティブな気持ちにさせてくれる、あるいは頭を空っぽにできるような効果があると感じる向きもあるようです。「Wild Flower」は1stシングルだった可能性があります。

一方、音の古臭さがかえって新鮮で、次の時代の音楽への準備になったというユニークな見方もあります。 また、ギターパートについては、イントロは初心者でも弾きやすく、Aメロでは開放弦を巧みに用いた渋い演奏が楽しめるという評価があります。全体として統一感のある作品であることから、ハードロック愛好家にとっては「スルメ」のような、何度も聴きたくなる魅力があるとの意見もあります。

「ポジティブ・パンク」というジャンルについては、80年代半ばの音楽ジャーナリズムによるネーミングであること、ハードコア・パンクとは異なる音楽性を持つパンク/ニューウェーブの動きに注目して生まれた用語であること、その名の通り「ポジティブ」な部分がどこにあるのか分かりづらいと感じる人もいることが指摘されています。

なお、The Cult は1984年にイアン・アストベリーとビリー・ダフィーを中心に結成されました。 イギリス、ブラッドフォード出身のバンドです。

「Electric」以前は、ニューウェーブ的な立ち位置でデビューしていました。 「Electric」の後にリリースされたアルバム、『Peace』については、バンド自身は満足していなかったとされています。 その後も、アルバム『Sonic Temple』 や、再結成後のアルバム『Beyond Good and Evil』などを発表しています。


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