「このままじゃ1音目からミス…」そのとき長男が動いた|冷や汗の発表会②
発表会当日、私の頭の中は不安でいっぱいでした。
特に心配だったのは、初めて舞台に立つ4歳の次男のこと。
直前のリトミックでは、楽しさが勝って走り回っていた次男。
このままピアノの椅子に、ちゃんと座ってくれるのか——
それが一番の不安でした。
普段の長男は、「おひー」と言いながら
私にお姫様抱っこを要求する、まだまだ甘えん坊。
しかも家では、弟のおもちゃを取り上げたり、
意地悪なことを言ったり、
どちらかというと次男を振り回しているタイプです。
そんな長男に、
「頼む……」と心の中で拝むことしかできない自分がいました。
本番。
長男はうまいこと次男を誘導し、
何事もなかったかのように椅子に座らせてくれました。
「あ、ちゃんと分かってるんだ」
舞台袖で、私はそんなことを思っていました。
演奏が始まると、次男はどうやら楽しくなってしまったようで、
ニコニコしながら客席に笑顔を送る余裕まであります。
——いや、よそ見するとミスタッチするって、知ってるよね?
しかも連弾。
一度止まると、立て直しが難しい。
そんなことを考えているうちに、
あっという間に1曲目が終了しました。
そして2曲目の準備中、
私は気づいてしまったのです。
構えている手の位置が違う。
このままでは、1音目からミス確定。
「うわあ、どうしよう……」と思ったところで、
舞台上の私は、何もできません。
そのときでした。
長男が自分の手を構えたあと、
次男の手の位置をさっと確認し、
そっと正しい位置に動かしてくれたのです。
——見事なファインプレーでした。
「ありがとう、長男……!」
私は心の中で叫びました。
無事に演奏を終え、兄弟そろってお辞儀。
見に来てくれていた女の子から花束を受け取りに行くところまでは、
うまくいっていました。
ところが次男は、急に恥ずかしくなったようで、
花束には手を伸ばさず、
ものすごい勢いでステージを去っていきました。
本当に、最後まで冷や汗の発表会でした。
でも、あとから思うのです。
普段家では、弟を振り回してばかりに見える長男が、
あの舞台では、自分の役割を選び、
黙々とやるべきことをやっていたこと。
私はつい、
「弟の面倒を見てくれたお兄ちゃん」として
長男を見てしまいがちだけれど、
あの日の連弾は、
同じ舞台に立つ一人の奏者としての姿を
見せてもらった時間だったのかもしれません。
うまく弾けたかどうかよりも、
親が手出しできない場面で、
子どもがどう振る舞うか。
冷や汗だらけだったけれど、
それでも、兄弟で舞台に立ってよかった。
今は、そう思っています。
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この記事が「うちだけじゃなかった」と感じるきっかけや、少し気持ちが軽くなる時間になっていたら嬉しいです。
同じように悩むご家庭に届く記事を、これからもコツコツと言葉にしていきます。