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Be Quiet and Drive (Far Away) /Deftones──過去を引き連れて遠くへ 【楽曲レビュー28】

デフトーンズの奏でるロックは、なかなかに芯を捉えられない。

重い。暗い。輪郭がぼやけているのに、圧だけは確かに来る。なんとなくハマれそうな空気を持っているのになかなかハマらせてはくれない。アルバムを通して聴こうとして、途中でそっと閉じる。なのに、しばらくするとまた開きたくなる。

つかず離れずの感じで付き合ってきたのが正直なところ。今でも体調によってはアルバムを通して聴くことが難しい日もある。

ただ歳を重ねるにつれ、少しずつだけど"自分の中での好き"を育んできたバンドのようにも感じる。

彼らの魅力は、重低音と幽玄さが作る"強烈なトリップ感"にある。ロックなのに、副交感神経のスイッチを押されるような感覚。低音の波に身を任せると、心地よさが先に来る。理解より先に、体がほどける。

その象徴的な一曲が「Be Quiet and Drive (Far Away)」だ。2ndアルバム『Around the Fur』(1997)に収録された、バンドにとって初の全米チャート入りシングルで、Billboard Mainstream Rockで29位、UKシングルチャートで50位を記録した。


逃避願望が、束の間叶う。

この曲の構成はシンプルだ。ビート感の強いパートと、浮遊感が支配する混沌のパート──この2つを行き来するのが基本。なのに、単調さはなくドラマ性を感じられる。

いわゆる「静と動」のダイナミクスが強烈で、重いギターの圧があるのに、気分は沈むのではなく軽やかに遠くへと滑っていく。聴いていると、生活の景色を抜け出し、非日常へと意識が運ばれていく。「ここではないどこかへ」という逃避願望が、聴いている間だけ叶う。

この曲の特徴として、どこか宙ぶらりんなテンポ感がある。アップテンポのようでミドルテンポ、まるで動く歩道を逆走するような、進んでいるようで進んでいない絶妙な引っ張り合いがある。チノ・モレノのボーカルは激しいシャウトと繊細なファルセットを使い分け、その落差がさらにその宙ぶらりんな感覚を押し広げる。

冒頭の歌詞が象徴的だ。"I dress you in her clothes"──君に、彼女の服を着せる。失った誰かを、目の前の別の人間に重ねて見ている。意図しているのかよくわからないが、過去を振り切るのではなく、過去ごと連れて逃げようとしている。

その煮え切らなさが、この曲をアンセムたらしめているのかもしれない。遠くへ行けば何かが変わるという根拠のない願望。でも手放せないものは、どこへ行っても手放せない。そういう人間らしい執着が、サウンドの「振り切れなさ」と重なって、妙なリアリティを生む。

"Be Quiet and Drive (Far Away)"

黙って、遠くまでいけ。他者への命令のようで、どこか自分に言い聞かせているような切実さがある。括弧でくくられた"Far Away"が、言い切れない本音みたいに見える。「黙って走れ、頼むから遠くへ」──そういう懇願が、タイトルの中に滲んでいる。

「Be Quiet and Drive (Far Away)」は、Deftonesの異端性を"分かりやすい入り口"として体験できる一曲だ。ヘヴィで暗いのに、なぜか心地いい。輪郭はぼやけているのに、感情の芯だけははっきり残る。何度閉じても、また開きたくなる。

アーティスト紹介|Deftones
Deftonesは1988年、チノ・モレノ(Vo)らを中心にサクラメントで結成されたオルタナ系ヘヴィロックバンド。2ndアルバム『Around the Fur』(1997)で評価と人気を拡大し、2001年には「Elite」でグラミー賞(Best Metal Performance)を受賞。2025年8月には10枚目のアルバム『Private Music』をリリース。批評家から高い評価を受け、グラミー賞Best Rock Albumにもノミネートされるなど、結成から35年以上を経てなお進化し続けるバンドだ。


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