Papercut / LINKIN PARK──感情の混乱を、整ったフォームで叩きつける【楽曲レビュー55】
「LINKIN PARKの代表曲を一つだけ挙げるとしたら?」
なかなかの難問だ。
「In the End」の知名度は圧倒的だし、「Crawling」や「Numb」を推す人も多いだろう。
だが「LINKIN PARKとは何者か」を最も端的に示す曲という観点から、自分は「Papercut」を挙げる。
3分に満たない尺に、全部入っている
3分に満たない短尺のヘヴィロックナンバーだ。だがその短さの中に、LINKIN PARKの魅力が過不足なく収められている。
ヘヴィなギターリフ、弾むようなヒップホップビート、鋭いラップ、良質なメロディを武器に迫るボーカル。
一曲を聴くだけでLINKIN PARKの全てを瞬く間に体験できる。
ラップ担当のマイク・シノダはこの曲を「バンドが何者であるかを示す名刺のような存在だ」と表現している。
チェスター、マイク、ブラッドら複数のメンバーが「最もお気に入りの一曲」として挙げているという。
一方でMVについては、マイクが後年「特殊効果が間抜けに見える」「チェスターが全身チェック柄の服で現れたのは非常に奇妙な選択だった」と自虐的に語っている。
確かに服装は若気の至りという感じもする。
ラップとメロディが対立せず、ひとつの流れになる
マイクのラップは楽曲に緊張感と推進力を与える。チェスターのボーカルは感情の噴出として機能する。
この二つが対立しない。リズムを刻む言葉と、感情を押し広げるメロディが、ひとつの流れの中で接続されている。特にブリッジ部分でふたりの声が重なり合う箇所は、ファンの間でも特に評価が高い。
ラップとロックを混ぜること自体は珍しくない時代だ。だがそれをここまでメロディアスなロックナンバーとして成立させるのは簡単ではない。
「Papercut」は、その難しさをあっさり越えている。
不安の輪郭を、そのまま音にしている
この曲は聴き込んでいくと少しずつ印象が変わる。定規で線を引くようなサウンドの端正さと、極度な神経質さだ。
それもそのはず、歌詞のテーマはパラノイアだ。何かに見張られているような感覚、自分の内側に潜むもうひとつの自分に非難される。
精神の奥に沈んだざわめきが、少しずつ輪郭を持って迫ってくる。
感情の混乱を、極めて整ったフォームで叩きつける。その矛盾を成立させているところに、LINKIN PARKの特異さがある。
何不自由のない富と名声を手に入れたようなバンドに見えるが、実際にはパーソナルな痛みが注ぎ込まれている。
LINKIN PARK登場以降、ニューメタル系のバンドは多く現れた。後続バンドにはサウンド面の構築法だけでなく、内省的かつネガティブな精神性も受け継がれている。
アーティスト紹介|LINKIN PARK
アメリカのロックバンド。ヘヴィロック、ヒップホップ、エレクトロニックな要素を融合したサウンドで、2000年代以降のロックシーンに大きな影響を与えた。2000年の『Hybrid Theory』で世界的な成功を収め、チェスター・ベニントンの切実なボーカルとマイク・シノダのラップおよびプロデュース感覚の融合が、バンドの個性を決定づけた。
