00年代の国内インディーの開拓者、Oceanlane特集
今回は、2000年代の国内インディーロックシーンにおいて、EMOから UKブリットポップまで様々なジャンルを吸収し独自の地位を確立したバンド、Oceanlane(オーシャンレーン)の音楽をまだ聴いたことがないという方へ、入門となるような記事を書いていきたいと思います。
1.Oceanlaneの魅力とは
オーシャンレーンの魅力は何と言っても洋楽的エッセンスの吸収力です。特に、90年代のEMO、UKブリットポップからの色濃い影響が感じられます。その他多種多様なジャンルの音楽から、エバーグリーンなグッドメロディ、美しいコーラスワーク、エッジの効いたギターロックサウンドと、それぞれの良い部分だけを丁寧に抽出したような、非常に繊細かつシンプルな音楽性が魅力です。
透明感溢れる武居創の歌声と、ワイルドなハスキーボイスの直江慶、この二人のツインボーカルによる美しいコーラスワークとハーモニーは、Teenage FanclubやTravisといった UKのギターポップからの影響も感じさせますし、シンプルながらアイディアに富んだギターフレーズは北欧のLast Days Of Aprilや Starmarketを彷彿とさせます。
今や珍しくもなくなりましたが、当時は二人の英語の発音が限りなくネイティブに近いということも大きな武器の一つでした。全編英語詞による歌詞はメロディラインと調和し、耳に心地よく響くよう磨き抜かれています。
2011年に無期限活動休止を宣言し、事実上の解散状態となりましたが、約10年の活動期間で5枚のフルアルバムをリリースし、当時の国内インディーロックシーンの中でも特に洋楽的エッセンスを吸収していたバンドとして独自の地位を確立していました。
2.プロフィール
活動期間:2001年〜2011年
活動拠点:日本🇯🇵
ジャンル:インディーロック、EMO
オルタナティブロック

<メンバー>
右1 武居創(Vo/Gt)
左1 直江慶(Gt/Vo)
左2 堀越武志(Ba)
右2 嶌田政司(Dr)
メインボーカルは武居だが、直江がリードボーカルを務める楽曲も多数。ツインボーカルの楽曲も有り。二人ともにソングライティングを手掛け、基本的には自身が作曲した楽曲を自身で歌うスタイル。ベーシストの堀越はHenrytennisやBungee Jump Festival、 Taffyといったバンドに在籍。ドラマーの嶌田はKamomekamome、Buddhistson、The Coastguardsに在籍。(The Coastguardsには武居も在籍)
2001年、吉祥寺の中学の同級生であった武居と直江によって結成。5枚のオリジナルアルバムを残し、2011年、無期限活動休止。
3.勝手に全アルバム格付け
どのアルバムから聴き進めるかの参考として是非。
※あくまで私個人の独断と偏見です。
※絶対評価だと全アルバムが"S"か"A"になってしまうため、あくまで相対評価にしています。

まず最上位評価の"S"ランクに、2004年リリースのデビュー作"On My Way Back Home"。

様々なジャンルの洋楽のエッセンスを最もダイレクトに表現した作品と言えます。90年代のEMOやUKブリットポップからの影響が、本作の音楽性に色濃く反映されています。特に冒頭の"Everlasting Scene"と2曲目の"Sign"は、彼らのキャリアを代表する名曲。全体を通じても総じて質の高い楽曲が揃っています。ポップさが増していく3rd以降の作品と比べると若干地味で大人しい雰囲気もありますが、誠実なソングライティングとストレートな表現が光る、インディーロック精神に溢れた一枚です。
続いて"A"評価となったのは2007年リリースの3rd、"Castle In The Air"。

作品全体の統一感、調和という意味では最も優れた作品だと思います。それでいて楽曲ごとの個性も豊か。ゆったりと柔らかな響きの楽曲が多く、ドリーミーな雰囲気もあります。2曲目の"Walk Along"は彼らの代表曲の一つ。一曲一曲のインパクトよりも、作品全体としてグッドメロディと美しいハーモニーに磨きをかけた、堅実な一枚。
続く"B"評価に2009年リリースの4th、"Crossroad"。

全作品を通じて最もキャッチーで、なおかつバンドサウンドが前面に出たアルバム。個人的には、ドラマー嶌田の個性あるフレーズが楽しい作品。全体的に明るくポップな作風で、パワフルでダイナミック。一聴して魅力が伝わるような分かり易い楽曲が増えており、聴いていて最もテンションが上がる作品でもあります。その一方で、アレンジが大味になったと感じる方もいるでしょう。洋楽的エッセンスという意味では、初期の頃と比べると薄れているのは確かです。2曲目の"Shine On Me"は良い例。キャッチーさとパワフルさでは彼らのキャリアの中でも断トツですが、初期の繊細で堅実な路線からはややシフトチェンジしています。
続く"C"評価に2010年リリースの5th"Urban Sonnet"。

彼らが残した最後の作品。優れた楽曲が沢山収録されており、バリエーションも豊か。ただ、アルバム全体の統一感、集中力という意味では上位3作に劣るところ。武居と直江という2人のソングライターがそれぞれ全くタイプの異なる楽曲を提供しており、武居がシンプルなグッドメロディへと原点回帰する一方で、直江はより実験的で複雑な音楽性を追求。冒頭の"Submarine Volcano"は、直江がボーカルを務めた楽曲では唯一、Music Videoが制作された楽曲。
最後の"D"評価となったのは2005年リリースの2nd、"Kiss & Kill"。

スウェーデンのロックシーンにおいて数々の作品を手掛けた鬼才であり、Firesideというバンドのギタリストでもあるペレ・ガンナーフェルトをプロデューサーとして迎えた本作は、1stの美しく瑞々しい音作りから一転し、ダークでシリアスな方向性に。レトロ感の強いサウンドメイクが施されたギターロック。ただソングライティング的には、悪くはないものの、いま一つ目立てていない感が否めない作品。
4.その他の作品紹介(カバー集)
2008年リリースの5曲入りカバーミニアルバム、"Fan Fiction"。

それぞれ年代もジャンルも異なる5曲の洋楽を、見事にOceanlaneカラーに染め上げている。特にSadeの"Smooth Operator"のカバーは非常に大胆なアレンジで、原曲へのリスペクトを残しつつも全く趣向の異なる楽曲を生み出している。単なる"コピー"ではなく、これぞ"カバー"だと言いたくなる、そんな作品。
5.最後に
今回は知る人ぞ知るインディーズバンドを紹介しました。私個人としては、もし高校生の時にこのバンドに出会っていなかったら今の音楽性は無かったといえるほど、強く影響を受けています。普遍的なグッドメロディと美しいハーモニーが、いかに素晴らしいものかを教えてくれたバンドです。特にメインボーカルの武居創が当時フェイバリットに挙げていたアーティストは片っ端から聴きまくり、そこから洋楽の幅を広げていきました。
事実上の解散から10年以上が経った今もなお色褪せることのないグッドメロディが満載なので、興味を持って頂けた方は是非聴いてみてください。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
