わり算と消しゴムとひぐらしの嗤う教室🏫(教育×ホラー創作)
80÷40=20
私は塾の先生
目の前には「先生、できた」と
満面の笑みを浮かべ答案を見せる生徒がいる。
うん。違う。
静寂に包まれた教室で
ヒグラシが鳴く声が遠くに聞こえる。
ケケケケケケ…
最近は夕暮れになっても暑さがひかない。
塾講師である私は額ににじんだ汗をハンカチでぬぐい指導を始めることにした。
「少し怖い話になるけどいいかな。」
今回は生徒の印象に残るように
少し言い回しを工夫してみることにした。
思惑通りその生徒は身を乗り出し話を聞く。
「この答案をみた時、先生はあれっ、
何だか変だなぁって思ったんだよ。
そこで、この答えをじっと見ると…
ある異変に気づいてしまったんだ。
その瞬間…鳥肌がぶわーって立って、
背筋が急につめたーくなるのを感じたんだ。
うわ、これはヤバい、ヤバいなぁって。」
目の前の生徒は、稲川淳二の怪談を知らないらしい。
先生が何を言おうとしているのかつかめず、
ただただ不思議そうな顔をしているが
構わず話を続けることにした。
「どこが変だったか説明すると…」
80÷40ってことは80円を40円ずつ配るってことなんだよね。
じゃあ何人に配れると思う?
そう、2人にしか配れないはずなんだよ。
それが…この計算だと20人もいることになる。
これはおかしい。
存在してはいけない人が18人いるんだよ。」
ケケケケケケ…
「うわぁ、怖いな…そう思いながら、おそるおそるその答えを見る。
すると、さらに恐ろしいことに気づいたんだ。
なんと…
答えの後ろに
0が(霊が)
はっきりと付いていた(憑いていた)んですよ。」
私はいたずらに口もとを歪ませてみた。
生徒がハッと気づく。
「早く!2の後ろに0がいるから!
その消しゴムで除霊して!」
間違いに気づいた生徒は慌てて消しゴムをこすった。
ケケケケケケ…
その姿を見て思わず、笑ってしまった。
それにつられてその生徒も笑みをこぼした。
こんな風に楽しそうに勉強する生徒の姿を見ると微笑ましく感じる。
「いやぁ。今ホントに危ないところだったね。
そう。
この問題のポイントは数が大きくなると答えがわからなくなってしまうところなんだ。
だからこういう計算では、割られる数と割る数の0を同じ数だけ消せばいいんだよ。
例えば、80÷40だったら…8÷4みたいにね。
ほらっ、2になったでしょ。
もちろん20って書いたらバツ。
必ず除霊するんだよ。」
生徒は満足そうに笑みを浮かべたあと、口を開いた。
「でもさ…先生の後ろにいる霊は消しゴムじゃ消えないよね。」
…えっ?
後ろ?
不意に首筋のあたりに冷たい空気を感じる。
…振り向くことができない。
人の顔をした影がゆっくりと自分の視界に侵食してくる。
生徒はただ無邪気な笑みを浮かべ続けている。
ケケケケケケ…
ヒグラシの声だけがいつまでも耳に残った。
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