マルセイユで勃発した「前代未聞の乱闘」──デ・ゼルビ監督と“母親代理人”の対立構図
◆ 試合後ロッカールームを襲った異常事態
リーグ開幕戦でレンヌに敗れ、沈んだ空気のマルセイユ。ところが試合後、ロッカールームはさらに荒れることとなった。
中心にいたのはフランス代表MFアドリアン・ラビオと新加入の若手FWジョナサン・ロウ。口論から取っ組み合いに発展し、クラブが「受け入れがたい」と表現するほどの乱闘となった。
ロベルト・デ・ゼルビ監督は記者に対し、驚愕の言葉を並べる。
「バーでの喧嘩のようだった。チームメイトが床に倒れ込み、警備員が仲裁するような光景は見たことがない」
「歯こそ折れなかったが、サッカー人生で目にしたことのない暴力だった」
普段、選手の激情を管理する立場の監督ですら「どう対処すべきか分からなかった」と口にするほどの事態は、クラブにとっても深刻なものと映った。
◆ クラブの即断:移籍リスト入りという“極刑”
翌日、マルセイユは両選手を移籍リストに載せると発表。
通常なら罰金や数試合の出場停止で済まされるケースだが、クラブが取ったのは「戦力からの完全な排除」に近い決断だった。
背景には、ロンゴリア会長が昨季から進める「規律強化」がある。クラブは近年、内紛や規律違反で失点してきた歴史があり、“新生マルセイユ”においては一切の不祥事を許さない方針を徹底している。
しかしこの厳罰は、当事者だけでなく代理人や家族の反発を招くことになる。
◆ “名物母”ヴェロニクの反論とデ・ゼルビの反発
ラビオの代理人である母ヴェロニク氏は、息子の移籍リスト入りを真っ向から批判。
「前代未聞の暴力? 誰もケガをしていないじゃないの」
とクラブの表現を切り捨てた。
さらに彼女は「マルセイユはグリーンウッドにセカンドチャンスを与えたのに、なぜラビオは一度の乱闘で切り捨てるのか」と矛盾を突いた。
これに対し、デ・ゼルビ監督は即座に反論。
「母親は忘れている。私はラビオをキャプテンに指名し、息子以上に愛情を注いできた」
「グリーンウッドの件は私生活の問題。今回の件は職場での喧嘩だ。他人を引き合いに出すのはフェアではない」
こうして「監督 vs 代理人母」という珍しい構図が出来上がり、クラブの混乱をさらにメディアが煽る結果となった。
◆ 内部統制と更衣室文化の問題
今回の件は単なる「選手同士の衝突」にとどまらない。
デ・ゼルビ監督が語る“ストリート的乱闘”は、プロの現場で想定される衝突の域を超えている。
クラブが即座に「移籍リスト入り」という強硬策を取った背景には、更衣室文化の崩壊を恐れる意識がある。
一方で、代理人である母が公然とクラブ批判を展開する姿は、選手管理の難しさを象徴している。
特にラビオはユヴェントス時代から「母の強い影響力」で知られ、代表チームでも度々問題視されてきた。マルセイユにとってもこの“古傷”が顕在化した格好だ。
◆ 今後の行方
マルセイユはすでにシーズン初戦を落とし、デ・ゼルビ体制の船出は暗雲が立ち込める。
乱闘の当事者であるラビオとロウは移籍市場での放出が現実味を帯びるが、買い手がすぐに現れるとは限らない。特にラビオは高給取りで、クラブにとっても「高リスク資産」と化している。
この事件が示したのは、戦術的再建よりも先に必要な「規律の確立」だろう。
デ・ゼルビが口にした「キャリアで初めての光景」は、マルセイユというクラブの不安定さと、内部対立の根深さを浮き彫りにしている。
