【エッセイ:第7回】解像度の高いコミュニケーション:言語化の新時代
第2章 ✨ことばの温度、対話のかたち
― 解像度の高いコミュニケーションが始まる ―
「自分の“モヤモヤ”を言葉にできたとき、初めてその気持ちが“自分のもの”になった気がした」
ある学生のこの言葉が、今の時代を象徴している気がします。
📍今日から第2章。テーマは 「言葉にどう向き合い、どう伝えるか」 です。
ZoomやGoogle Classroomが一気に広がったコロナ禍を境に、私たちの“ことばの解像度”は格段に上がりました。
かつて「解像度」といえばカメラや画質のことでしたが、いまや「理解の深さ」を表す言葉として自然に使われています。
「めっちゃ」「落とし込む」といったフレーズの広がりにも、思考や感情の“伝え方”が変化してきた背景が見えてきます。
🌏 これからの時代に必要なのは、ただ伝えることではなく、
👉 感じたことをできるだけ鮮明に“言語化”する力。
言葉は記号ではなく、他者と理解を共有し、自分の内面に光を当てるためのツールです。
そんな「言語化力」が育つとき、私たちはもっと豊かな対話の時代へと進めるのではないでしょうか。
💡 第2章では、この「言語化」と「解像度」が切り開く新しいコミュニケーションのかたちを、一緒に探っていきます。
【第7回】解像度の高いコミュニケーション:言語化の新時代
「こうすることでこの考え方の解像度は高くなると思う。」
2020年代のコロナ禍を境に、ZoomやGoogle Classroomといったオンラインビデオ対話ツールが、世の中に急速に浸透した。この変化が一因であると考えるが、コロナが収束した現在も、コミュニケーションや言葉に対する「感度」が、コロナ以前よりも一層研ぎ澄まされているように感じる。証拠として、通常は写真の画質を表現する際に用いる「解像度」という言葉が、物事の理解度を表す言葉として使われる場面が増えてきたことが挙げられる。
実際、私は当時、高校教師として生徒たちと接していた経験があるが、今思えば、スマートフォンで気に入ったものをその場で撮影し、SNSで全世界に発信することが当たり前となった時代において、この言葉の誕生に立ち会ったのだと感じている。昭和世代でフィルムカメラを使っていた私にとって、その鋭い感性には感動さえ覚えた。
このような新たな言葉が時代とともに生まれていく様子を眺めるのは、言葉好きの私にとって非常に楽しみなことだ。その兆しとして、「言語化」という言葉が、言語そのものを表現する過程を指す言葉としてトレンドになっていることが嬉しく感じられる。
また、物事を強調するときに用いられる副詞「めっちゃ」が多用されるようになったのも面白い傾向である。この「めっちゃ」は、もともと関西地方で使われている表現だが、最近では関東でもよく使われるようになった。自分の気持ちを誇張して表現するのにぴったりな言葉だからかもしれない。また、「落とし込む」という表現もビジネスの場面でよく耳にするようになった。これは、あるアイデアを別のフレームに当てはめることを想起させる言葉だからかもしれない。

このような言葉の変化や拡張には、人々の「思考のかたち」が変化してきているという背景があるように思う。かつては「考えていることをきちんと伝える」ことが重要視されていたが、現代では「感じていることを、できるだけ鮮明に、言葉として立ち上げる」ことがより重視されるようになったのではないだろうか。
つまり、思考や感情をできるだけ高い「解像度」で捉え、それを言語化しようとする努力が日常的に行われているように感じる。
たとえば、ある学生が私にこう語ったことがある。「自分のモヤモヤをちゃんと言葉にできたとき、ようやくその気持ちが自分のものになった気がした」と。この言葉は非常に示唆的である。つまり、人はただ感じているだけではなく、それを他者に伝える形で表現できてこそ、本当に「理解した」と言えるのではないだろうか。このプロセスこそが「言語化」であり、その精度が「解像度」なのだと思う。
言語教育に携わる者として、私はこのような変化に大きな可能性を感じている。言葉は単なる記号ではなく、人と人が理解し合い、自分自身の内面とも向き合うための強力なツールであるからだ。だからこそ、「言語化力」を育てる教育の重要性は、今後ますます高まっていくだろう。具体的には、自分の考えや感じたことを抽象的な概念で表現するのではなく、できるだけ具体的なエピソードや比喩を使って語る訓練が求められていると私は考えている。
最後に、こうした「解像度」や「言語化」を意識した表現が広がっていくことで、コミュニケーションの質が変化し、より豊かな「対話」の時代が到来することを私は願っている。それは単なる情報伝達ではなく、相手と感情や経験を共有するための、深い対話の時代の幕開けとなるのではないだろうか。(つづく)
次回は、「〇〇感」の時代に生きて をお送りします。毎週水曜日更新です。ご期待ください!
全エッセイの目次はこちらです。
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