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【エッセイ:第32回】🌤️ 職場を去る前に、空を見上げて

遅かれ早かれ、やがてやってくる「最後の言葉」。
それは、定年退職や依願退職をする人が、職場に残す最後のメッセージである。

毎年3月末になると、この凝縮された言葉たちが、職場全体を静かに包み込んでいく。
その場面に立ち会うたびに、私もいつかあの場所で語る日が来るのだろうと、自然と襟を正す。

多くの人は、新人の頃からの歩みを振り返り、感謝の気持ちを伝える。
一方で、思いがけないエピソードを交え、場を和ませる人もいる😊


私の中で強く印象に残っているのは、高校での離任式の一場面だ。

中庭の朝礼台に立った、ベテランの英語教師。
少し不器用で、どこか照れくさそうなその人が、こんな言葉を口にした。

「みんな、空を見てくれ。空は大きいな。
でも、この空っていうのは、全世界とつながっているんだよな。
私はここでこの学校を去りますが、たまには空を眺めてください。
そうすれば、世界中で誰かとつながっていると思えるはずです。」


当時の私には、その言葉はどこか不思議で、少し照れくさいものに感じられた。

けれど今になって思う。
あの言葉には、深い意味が込められていたのだと。

教師という仕事は、教室の中だけで完結するものではない。
どこかで誰かとつながりながら、静かに広がっていく仕事なのだと——。


あの日以来、「空を見てください」という言葉が心に残り、
私は何度も空を見上げるようになった🌈

空はどこまでも広がっていて、
その向こうには、まだ見ぬ誰かがいる。

自分が教えたことが、どこかで誰かに届き、
また別の誰かへと受け継がれていく。

そんな連なりを思ったとき、
教職という仕事の持つ“無限の可能性”を、確かに感じた。


退職者が残す最後の言葉には、
これまで歩んできた道のりとともに、職場や後輩への思いが詰まっている。

時には、言葉を詰まらせ、涙をこらえきれない人もいる。

そんな瞬間、私たちはただ聞くだけではない。
その言葉を、自分の中に深く刻み込む。

そしてふと考える。
自分が去るとき、どんな言葉を残すだろうか」と。


やがて時は流れ、私もその場に立つ日が来るだろう。

もしかしたら、あの教師のように、
空を見上げながら、何気ない一言を残すのかもしれない☁️

その言葉が、誰にどう届くのかは分からない。
けれど確かなのは、私もまた誰かとつながっている、ということだ。


退職者の最後の言葉は、単なる挨拶ではない。

それは、その人が積み重ねてきた経験、教え、思いのすべてが詰まった、
かけがえのないメッセージだ。

そしてそれは、未来へと手渡されるバトンのように、
次の誰かへと、静かに受け継がれていく——🏃‍♂️✨

📖 次週の予告

(毎週水曜日更新です。ご期待ください!)

次週より第6章(最終章)に入ります。

第6章 未来へのことば

― 次の世代へ。今、言葉にしておきたい思いの断片
【第33回】イチロー選手の言葉に学ぶ成功の本質

エッセイ全体の目次はこちらです。

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