『クララとお日さま』第5回
SFを読んでいるのに
本を読まずに集まる会
クララとお日さま5回目
「SFを読んでいるのに、全然SFっぽくない」
SF好きの参加者が
そう言った
内面に迫る「吹き出しゲーム」
物語は第3部へ入った
療養するジョジーの部屋に
リックが毎日通ってくる
二人の間でいつしか「吹き出しゲーム」が始まる
ジョジーが絵を描き
リックに吹き出しへ言葉を思い浮かべさせ、書かせる
ジョジーは何を言ってほしかったのか?
リックは何を読み取ったのか?
二人の内面はかみ合っているようで、ずれている
今回の読書会では、その一言をめぐって会話が広がった
リックが吹き出しに書いた言葉を
交流分析の「強くあれ」というタイプだと一人が言った
自分の欲求や弱さを亀の甲羅のように隠して
見せてやるもんか、という構えだ、と
ジョジーのことを書いたつもりが、
にじみ出てくるのはリック自身の世界の見方だった
子どもは他人のことを正確には想像できない
自分が世界を見るようにしか、見えないから
(もっとも大人もそうなのだけど)
SFを読んでいるはずなのに
いつのまにか心理の話をしていた
子どもの価値観
もう一つ、話が集まった箇所があった
子どもは親の価値観の範疇でしか
ものを見られない、という話だ
リックもジョジーも
自分の選択肢の狭さの中にいる
その価値観が本当に自分のものなのか
問い直すすべをまだ持たない年代にいる
だから苦しい
そしてぶつかる
傷つける
その苦しさが
この物語をSFではなく
ヒリヒリとした人間の話にしている
関係性に要求や義務が生まれると
人は変わる
求めるものがあるから、傷つける
ジョジーとリックの関係を話しながら
そんなことを語り合っていた
私たちの日常にも
様々な密度の関係性がある
生活を共にする人、時々会う人、少し距離のある人
その距離感に応じて
起こることも、感じることも違う
密だからこそぶつかる
離れているから見えてくるものがある
この物語の中で気をもんだり、怒りを感じたり
切なくなったりするのは
そういう関係性の機微が
どこか自分の日常と地続きだからかもしれない
接続する過去の読書作品
以前、この読書会で『デーミアン/ヘルマンヘッセ』を読んだことがある
そして『存在の耐えられない軽さ/ミランクンデラ』も
『デーミアン』は暗示的で、入れ子になっていて
直接には描けないものをファンタジックに飛躍させて描く
『存在の耐えられない軽さ』はページ数が分厚くて
きっと最後には分かるんだと期待しながら読み進めたのに
放り投げられたような感覚で終わった、という記憶がある
誰かが誰かを救う展開を期待していたのに
一切そうはならなかった
この作品はどうだろう
クララとお日さまも、似た手触りがある
まさか同じ目には遭わないだろう、と思いたい
などと話した
デミアンは主人公が自分の内面を語る
でもクララは、外から見ているだけだ
クララの目を通して
ジョジーやリックの内面を
読者が推測しながら読んでいく
輪郭を描かない
それがイシグロという作家のスタイルなのだろうか。。。
平たいのに全然平たくないスタイル
この作品て
読みやすいのに複雑
平たいのに全然平たくない
と別のひとりが言った
言葉は明快なのに、背景が複雑化していく
混乱して絶叫したくなるような
それでいて目が離せない
そんな作品
次回も声に出して読むとしましょう
【開催概要】
作品 クララとお日さま
カズオ・イシグロ (著), 土屋 政雄 (翻訳)
開催頻度 毎月定例 第1月曜19:15-21:15
日程 全10回(見込)
2026年
7月6日(月)
8月3日(月)
9月7日(月)
10月5日(月)
11月2日(月)
※都合により日程や回数を変更することがあります
使用テキスト 早川書房
各自でご用意ください
会場 オンラインサロン内(Zoomを使用)
参加費(月額オンラインサロン制):
◦ 一般会員:2,000円
◦ 学生:1,000円
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主宰:高野真俊・酒井ゆき
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☆定例会のほか、長期購読の月1回不定期開催の本があります(葉隠)
一人で読むには少し勇気がいる名著も、仲間と一緒なら、深く、多層的に立ち上がってきます。
「読まずに集まる」から、冒険が始まる
私たちの読書会は、少し変わっています。
• 予習は不要です:当日、読まずに集まって、その場で初めて本と出会います。
• 全員で「声」に出します:一段落ずつ、全員で声に出して読み進めます。身体を使うことで、黙読ではスルーしていた感情や表情が言葉に乗ります。
• 「わからない」を歓迎します:正解のない問いを、みんなでのびのびと探求します。文学の知識がなくても、まったく問題ありません。
こんな方と、ぜひご一緒したい
• 一人だと、読み進めるのが難しい
• 本について、深く語り合える仲間がほしい
• 効率ばかりを求められる日常から、少し離れて立ち止まりたい
• 「声」に出して読む体験をしてみたい
