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しなしなと二輪ちゃん83    番外編 屋久島

神戸の自宅を出発し、休みのたびに少しずつ進み、鹿児島までやってきた自転車旅。
せっかく鹿児島まできたのだ。
一旦、自転車のことは忘れて屋久島に大きく寄り道中。


そんなこと言って…

白谷雲水峡から歩いて登ること15分。
太鼓岩の上にぽっかり出た。
そこには遠近感がおかしくなるような景色が広がっていた。

それにしても、ものすごい高さだ。
150階建てマンションの屋上にいるのと同じらしい。
落ちたらじぇ~たい死ぬ。

太鼓岩は表面がツルツルで、まさにで~ッかい太鼓を横に寝かせたように丸ぁるくなっていた。

ガイドさんがお客さんたちに、
「過去落ちた人はいない」
とかなんとか吹いている。

まぁそれなら安心だ。
ギリギリ前まで行って下を覗いてみたい気持ちになる。
おーし、いちばん端っこまで行ってやろうじゃないの。
と、私はヤル気なのだがこの、この、足が前に出ない。
困った足だ。

西洋人カップルがギリギリ前まで行って、落ちるぞアンタらという所でくつろいでいる。

ひとくくりにしてはいけない。
ひとくくりにしてはいけないが、彼らは大体の場合どうかしている。
例えば、暑かったら服のまま川に飛び込み、後でズブ濡れの服のままボー然としていたりする。
「こうしたら、後でこーなる」
とかいうアタマがない。
ここで足滑らしたら落ちるというアタマもないのかも知れない。

突然の静寂

太鼓岩から元の登山道へ下りる途中は賑やかだった。

後先考えない西洋人カップル、にこにこ無口な一人旅の女の子、その他なんだかわからんが一緒になった男の子らと、あっちだコッチだ言いながら歩いた。
荷物がないのでヒザが楽だ。
私もスイスイ下った。

わぁわぁ言いながら歩いていた集団が突然、静かになった。
数メートル先に、鹿の親子が木の芽を摘んでいるのが見えたからだ。

ヤクジカ(屋久鹿)と言われるニホンジカの亜種で、屋久島と口永良部島に生息。
奈良の鹿より、ひとまわり以上小さいといわれるが、実感としてはもっと小さく見えた。
一緒にいる子鹿はさらに小さくて、相当きゃわいい。

「あの子鹿は生後3か月ぐらいですね」

一緒に歩いていたガイドさんが言った。

森羅万象に宿る

屋久島の住民を表すたとえに、
「人二万、鹿二万、猿二万」
というのがあるらしい。

西洋人カップルの男の子の方が、私に何か訊いた。
何語かわからんが、言いたいことはなんとなく分かるので関西弁で話す。

「コノ島では、他にどんな動物に出会えるのか」

「他にはモンキーがおる。
 ここに来る途中で何回も見たで。
 アンタらも出会えるやろな」

「オォ、それは楽しみやなあ。
 それにしてもあの鹿の親子はなんで私たち人間を見ても逃ゲヘンノ?」

「日本には、自然が神様だという概念があるんや。
 万物に神さんがおられるという考え方やね。
 鹿はその神の使いだと言われてるんよ。
 神様の使いである鹿に、人間は手を出さないことを彼らは知ってるんやろな」

じゃあ日本人が鹿肉を食べるのはどういうことかと自分に突っ込む。

野田知佑さんのエッセイでは、日本のとある山間の村では道路でシカを見つけると、喜んで軽トラを2、3回ぶち当て、死んだのを見計らって荷台に積んで帰って食べるという話が出てくる。

屋久島でも鹿肉食べてるかもしれん。

今後、この西洋人カップルが、日本のどこかで鹿肉ジビエに出会った時には、担当者は頑張って言い逃れしてもらいたい。

西洋人カップルに、鹿を神の使いとして説明してしまい、そのあとは〝神の使い〟説が暴走し始めていくのだった・・・。

         2016年7月4日(月)
         屋久島 白谷雲水峡にて

これが限界
「たすけて~」「つかまれぇッ!」
やることは子どもの頃とかわらない
「あの川筋まで降りてまた登るんです」
私たちの行く道を教えてくれてるガイドさん
左上の白いのが川筋
あんなとこまで降りてまた登るのか?
そんな嘘には引っかからない
「あ・・・」みんな急に静かになった
ガイドさんも写真を撮る
シカが珍しいのだろうか
親シカ
お尻を向けて去っていく神の使いたち
写真がわかりにくいので、Y子イラスト

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