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横浜・夜の兵法書|第1章:【視点】ただの雑用を「仕事」に変える技術

【物語:動きの無駄を自覚する】
アヤが客と向き合っていた同じ夜。ケンジはホールの隅で、軍師(あなた)に渡された手帳の最初の一節を反芻していた。

「お前の体力が削られるのは、仕事が多いからじゃない。何が必要になるか『分かっていない』からだ。」

それまでのケンジは、インカムで呼ばれてから走り、氷がないと言われてからストッカーへ向かっていた。常に「後手」に回り、息を切らし、焦ってグラスを倒しては怒鳴られる。
「ケンジ、1番卓のバッシング(片付け)入れ!」
店長の指示が飛ぶ。いつもなら慌てて向かうところだが、ケンジは一瞬だけ立ち止まり、ホール全体を見渡した。
(1番卓が空くということは、次はあそこに新規が入る。……セットに必要なコースター、予備のライター、おしぼりのストック。今、俺の手元にあるか?)
彼はただテーブルを片付けるだけでなく、次にそこへ座る客が「最初に求めるもの」をすべてトレンチに乗せてから動いた。
片付けと同時に、完璧なセットが完了する。
その間、わずか数分。無駄な往復が消えた。
「……早いな」
通りがかりにそれを見た店長が、小さく呟いた。
ケンジの胸に、初めて「現場をコントロールしている」という静かな手応えが宿った。
【軍略:夜の兵法書】
「作業」と「仕事」を分ける: 言われたことをやるのは作業。その一歩先、次に何が起きるかを予測して動くのが「黒服の仕事」だ。
最短距離の設計図: 自分の動線を常に疑え。一度の往復で二つ以上の用件を済ませる意識が、現場の余裕(ゆとり)を生む。

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