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BIRTH OF THE COOL

音楽の話…㉑

Miles Davisさんが生まれたのは1926年5月26日。

生誕100年ということで、巷では大いに盛り上がっている。

私も小川隆夫さんの書籍を読みながら、いろいろ作品を聴いてその気分を味わっているところだ。

MILES SPEAKSマイルス・デイヴィスが語ったすべてのこと

Miles Davisさんと言うと、有名なところでは、1949〜50年に録音した『Birth of the Cool(クールの誕生)』、1959年の『Kind Of Blue』、そして、1969年の『Bitches Brew』と、10年おきにJAZZの歴史を大きく動かす決定的な名盤を生み出した人物だ。

もちろん、その3枚だけじゃないけどな。

本人にとってはJAZZなんてどうでも良くて、常に垣根を取り払って、思うがままに音楽を造ってきた。

常に固定概念を打ち破り、自分が造った作品が世の中で新たなスタンダードになった瞬間に、それを覆し続けて、常に新しい挑戦をしていた。

ビバップからクールJAZZ、ハードバップ、モードJAZZ、フュージョン、FUNK 、ROCK、HIPHOPまで、あらゆる音楽の革新者だった。

今日は、そんなMilesさんの話だけど、その中でも『Birth of the Cool(クールの誕生)』について書いてみようと思う。

“自分が考えるスタイルでソロが取れるような表現方法を求めていた。”

これはMiles Davisさんが当時を振り返った際の御言葉だ。

この作品がレコーディングされたのは1949〜50年のことだ。

1940年代後半と言えば、Charlie Parkerさんが中心になってビバップが主流だった時代。

当時20歳を過ぎたばかりのMilesさんは、Charlie Parkerさんを追いかけて故郷セントルイスからニューヨークへ引っ越し、そのバンドに加入するチャンスを得た。
 
しかし、Charlie Parkerさんとの共演を続けるうちに、次第に“自分が目指すべき音楽はこれではない”と考えるようになった。

自分はCharlie Parkerさんのようには演奏できないと悟り、同じスタイルでやっても勝ち目がないと考えたようだ。

ビバップは個人の能力だけに依ったスタイルだったのに対して、Milesさんはアンサンブルに重点を置いた。

当時、まだ名前はあまり売れてはいなかった3人……、Gil EvansさんとGerry Mulliganさん、そして、John Lewisさんをアレンジャーとして迎えて、彼らを中心にノネット(九重奏団)を結成した。

それまでなかったような斬新な音楽を模索した結果、生まれたのが、『Birth of the Cool(クールの誕生)』だ。

“当時としては、実験的なサウンドだったから、ほとんどの客は私達の演奏を不思議に思ったようだ。”

これもまたMilesさんの御言葉だ。

それまでの超高速な超絶技巧的なビバップとはまったく異なる抑制的で洗練されたサウンドになった。

ビバップがHOT(熱血)と表現されたのに対し、このアルバムが体現したスタイルはCOOL(冷静)。

ビバップが演奏者同士の競演だとすると、クールJAZZは練り上げられたバンドアンサンブルといったところかな。

COOLという言葉には、格好良いとか洗練されているという意味もある。

Milesさんがその後、ニューヨークでハードバップという新たなスタイルを構築していくのに対して、クールJAZZは西海岸でGerry Mulliganさんが中心になってウエストコーストJAZZとして受け継がれていく。

カリフォルニアが開放的な気候であることもあって、より明るくメロディアスで洗練されたリラックスできるものだ。

そこで、『Birth of the Cool(クールの誕生)』の何が新しかったのか…ということだけどな。

アンサンブルに関しては、特に目新しいものではなかった。

1930年代に活躍していたスイング時代のビッグバンドなんかはアンサンブル主体の音楽だった。

ビッグバンドの場合は、ゴージャスなパーティー用のダンスしたくなるような音楽だったけど、Milesさんはそれを求めてはいなかった。

もっとClassicに近い音楽だ。

メロディやリズムはビバップに軸足を置きつつも、全体的なサウンドはとてもマイルドで優しいもので、踊る為の音楽ではなく芸術だ。

ビバップのHOTな尖った感じは緩和されている。

それまでJAZZではあまり使用されることがなかったフレンチホルンやチューバを含む6管編成のアンサンブルは、緻密なアレンジで重厚感がある。

その重厚感がJAZZの生命線ともいうべきアドリブ以上に比重が置かれている。

このように、ビバップの熱い演奏に対して知的な抑制の効いたクールJAZZの世界だ。

クールJAZZは、1つのジャンルになっていて、その原点が『Birth of the Cool(クールの誕生)』ということなんだけど…。

しかしだな、このアルバムタイトルは実は後付けだ。

レコーディングされたのは1949年1月から翌年3月までの3回のセッションで、当初は4枚のSP盤として発表された。

その後、LPが誕生すると1954年に8曲入りの10インチLP『Classics in Jazz: Miles Davis』となり、更に1957年に12インチ化され、そこで初めて11曲入りで『Birth of the Cool(クールの誕生)』と命名されたんだとさ。

気軽に聴ける理解しやすい音楽を好んだ白人を中心に人気を博し、ウェストコーストJAZZに受け継がれ、この作品に収録されているような音楽が、後にクールJAZZと呼ばれるようになって流行したことから、この作品が元祖だということで名付けられた。

後に、多くのコラボ作品を残すMilesさんとGil Evansさんだけど、その最初のコラボが本作だ。

…とは言っても、Gilさんが編曲を担当しているのは2曲だけ。

あとは、Gerry MulliganさんとJohn LewisさんとJohn Carisiさんだ。

これは、Milesさんが自分の存在価値を見出そうと必死に…四苦八苦していた時代の作品と捉えて良いだろう。

帝王にもそんな時代があったということだ。

そういうことを考えながら聴くと、COOLなはずなのに、超熱く感じる作品で、グッとくるものがある。

“自分らしさを表現するには時間がかかることもある。
すべてが目標に向かっての勉強なんだと自分に言い聞かせていた。
毎日一歩ずつ前進するように、頑張り続けるだけだ。
そうだ、一歩ずつだ。”

〆もまた、Miles Davisさんの御言葉だ。

あぁ〜ステキ♪

 

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