足浴の時間
母に気持ちよく過ごしてほしくて
在宅介護を始めた頃、私の頭の中はいつも一つのことでいっぱいでした。
「どうしたら、母に気持ちよく過ごしてもらえるだろう」
余命宣告を受けていた母です。最後まで、人間らしく生きていてほしかった。私にできることの一つは、母が快適に過ごせるよう体を清潔に保つことでした。
介護を始めるまで、陰部を洗うための道具や口の中を清潔にする方法、寝たきりの人の足浴について考えたことなど一度もありませんでした。でも、介護が始まると、そんな小さなことがとても大切に思えるようになりました。
介護が教えてくれた道具たち
陰部を洗う時には、ペットボトルに取り付けるシャワーキャップを使っていました。軽く押すだけでシャワー状に水が出るので、広い範囲を洗いやすく、水も無駄になりません。
訪問看護師さんから教えていただいた道具で、もともとは園芸用品だったそうです。面白いな、と思いながら使っていました。
胃ろうだった母は口から食事をとることができませんでした。
それでも口の中は汚れます。痰がたまることもありますし、歯磨きも必要です。毎日、歯ブラシや口腔ケアスポンジを使って口の中をきれいにしていました。
歯磨きの時には、マウスウォッシュを少しだけ使うこともありました。少しでもさっぱりした気分になるのではないか。ほんのわずかでも刺激になるのではないか。そんな気持ちからでした。
後になって、口の中を清潔に保つことは誤嚥性肺炎の予防にもつながると知りました。
そして、一番印象に残っているのが足浴用のバケツです。
最初は洗面器を使おうと思いました。でも、足先しかお湯に入りません。そこでクローゼットにあったプラスチック製の収納ケースの引き出しを持ち出して使ってみました。
ところが今度はお湯を入れると重すぎるのです。
ちょうどコロナ禍の真っ最中で、できるだけ外出を控えていたため、必要なものはインターネットで探していました。足浴用のバケツを見つけたのはAmazonでした。
介護用品というより、冷え対策やリラックスのための足湯グッズで、深さがあって軽く、持ち運びやすい。これだ、と思いました。おかげで、母の足をお湯につける時間がぐっと楽になりました。
足浴の時間
足浴用のバケツは、毎日使うものではありませんでした。
それでも振り返ってみると、一番心に残っている道具かもしれません。
温かいお湯に足をつけるだけの、ほんの十数分。でも、その時間は母だけでなく、私たち家族にとっても穏やかな時間でした。子どもたちも気軽に手伝うことができましたし、姪たちが遊びに来た時には「足浴やってみる?」とみんなで母の周りに集まることもありました。
気持ちよさそうに、ふっと表情が緩む母。その様子を見ながら、私たちも自然と笑顔になっていました。介護というより、ちょっとしたイベントのような時間だったと思います。
母のためになったというより、私たち家族のためにもなっていたのかもしれません。
決して高価なものではありません。それなのに、もたらしてくれた時間や思い出を考えると、ずいぶん費用対効果(!)の高い買い物だったな、と今では思います。
小さな道具たちが残してくれたもの
振り返ってみると、私の記憶に残っているのは、こうした小さな道具たちです。
ペットボトル用のシャワーキャップ。
マウスウォッシュ。
そして足浴用のバケツ。
用途も売り場もそれぞれ違います。
けれど、母に少しでも気持ちよく過ごしてほしいという思いを支えてくれた、大切な道具たちでした。
足浴について書いていて、ふと思い出しました。以前、子どもたちや姪たちが母の足浴を手伝ってくれた日のことを記事にしています。
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※記事の中で触れた介護用品や関連商品です。気になる方の参考になれば幸いです。
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