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50代後半、肩書を降ろす。定年後を「自分らしく生きる」3つの準備

📦 連載『こころのたからばこ』より

50代になると、ふと立ち止まって考えることがあります。
私はこれまで、いったい何者だったのだろうか、と。

いくつもあった肩書のこと

クローゼットの奥に眠る、古い名刺入れ。 そこには、かつての私が背負っていた、いくつもの平社員の「肩書」が並んでいます。 ハウスマヌカン、スタイリスト、デザイナー、秘書、アドミニストレーション。

華やかに見える文字の羅列も、今思えば、風が吹けば飛んでしまうような借り物の翼でした。 それは、その組織に身を置いている間だけ、私をかろうじて定義してくれる、儚いお守りのようなものです。

隣にいる人と比べてしまう夜

一方で、彼はひとつの会社に30年近く勤めあげています。 キャリアを積み重ねながら昇級試験を何度も受け、組織のピラミッドを、着実に登ってきました。 全く出世欲のない控え目の彼がピラミッドの上層に昇ったのも彼自身の誠実で丁寧な働き方で成果をあげていたから。私の肩書と比べることすら、ためらわれるほどの道のりと活動量です。

隣にいるからこそ、違いはよく見えました。 そして私は長いあいだ、何者にもなれない自分を、少し恥じてもいました。

肩書や資格の重みを考える

今の世の中、SNSやノートをはじめ、資格ビジネスが繁盛しています。 でも、私はずっと会社勤めをしてきているので、その資格を手にしたところで、自分の市場価値があるのか、顧客や相手が本当に幸せになるだろうか、と考えることがあります。

50代になって慌てて資格を取ったとして、それを「武器」にして新しい道のプロとしてビジネスを始める……。 言葉で言うほど簡単ではありませんし、何より長年その道で叩き上げてきた本物のプロや、お客さまに対して、どこか申し訳なさを感じることもあります。

「誠実さというものは、自分が何者であるかを知ることではなく、自分が何者でないかを知ることだ」 —— ジャン=ポール・サルトル(哲学者)

肩書や資格は確かに道具になりますが、それだけで価値が生まれるわけではありません。 価値もないサービスで対価を得るのは、どこか不安が残るのではないでしょうか。 これまでの10年、20年という経験を通してこそ、シニアのビジネスでサービスを受ける人への顧客満足度は上がると思います。

未経験のものを学んで資格を取るという視点はもはや持ちません。 それは必要だとしても、もっと若い世代の話でしょう。 50代を過ぎたら、資格取得はあくまで豊かな「趣味」の位置づけ。 私たちは、自分の経験や生き方と照らし合わせて、本当に必要なものを選び取る感覚を持つことが大切なのだと、あらためて感じます。

肩書を手放す前に、心を整理する

この気持ちにたどり着けたことは、思いのほか大きな収穫でした。 60代になってから、「私は何者にもなれないけれど、これからなれるだろうか」という焦燥感を抱かずにすみそうだからです。 達成感に置き換えられた過去は、未来を追い立てることをやめてくれました。

名刺という鎧を脱ぎ捨てた後に残る、ただの「私」。 それは、大企業の看板よりもずっと頼りなく、けれど、ずっと自由な存在です。 定年を迎え、社会的な記号が削ぎ落とされたとき、私たちはようやく「自分自身」と握手ができるのかもしれません。

何も持たない自分で歩くということ

やがて定年を迎え、大企業正社員という肩書もなくなります。 社会的な信用が薄れる夜も、きっとあるでしょう。 それでも私は、案外、穏やかです。 何も持たない自分として、もう一度、人生を歩いていける気がしているから。

肩書がなくなったあとに残るもの。 それこそが、これまで生きてきた証なのだと、今は静かに思っています。

夜、名刺の入っていないバッグを肩にかけながら、今日も私は、案外まっすぐ歩いています。


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大企業での実務経験を活かし、書き手の想いや意図を汲み取りながら、文章の行間や表現を丁寧に整えます。読者に寄り添う文章や、50代ならではの知見を活かしたコンテンツ制作も可能です。

著者プロフィール:ミレーヌ

東京在住。一人暮らし歴30年大企業正社員として働きながら、日常の小さな気づきや、手の届く幸せを感性で掬い取る喜びを綴る。
結婚や同居に縛られないパートナーシップを選び、現在は恋愛の只中にある。暮らし・働き方・関係性をひとつの生活として整えてきた。
ライターや相談業務も行う。

――価値観やノウハウを押し付けるのではなく、感じ、考える時間をそっと手渡す文章を大切にしています。

媚びない、流されない。でも、誰かの心に静かに寄り添いたい。
🎻心の機微を綴るエッセイスト
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ゆるやかなコ
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