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五十八歳、「六十代が怖かった」私が“好きなものを捨てなくていい”と思えた日

五十代後半、六十代の暮らしが怖かった私へ

図書館に予約していた、六十代からの暮らしを愉しむ雑誌を数冊。静かな空気の中でゆっくりとめくってみる。「六十代からの暮らし」という文字が、以前より少しだけ優しく、手のひらに馴染むようになったのは、きっと私が五十九歳という扉の前に立っているから。

私は、繊細過ぎて、時として子犬のように泣きじゃくってしまうタイプです。不安症で、臆病で、怖がり。だから未知なる六十代の足音も、実は五十代半ばからずっと気になっていて、遠くから静かにウォッチしていました。

けれど雑誌を開き、楽しそうに暮らす先輩たちの日常を眺めたとき、私なりの小さな気づきが芽生えたのです。 「これまで通りの自分軸で、いいんだ」 それは、小さくて確かな安心でした。

一方で、少しの違和感を感じることもありました。例えば、洗濯クリップを樹脂製からステンレスに変えて生活感を消すような、おしゃれな生活雑貨の提案。 こうした工夫は、大昔から雑誌の定番です。けれど六十代を目前にした今、私は思うのです。新しく買い直すことよりも、今ここにあるものを慈しみ、うまく使い繋いでいくことこそが豊かなのではないかと。

一人暮らしを始めて、まもなく三十年。スタートの時から「生活感を見せない」お部屋のレイアウトを整え、自分なりの空間を愛してきました。私これまでのスタイルを根底から買い直す余裕がある人は、それを愉しめばいい。けれど私は、私。


五十代後半、ミニマリストになれない私の“好きなもの”

私は、好きなものがたくさんある浪費家でした。

ファッション、食器、インテリア、アクセサリー、音楽、アート、手芸、料理。
どれも中途半端かもしれないけれど、私の心をワクワクと満たしてくれる大切な断片です。

定期的に断捨離をして、粗大ごみに送り出し、また新しい「好き」が隙間を埋めていく。

そんな呼吸を繰り返しているうちに、自分なりの「センス」という地層が少しずつ積み重なっていった気がします。

だから私は思ったのです。

六十歳を過ぎたからといって、好きなものを手放す必要なんてない。

その時の自分の体や心をいちばん大切にしながら、無理をさせずに付き合える「好き」を楽しめばいい。

最終的な終活の時に困らないよう、処分のための費用だけはきちんと残しておく。
人さまに負担をかけない程度に、自分の好きと暮らしていけばいい。

自分の心を楽しませてくれる相棒たちと、どこまで心地よく共存できるか。
その“さじ加減”を、自分で決めていけばいいのだと思いました。

昭和育ちの私には、どうしてもミニマリストは性に合わないのです。

一緒に時を刻んできた家具、雑貨、ファッション。
もし私が使わなくなったなら、その時は私自身の手で、ひとつずつ粗大ごみに送り届ければいい。

今の私はまだそれがめんどくさいと思うほどの体力と気力の低下はしていないからかもしれない。めんどくさいという気持ちが先立つようになったら私はもっと楽になる暮らしにシフトしていくだろう。

それもまた、自分らしい終活なのかもしれません。


五十八歳、四十代のうつ病を経て「無理しない暮らし」を覚えた

五十八歳になった今、体力は確実に落ちました。

平日は仕事でいっぱいいっぱい。
週末に一日アクティブに外へ出れば、もう一日は静かに身体を休めてエネルギー補給をしたくなる。

それを自然と身体が教えてくれるのです。

自分の欲望だけで無理をして突っ走らなくなったのは、四十代でうつ病を経験してからでした。

災い転じて福となす部分も、人生にはきっとある。

無理をしなくなると自然と、かばんは軽いものを持つようになりました。

お洒落だけれど重たいバッグより、キッチュで軽量なバッグ。
ヒールのある革靴より、歩数を稼げて健康を意識できる、クッションの効いた革のスニーカー。

それは決して諦めではなく、今の自分を心地よく保つための、前向きな選択です。


六十代の不安が少し消えた日

私の彼は、ナチュラルエイジングを肯定する人です。

私の顔が日ごとに四角くなっても、
「それが自然の姿だよ」
と、穏やかに笑ってくれる。

そんな彼の隣で、今の私が大切にしたいのは、美しさや若さよりも、清潔感と自然体。

そして、心の老化を防ぎながら、日常を豊かに愉しむこと。

「〜しなくちゃいけない」
「六十歳までに○○しなさい」

そんな言葉に怯えていた昨日の自分に、そっとお別れを告げようと思います。


軽やかな靴音で、未知の季節へ

かばんは軽く。
足取りは柔らかく。

私の「好き」を詰め込んだトートバッグを抱えながら、未知の季節へ歩いていこう。

六十代は、何かを失っていく季節ではなく、
無理を削ぎ落としながら、自分に似合う暮らしを選び直していく季節なのかもしれません。

🕊言葉を整えることは、人生を整えること。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
私はエッセイスト・コラムニストとして活動する傍ら、人生の荒波さえも「静かな知性と美学」へと変えてきた経験と、大企業での実務経験を糧に、同じように「心の震え」を抱える方々の言葉を、静かに形にするお手伝いをしています。

かつての痛みを、未来を照らす光へ。

🖋 ミレーヌの「言葉」の窓口

執筆・編集:プロフィール作成、文章リライト、コラム寄稿
伴走:SNS投稿代行、オウンドメディア記事制作
対話:個人向けカウンセリング(傾聴・お悩み相談)

価値観を押し付けるのではなく、あなたの行間にある想いを丁寧に掬い上げます。
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※現在、数件ずつ大切にお受けしています。ご相談はDMより。

著者プロフィール:ミレーヌ

東京在住。一人暮らし歴30年大企業正社員として働きながら、日常の小さな気づきや、手の届く幸せを感性で掬い取る喜びを綴る。
結婚や同居に縛られないパートナーシップを選び、現在は恋愛の只中にある。暮らし・働き方・関係性をひとつの生活として整えてきた。
ライターや相談業務も行う。

――価値観やノウハウを押し付けるのではなく、感じ、考える時間をそっと手渡す文章を大切にしています。

媚びない、流されない。でも、誰かの心に静かに寄り添いたい。
🎻心の機微を綴るエッセイスト・コラムニスト
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最後は必ず一人で迎える老後、
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